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●新料金プランの特徴

KDDIと沖縄セルラーはスマートフォン向けの新しい料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」を発表した。割引の組み合わせ次第では月額1,980円から、というMVNO並みの格安プランだが、子会社とのシェアの食い合いも辞さないという強気の狙いはどこにあるのだろうか。

○段階式従量制で、たくさん使わない人にお得感

新しい料金プランは2種類ある。このうち「auピタットプラン」は、一言で言えば「使ったデータ量に応じて段階的に料金が上がる段階式従量制プラン」だ。

従来のデータプランでは、1GB、2GB、3GB……と月内に利用する容量を決めておく。超過した場合は通信速度が低下し、使い切らなかった場合は一部を翌月に持ち越せる場合もあるが、基本的には未使用分が無駄になる、というシステムだ。

これに対し「auピタットプラン」は、実際に使ったパケット量に対して、段階を経て料金が上がっていく。これならば使わない月は安く抑えられ、無駄なパケット余りを気にする必要も少なくなるし、20GBを超えない限り通信速度の低下は発生しない仕組みだ。

もう1つの「auフラットプラン」は20GB、30GBという大容量向けのプランで、20GB同士で比べれば従来プランや「auピタットプラン」と比べて大幅に安くなる。

どちらのプランも、従来は音声通話プランを従量制の「シンプル」、音声通話かけ放題の「スーパーカケホ」「カケホ」の3種類から選んでデータプランに組み合わせる形だったが、「auピタットプラン」では音声プランを選ぶところまでは同じながら、料金は音声+データの組み合わせによって決まっている。iPhone用の「スーパーカケホ」+「データ定額20GB」では月額8,000円になるので、1,500円ほど安くなる計算だ。

端末については従来のように24回の割賦販売が行われるが、新料金プランの提供開始に合わせてスタートした「ビッグニュースキャンペーン」では、新規契約または機種変更時に新料金プランを選ぶことで、翌月から12カ月間、利用料金が1,000円引きになる。

さらに、固定回線もKDDI網にすることで割引が得られる「auスマートバリュー」も適用できるため、「auピタットプラン」ではパケット利用量が1GBまでの場合で月額1,980円が実現できる(シンプル、スーパーカケホの場合、1年間のみ)。「auフラットプラン」でも20GBで月額4,500円と、MVNO並みの低価格だ(たとえばIIJmioの「データオプション20GB」と音声通話機能付きSIM(みおふぉん)の場合、月額4,700円)。

●つなぎとめにポイントも活用

○なりふり構わない低価格と4年縛り

前述のように、最も安いプランでの1,980円という利用料金は、NTTドコモが6月に導入した、特定の2機種に限定して月額1,500円引きになる「ドコモウィズ」よりも安く、KDDI傘下のUQコミュニケーションズのMVNOサービス「UQモバイル」の「プランS」と同等になる(UQのほうがパケット量が2GBと多い)。

事実上、子会社との食い合いも辞さないという、かなり強硬な価格設定だ。UQモバイルが企画的順調にシェアを伸ばしつつあるなか、なぜ彼らにも影響の出るような施策をとったのだろうか。

今回の発表に際し、実はもう一つのプログラムが発表されている。それが「アップグレードプログラムEX」だ。これはAndroid端末の購入時に、月額390円のプログラム料金を24回払い続けることで、端末の割賦回数を従来の24回から48回に拡張して1カ月あたりの支払い料金を下げるとともに、25カ月以降は未払分が残っていてもその残額を支払うことなく機種変更可能にする、というもの。既存の「アップグレードプログラム」が月額300円で24回割賦中12回の支払いで残額の最大7カ月ぶんが無償になるのと比べると、支払額が3割アップする代わりに値引率は約40%向上と、割のいいサービスに見える。

総務省のワーキンググループが発表したガイドラインにより、キャリアは多額の端末の購入補助をつけることができなくなり、いわゆる0円端末が販売できなくなった。これにより高額なハイエンド端末が売れなくなり、さらに格安スマホブームでMVNO+低価格なSIMフリー端末へと流れるユーザーも増えている。しかしキャリアとしては、最新設備の性能をフルに使え、電波の利用効率の高い最新の高性能端末を普及させたいはずだ。

たとえば各社今も3G接続の端末が残っているが、これを全廃してLTEに切り替えられれば、さらに20〜40MHzの帯域を確保できるし、MU-MIMOなど最新の技術に対応した端末なら、より電波利用効率は高くなる。数年後に控えた5Gを見据えても、高額端末への障壁はなるべく下げておきたいはず。そこで月々の支払い額は支払回数を増やすことで見かけ上の負担を減らし、月々の支払い+機種変更時の端末回収という条件付きではあるものの、高額な端末を実質半額で販売するプログラムを用意したのだろう。

一見お得そうな「アップグレードプログラムEX」ではあるが、前述したように割賦回数は48回、つまり4年縛りという前代未聞のプランでもある。プラン限定とはいえ、利用料金を減らし、端末料金の約半額を補助してでも、従来の2倍の期間を自社に囲えるほうが有意義だと判断したのだろう。

実は今回の新料金プラン2種類では、従来の「マンスリーポイント」が「au STARロイヤル」に統合されている。au STARロイヤルでは、4年目まで毎月1,000円ごとに10ポイント、5〜7年目で20ポイント、8〜10年目で30ポイント……と、長期利用者になるほどWALLETポイントの付与率が向上する。しょっちゅうMNPするようなユーザーはこうしたポイントの向上前に乗り換えてしまうが、「アップグレードプログラムEX」に加入していれば、最初の4年を超えて2倍のポイント付与率になるところまでユーザーの多くをつなぎとめておける。

ちなみに最初の4年間で貯められるWALLETポイントは、「auピタットプラン」の最安時の場合でも(20×12)+(30×36)=1320ポイント、「auフラットプラン20(シンプル)」の場合で(40×12)+(50×36)=2280ポイントだ。これが次の年から2倍になると思えば、もう少し居残ろうか、と思うユーザーも増えるだろう。つまり、WALLETポイントも含めて長期にユーザーを囲い込むための方策が、今回の2つの料金プランの狙いだというのが、筆者の見方だ。

●子会社UQと競合するが……

○UQを食い荒らしても影響は小さい?

発表会で、KDDIの田中孝司社長は、UQコミュニケーションとは相談なしに今回のプランを決めたと発言した。グループ企業ではあるが、そこは独立独歩、切磋琢磨しよう、というの説明だった。しかし実態としては、MVNOが市場シェアの約15%を取る中、順調にシェア拡大中とはいえ、MVNO内でまだ10%に満たない(=市場シェアは1%未満)UQモバイルが影響を受けたとしても、auに顧客を固定できれば大きな影響はない、という計算が働いているのではないだろうか。

折しも先日、総務省からはUQコミュニケーションズの持つWiMAX 2+網、およびソフトバンク傘下のワイヤレス・シティ・プランニングの持つAXGPについてもMVNOへの回線設備提供を義務付ける方針が発表されている。UQとKDDIの間では互いにLTE網とWiMAX 2+網(=実質TDD-LTE網)をレンタルし合っているが、今後はMVNOへの設備提供元としても競合することになるわけだ。ならば下手に遠慮するより、自社の利益を最優先するという判断が働いても不思議ではない(乱暴ではあるが)。

いずれにしても、期間限定とはいえ、各社に大きなインパクトを与える料金設定を打ち出してきたことには違いない。経営に対する悪影響も予想されるが、この低価格を武器に、他者からユーザーを奪い取れれば4年縛りとともに、元手は取れるという考え方もある。残るMNO2社がどう追随してくるのか、MVNO各社はどのような対策を打ち出してくるのかが興味深い。