世界各国の美女も自国チームを応援すべくコンフェデ杯に集まってきた

 通常の時期は、正規のルートを通してロシアを旅するためには、あらかじめ旅程を確定しておき、ホテルの「バウチャー」を入手しなければビザがもらえないため、何かと不便が多くてお金もかかった。しかし、来年のロシア・ワールドカップ期間は「ファンIDカード」の導入によって、比較的自由に安い旅行ができそうだ。

 ファンIDカードとは、観戦チケットを買った人に義務づけられる登録証のこと。6月17日から2週間にわたって開催されたコンフェデレーションズカップ(以下:コンフェデ杯)でも、このシステムが導入された。

 コンフェデ杯のインターネットフォーラムを見ると、開幕1ヵ月前ぐらいからファンIDカードが各国のチケット購入者に届けられた。このファンIDカードがあると、コンフェデ杯開催4都市間の鉄道、そして市内を走るバスなどの公共乗り物が無料になる。また、外国人にとってはこれがビザと同じ効力を持つ。これまでわずらわしかったビザ取得の手間も、ファンIDカード導入のおかげで必要なくなるわけだ。

 何より大きなメリットは、インターネットを使って好き勝手にホテルを予約できること。私の場合、「メディアビザ」というのを取得して今回のコンフェデ杯を取材したわけだが、効力はファンIDカード保持者とほぼ一緒。4名〜8名部屋のドミトリーとはいえ、1泊2000円以下の格安ホステルを泊まり歩くことができたのだから、バウチャーシステムから解放されたのはありがたい。

 同じような価格帯でも、泊まったホステルによってかなり異なる特色があった。モスクワで泊まったホステルは、実にコスモポリタンだった。宿泊客は、地元ロシア人はもちろんのこと、コンフェデ杯参加国のチリ人、メキシコ人、そして今や世界中どこでも元気な中国人や韓国人の観光客、さらにはブラジル人も多かった。ここでは英語が共通語として機能していて、曜日によって「ロシア市内観光ツアー」「ロシア地下鉄ツアー」「ロシア料理の夕べ」など、さまざまなイベントも開催されていた。

 次に泊まったカザンでは、まさに「ロシア人の巣窟」と呼びたくなるほどロシア人だらけ。ホステルの受付ではまったく英語が通じない。たまに外国人の宿泊客がいても、ロシアに留学に来ている人たちで、ロシア語を流暢に話していた。

 しかし、このアウェーな環境のおかげで、街中では愛想のないロシア人もいったん懐(ふところ)に飛び込んでしまえば、陽気でおしゃべりな人だらけなことも知った。若くて美人の女の子も下ネタ好きだし、男はウォッカを片手にいつまでもこちらを寝かせてくれなかった。ちなみにロシアに限らず『NARUTO』『ドラゴンボール』『ONE PIECE』(いずれも集英社刊)は世界共通の鉄板ネタだ。

 最後に来たのはコンフェデ杯決勝の地、サンクトペテルブルク。ここはエルミタージュ美術館に代表されるように見どころ満載の観光地で、むしろモスクワよりも英語が通じるかもしれない。その一方で宿泊施設が多すぎるのか、私は4人部屋をずっとひとりで占領して使い続けた。その分、旅行者やサポーターとの交流はなくなってしまったが、プライバシーもあって実に快適だった。これで1泊2000円だから、笑いが止まらない。

 今回、コンフェデ杯の取材でロシアに訪れた記者仲間に聞いても、シングルルームやアパートが1泊5000円から1万円ほどと、さほど高くなかった。ワールドカップ期間中は高騰することを考えても、比較的リーズナブルな値段で宿泊先を見つけることができるのではないだろうか。

 また、通信環境も非常によい。ロシア政府は「LINE」を禁止していて、ネット環境だとつながらないが、なぜかローミング環境だとLINEができてしまう。フェイスブックの通信アプリ「メッセンジャー」も、インターネット通信サービス「スカイプ」も自由に使えるから、ロシアに着いたらすぐSIMカードを買ってしまおう。私の場合、6G分のデータ通信をつけて800円でSIMカードを買った。

 コンフェデ杯期間中は、ロシア人が「異例」と言うほど涼しい日が続いた。おかげで試合のレベルは上がったかもしれないが、「今日は暑くなった」と思っても急に寒くなったり、ものすごい雨が降ったり、雷が落ちてきたりした。寒さに関してはサマーカーディガンにウインドブレーカーを用意しておけば十分しのげたが、夜中に雨が降り始めたらホテルまでタクシーで戻るしかない。

 かつてロシアのタクシーは白タクが多く、マフィアがその背後についていたので、観光客はまずボラれていた。しかし、今では「Yandex.Taxi」というアプリのおかげで、あらかじめ値段がわかったうえでタクシーに乗ることができる。真夜中の飛行機に乗るため深夜0時ごろに配車を頼んだら、「今は需要が多く混み合っており、値段が上がっています」というメッセージ。それでも、ちょっとランクの高いクルマをチョイスしたら、空港まで30分の距離を1400円で行ってくれた。また、ロシアでは配車アプリの「ウーバー」を使う人も多い。

 外食は「スタローヴァヤ」と呼ばれる大衆食堂が便利だ。トレーを持って前菜、スープ、メイン、デザート、飲み物を指しながらオジちゃん&オバちゃんによそってもらうシステムが一般的なので、ロシア語のキリル文字を読めない観光客にとっても優しい仕組み。しかし、値段はピンキリで、「こんなに食べて250円なの?」と感動することもあれば、「うそ、2000円になっちゃった」とガッカリすることもある。食べる量にもよるだろうが、私の場合はレジでだいたい500円から1200円ほど払っていた。

 本田圭佑がCSKAモスクワにいたころ、ロシアを訪れたことがあった。だが、たった6〜7年でモスクワの街は大きく変わってしまっていた。とりわけ驚いたのが「キオスク」と呼ばれる小さな売店がほとんど姿を消していたことだ。

 どうやらモスクワの景観対策により、力づくで取り壊されて街から追い出されてしまったらしい。おかげで街並みはスッキリしたかもしれないが、旅情は失われた。キオスクには何でも揃っていて、ロシア人にとっても観光客にとっても便利だった。ロシア語学習者にとっては「キオスクでいかにスムーズに買い物ができるか」が目標だったのだ。

 キオスクに代わって便利なのは「プラドゥークティ」というお店だ。これは街中至るところにあって、食べ物、飲み物、アルコール、タバコ、お店によっては花屋やビアバー備え付けのところもある。まさに「ロシア版のコンビニ」と言えそうだ。朝から夜まで営業しているところもあれば、土日は休みのところ、24時間営業のところと業態はさまざま。「Продукты(プラドゥークティ)」というキリル文字だけはぜひ覚えておこう。

 こうして2週間あまり、ロシアのコンフェデ杯を取材してみて感じたのは、「意外と旅費が安く済み、移動や滞在も快適だったな」ということ。しかし、とてもつらかったこともある。それがモスクワで「夏の雪」と呼ばれるポプラの綿毛。これがふわふわと街中を飛んでおり、人によっては花粉症のようにクシャミや涙が止まらなくなるのだ。8日間のモスクワ滞在中、たったひとりだけマスクをつけて歩いている人を見かけて、私はうらやましく思った。来年ワールドカップに行く人は、マスクを荷物に忍ばせていったほうがいいかもしれない。

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