もう末期"世論調査"でみる安倍内閣の体力

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安倍内閣の「体力」は、もう末期症状にあるようだ。報道各社の世論調査をみると、内閣支持率は「危険水域」の4割を割り込む状況が続いている。安倍首相は求心力を保てるか。それとも「遠心力」で政権は崩壊してしまうのか――。

■2カ月40%割れで危険水域

つい先日までは「安倍1強」と言われ、2021年までこの政権は続くとみられていた。ところが、安倍晋三首相を取り巻く環境は急速に悪化。政権は末期症状に近い様相さえも見せ始めている。ここでは連日のように報じられる報道各社の世論調査のデータをもとに、安倍政権の今の「体力」を測定してみたい。

6月中旬ごろからから明確な下降線を示し始めた安倍内閣の支持。「森友」「加計」問題に加え、閣僚や自民党議員が失言や問題行動を繰り返し起こしたことへの不信、不満が積み重なってのものだ。

そんな状況の中、衝撃が走ったのは7月9日。東京都議選で自民党が歴史的惨敗を喫したちょうど1週間後のことだ。NNN(日本テレビ系列)が行った全国世論調査で支持率が前回比、約8ポイントダウンの31.9%。不支持は49.2%に及んだ。

翌10日付の新聞朝刊も続く。読売新聞は支持率が36%、不支持率は52%。朝日新聞が33%、不支持率が47%。そして同日にはNHKも調査結果を発表。こちらは支持率が35%、不支持率が48%だった。総じていえば内閣支持率は30%台前半、不支持は50%前後ということになる。

この数値をどう評価すればいいのか。永田町での相場観で言うと「支持率は4割がボーダーライン。2カ月続けて4割を割り込むと危険水域」。安倍内閣の支持は先月から4割を割り始めていることを考慮すると、完全に「危険水域」入りしたことになる。

■高い不支持率は下がらない

ウオッチャーたちは、支持率の低下より不支持率の高さに注目する。支持率は政権内で起きた不祥事や政策決定の評価によって、乱高下する。「支持」と「どちらとも言えない」の間はかなり流動的だ。

ただし不支持率は、あまり動かない。「いったん嫌いになってしまうと好きには戻らない」という恋愛論に近いといえば、理解してもらいやすいだろうか……。不支持率が5割に近づいてしまった今、内閣が再生するのは、かなり難しい。

■「政党支持>内閣支持」で政権に遠心力

今回の調査では、内閣支持率が暴落したが、自民党の支持率は30%程度を維持している。NNNの調査では、党の支持率が内閣の支持率を上回っている。党の支持率が高いのは、政権にとって好ましいデータのように思われがちだが、そう簡単な話ではない。むしろ安倍首相にとっては「不都合な真実」だ。

内閣支持率が党の支持率よりも高ければ、党所属議員は「首相の人気のおかげで自分たちは当選できる」という空気が広がり、政権の求心力が高まる。これまで安倍政権では内閣支持率が党の支持を上回ってきた。ところが、逆に内閣の支持が党の支持を下回ることになったらどうなるか。「首相の不人気は自分たちの選挙にはお荷物だ」となり、求心力は遠心力に変わる。今の数値は、その瀬戸際にある。

留意しなければならないのは、今回のデータが都議選から約1週間後に行われていることだ。自民党が惨敗した余韻が残る中で、国民は、あらためて安倍政権に「ノー」を突きつけた。

つまり国民は、都議選の結果を「自民党が負けすぎた」とは思っていない。都民の決断に賛同し、自分たちも同じ1票を投じるつもりで世論調査に応じたのだろう。都民の怒りが全国に伝播したのだ。

■昭和と比べ、「内閣支持」は高くて当たり前

ここまで書くと「支持率30%台はそんなに低いのか。もっと低いこともあったではないか。少し大げさだ」と思う人もいることだろう。確かに昭和から平成初期のころは内閣支持率は4割あれば上等。3割台は普通。もっと低いこともざらにあった。1989年(平成元年)、消費税が導入され、大疑獄事件・リクルート疑惑が吹き荒れた時、ある新聞社の調査では竹下登内閣(当時)の支持率は3%まで落ちたことがある。消費税率は当時3%だったため「消費税と同じ支持率」と、皮肉られたものだ。その時と比べれば、安倍内閣の支持は10倍ある。

しかし、当時と今とは政治状況が違う。竹下内閣のころ、衆院では1つの選挙区で3〜5人が当選する中選挙区制で、各選挙区に2、3人の自民党議員がいた。しかも自民党は派閥全盛で、党内抗争が激しかった。だから、竹下内閣の時は、自民党支持でも、宮沢喜一氏や渡辺美智雄氏を次の首相にしたいと思う人は内閣を「支持しない」と答えることが多かった。宮沢派、渡辺派議員の後援者たちも「支持しない」と答えるのが当たり前だった。だから内閣の支持は低く抑えられる傾向があった。

ところが今、選挙制度は小選挙区制になり、派閥も弱体化した。自民党を支持する人は基本的には内閣を支持する。つまり、昭和時代は内閣支持率は低くて当然。今は高くて当然なのだ。だからこそ今の「30%台前半」は深刻だ。

■安心材料は野党支持の低迷

安倍政権にとって厳しいデータばかり指摘してきたが、最後に「安心材料」も書いておきたい。内閣の支持が落ちているにもかかわらず、野党第1党・民進党の支持が高まらない。冒頭紹介した4種類の調査ではいずれも、民進党は前回よりも支持を落としており、10%未満にとどまっている。

都議選では、小池百合子都知事が率いる「都民ファースト」が自民党批判層の受け皿になった。国政では民進党が中心になり野党共闘を目指しているが、遅々として進まない。

安倍首相にとっては、自分たちの支持が下がっても、野党の支持が上がり始めなければ、モラトリアム期間を与えられることになる。

衆院選は、来年末の任期満了近くになる可能性が高まってきている。それまでに安倍内閣が求心力を回復するか。民進党もしくは他の勢力が国政で「受け皿」をつくりあげるか。もちろん、その前に安倍首相が退陣する可能性もないわけではない。「安倍1強」は遠くになりにけり、である。