米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領が7月7日、ドイツのハンブルグで初めて会談した。会談の冒頭でトランプ大統領は、ロシア政府の米国大統領選挙への不当介入問題を提起し、かなり時間をかけて詰問し非難したという。

 トランプ大統領は、ロシアと共謀して昨年の大統領選挙の投票を不正に動かしたという疑惑をかけられている。そんな中、今回のプーチン大統領との会談は、トランプ大統領にとって自らの主張を裏付け、メディアや米国民に納得させるための絶好の機会だった。

 今回の首脳会談が米国内での今後の「ロシア疑惑」の追及に影響を及ぼすことは間違いない。疑惑をめぐる議論はどう変質していくのだろうか。

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「ロシア疑惑」は議題に上がるのか?

 トランプ、プーチン両大統領はG20首脳会談の開催を機に二者会談にのぞんだ。会談の時間は当初30分とされたが、実際には2時間16分にまで延長された。トランプ大統領のメラニア夫人が会談後の予定を心配して途中から会談場に入り、それとなく終了を促したが、両首脳は意に介することなく熱気を帯びた協議を続けたという。

 トランプ氏が大統領就任以前からプーチン氏を前向きに評価するコメントを発していたこともあり、米国メディアはいかにも両首脳がすでに知己を得ているかのように報じていた。だが、実際には2人が顔を合わせたのは今回が初めてだった。

 首脳会談には、通訳以外では米側はティラーソン国務長官、ロシア側はラブロフ外相が同席した。会談後、同長官と同外相がそれぞれ記者団に会談の概要を公表した。

 両者の発表にはところどころ微妙な食い違いがあったが、発表が一致したのは、会談の冒頭でトランプ大統領が「ロシア政府による米国2016年大統領選挙への不当介入問題」を提起し、プーチン大統領を非難しながら回答を迫った、という部分だった。

 トランプ大統領はこれまで米国内で、「昨年の大統領選でロシア政府とトランプ陣営が結託し、米国有権者の投票をトランプ陣営が有利になるように不当に動かした」という糾弾を受けてきた。昨年7月からFBI(連邦捜査局)が捜査を続けてきたが、この糾弾を証明する具体的な証拠はまだ出ていない。

 トランプ大統領がプーチン大統領との会談でこの「ロシア疑惑」をどう提起するのか、それとも提起しないのか、について米国側では注視の的だった。

 トランプ陣営が本当に大統領選でロシア側と結託してきたならば、強い非難の言葉を浴びせるのは難しいのではないかという見方もあった。しかし会談後、両国の国務長官と外相によって、トランプ大統領が会談の冒頭で「ロシアの米国大統領選介入」を批判的に提起し、プーチン大統領が介入を否定したことが明らかにされた。

米国務長官とロシア外相が発表した会談の内容

 この点について米国のティラーソン国務長官が発表した内容の骨子は、以下のとおりである。

・トランプ大統領は会談の冒頭から、ロシアが昨年の米国大統領選挙に不当に介入したという情報を提起して、「この問題を両国関係の障害にしないように、あえて問いたい。ロシア政府はそういう介入をしたのか」と問いつめた。その口調は対決するかのようだった。トランプ大統領は「米国民はロシアの介入に深刻な懸念を抱いている」とも述べた。

・トランプ大統領は、この「ロシア介入疑惑」について数回にわたって問題提起をして、プーチン大統領に迫った。だが、プーチン大統領は「(ロシア政府が米国選挙に介入したという)そんな事実はない。もし介入があったと主張するなら、証拠を示してほしい」と反論した。この問題に関する両首脳のやり取りは通算40分に及んだ。

・トランプ大統領は「今後の課題は、米露両国がこの解決できそうもない見解の相違をどう乗り越え、両国関係の前進を図るかだ」と述べた。また、「ロシアがこれから米国の民主主義や他の諸国の民主政治に介入しないことを誓約することも重要だ」とも述べた。プーチン大統領はそのための協議には応じてもよいという態度をみせた。

 一方、ロシアのラブロフ外相も、首脳会談の内容について以下のように発表した。

・トランプ、プーチン両大統領は会談の冒頭から米側の提起した「ロシア疑惑」について討論した。ただし、両首脳の口調は対決調ではなかった。

・トランプ大統領は、プーチン大統領の介入否定を「受け入れた」。そしてトランプ大統領は、「米国内の一部勢力がこの『ロシアの介入』を誇張して語っているが、その証明はできていない」とも述べた。

民主党側は新たな攻撃材料が必要に

 2人の発表を総合すると、今回の米露首脳会談でトランプ大統領が「ロシア疑惑」を冒頭から取り上げ、プーチン大統領を詰問する展開となったことは間違いないようだ。

 トランプ大統領としては、米国内で民主党側から受けている「トランプ陣営は選挙戦でロシアのプーチン政権の力を借りた」という非難に対して、身の潔白を証明する材料を得たことになる。一方、「ロシア疑惑」を追求してトランプ政権を攻撃する米国の民主党や主要メディアの側は、新たな攻撃材料を必要とするようになったと言えよう。

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筆者:古森 義久