100ドル紙幣を持つ手。インドネシア・ジャカルタで(2015年8月27日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】人に気前良く与えるという行動を起こす動機は何だろうか。経済学、心理学、哲学などの専門家らは長年、この疑問について思索を巡らせてきた。

 人間の行動を駆り立てる第一の動機が自己の利益だとすると、自分の資産を他人のために進んで犠牲にするのは道理に合わないように思われる。

 このパラドックスを解決するために、一部の専門家らは、与えることが集団での自分の立場を高めたいという欲求を満たすとの説を唱えた。他方で、他者に分け与えることによって、哺乳動物の生存でカギとなる要素である同族的な協調と団結が育まれるとしたものや、見返りに何かが得られることを期待しているからにすぎないという見方もある。

 しかし、本当の答えはもっとシンプルである可能性があると示唆する研究結果が11日に発表された。すなわち「与えることが、自分を幸せにする」のだという。

 このことを調べるために、独リューベック大学(University of Lubeck)などの研究チームは、スイス・チューリッヒ(Zurich)にある研究室で被験者50人を対象とする実験を行った。実験では、気前の良い行動を取った後の被験者らに自分自身の幸福度を自己申告させた。

 その結果、被験者らは一様に、与えることは快感を覚える経験だと述べた。

 同時に、気前の良さに関連する脳の部位が、幸福感に関連する別の部位の反応を誘発したことが、MRIスキャンで明らかになった。

 研究チームは、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した論文に「今回の研究は、気前の良さと幸福との間の関連性を裏付ける行動学的および神経学的証拠を提供している」と記している。

 実験では、4週間にわたって毎週25スイスフラン(約3000円)のお金を支給することを伝え、被験者の半数のみに、お金を他人のために使うことを約束させた。残りの半数はお金を自分でどのように使うかを計画できた。どちらの被験者グループも、実際のお金のやりとりは行わなかった。

■金額の大きさとは無関係

 被験者には、お金の使い道を決めさせた後に質問に答えさせ、その間に脳スキャンを実施した。被験者への質問は、被験者自身の利益と、実験で決めた贈り物を受け取る人の利益をはかりに掛けるシナリオを想起させるものだった。

 研究チームは、利他的行為や社会的行動に関連する脳の部位、幸福感に関連する部位、意思決定に関与する部位の3か所で、脳活動を調べた。

 実験の結果、お金を分け与えると決めたグループの方が、約束通りの行動でなくても、自分で使い道を決めることのできたグループに比べて、自己申告時の幸福度が高いことを、研究チームは発見した。

 被験者が申告した幸福度は、使い道を約束した金額の大きさとは無関係だった。

 今回の結果について研究チームは、教育、政治、経済、公衆衛生などに示唆を与えると指摘。「気前の良さと幸福が、個人の充足感を高めるとともに、社会的成功を促進する可能性がある」と論文に記した。

 その一方で研究チームは、「日常生活においては、気前の良さと幸福の間の関連性が過小評価されているため、(他者のために)使うことの恩恵が見過ごされている」としている。
【翻訳編集】AFPBB News