パリSGが同じリーグ・アンのモナコからその至宝であるエムバペ(写真)を引き抜くのは不可能に近いミッション。不可能を可能にするために、あらゆる手を尽くす構えだ。(C) Getty Images

写真拡大 (全2枚)

 パリ・サンジェルマンのキリアン・エムバペ(モナコ)に対する執着は尋常ではない。この自国が生んだ18歳のビッグタレントをなりふり構わず獲りに行く構えで、ナセル・アル・ケライフィ会長も、6月にSD(スポーツディレクター)に就任した強化責任者のアンテロ・エンリケも、そしてウナイ・エメリ監督もその実現に執念を燃やしている。
 
 エムバペ獲得のハードルが相当に高いことは、彼らパリSG首脳部も重々承知しているはずだ。
 
 そもそも現所属先であるモナコには、この生え抜きの超逸材を売る気がない。もう1年はクラブに留め、来夏に改めて処遇を考えるというのがモナコの一貫した姿勢である。
 
 現地の新聞やウェブサイトには、「獲得には1億3500万ユーロ(約162億円)が必要」だの、「モナコは売値を1億5000万ユーロ(約180億円)に設定した」だのと常軌を逸した金額が躍っているが、これはつまりモナコには事実上売却の意思がないことを意味する。常識的に考えれば、プロデビューから1年あまりの18歳の若者に、これだけの金額を注ぎ込むクラブが現われるわけがないからだ。
 
 実際にモナコは、エムバペと結んでいる2020年までの現行契約を延長すべく動いている。新契約では、現在90万ユーロ(約1億1500万円)の年俸が850万ユーロ(約10億8800万円)まで跳ね上がるという。モナコがエムバペを残したがっているのは疑いようがなく、ましてや同じリーグ・アンで覇権を争うライバルチームに売り渡すなど、ありえない話だろう。
 
 しかもエムバペ自身、パリSG行きにはあまり惹かれていないようだ。この若きストライカーがレアル・マドリーでのプレーを夢見ているのは周知の事実。チームを率いるのが同胞のスーパーレジェンド、ジネディーヌ・ジダンという点もやはり見逃せない。モナコを離れるならマドリーへと考えており、もう1年モナコでプレーしてロシア・ワールドカップを戦った後、スペインに旅立つのが本人の理想のシナリオだと見られる。
 しかし、こうした明らかに不利な状況にあっても、パリSGにエムバペを諦める様子はない。昨夏にクラブを去ったズラタン・イブラヒモビッチに代わる新たなシンボルを欲しているクラブにとって、エムバペはまさに理想のプロフィールの持ち主だからだ。いずれは世界最高の選手になるだけのポテンシャルを秘め、おまけにフランス人、それもパリ近郊で生まれ育ったいわば地元っ子。これだけの条件を備えた選手は、たしかにそうそう出現するものではない。
 
 モナコや本人を説得するのは難しいと考えたのか。パリSG首脳部はつい先日、エムバペの父親であるウィルフリード氏と会談を持った。その席でウナイ・エメリ監督は、ウィルフリード氏に自身が構想しているプロジェクトを提示したという。レギュラーの座を確約し、さらにエムバペが持ち味を十二分に発揮できるよう、これまでの4-3-3システムを2トップの陣形に変えて、エースのエディンソン・カバーニの相棒として起用するというのがそれだ。
 
 たしかに本人が望むマドリーに移籍したとして、即座にレギュラーを獲得するのは難しい。前線にはクリスチアーノ・ロナウド、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマという3人のスーパータレントが君臨しており、他にもイスコ、スペインの未来と言われるマルコ・アセンシオといった若き才能が控えているからだ。
 
 パリSGはさらに、年俸1200万ユーロ(約15億3600万円)を提示する用意があるという。1200万ユーロといえば、キャプテンであり、守備の要でもあるチアゴ・シウバのサラリーと同額で、エースのカバーニよりわずか100万ユーロ少ないだけ。どんなに才能があろうと、弱冠18歳の選手のサラリーとしては破格も破格である。
 
 スペイン・メディアによれば、マドリーにはパリSGが先導する「マネーゲーム」に付き合うつもりはないという。つまり、法外なカネを投じるならご勝手に、というわけだ。これは裏を返せば、「エムバペがパリSGに行くことはない」と確信しているからかもしれない。
 
 はたして、パリSGの執念は実を結ぶのだろうか。
 
文:ワールドサッカーダイジェスト編集部