「世界一標高が高いギャラリー」をもつアーティストが教えてくれたこと

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世界で約50名しか成し遂げていない偉業「探検家グランドスラム」(世界七大陸最高峰、北極点、南極点を制覇すること)を世界最年少で達成した南谷真鈴さん。本連載では、南谷さんが快挙を成し遂げることができたエッセンスをお伝えするべく、話題の新刊『自分を超え続ける』の内容を一部公開いたします。連載第7回。

夢の邪魔をするのは自分の弱さだけ

 放課後はジムでトレーニングし、夜帰宅してから受験勉強。

 朝はジョギングをし、洗濯をしてから学校へ。

 そんな生活を送りながら冬を迎え、いよいよ、南米大陸最高峰アコンカグアに登る日が近づいてきました。

 2014年12月18日、期末テストの最終日、私は学校が終わるとまっすぐ成田空港へ向かいました。

 目的地はアルゼンチンのブエノスアイレス。見送りの人もいないまま、いよいよエベレストに向けたプロジェクトの始まりです。

 地球の反対側までの長いフライト。現地入りしてまもなく、さまざまな国から来たクライマーで編成されるチームの一員となり、私はアコンカグアのベースキャンプがあるプラザ・デ・ムーラスを目指しました。女性は私を含めて2人、男性は7人。

 クリスマス直前のベースキャンプはお祭りみたいに盛り上がっていて、私はそこで18歳になりました。
 バースデイだし、ずっとやりたかったことが、ついにスタート。私もうきうきしていいはずなのに、なぜか心は沈んでいきました。

 生まれて初めての、本当の意味での海外1人旅。
 みんなお酒を飲み、ラテンミュージックに合わせて踊っているけれど、未成年の私はお酒も飲めず、「大人の中に少女が1人」という状態で少し浮いています。

 さらにそこは南米で、みんなが話しているのはスペイン語です。それまでもいろいろな国に旅行していましたが、連れがいないのに英語が通じないのはさびしく、ストレスでした。

 そんななかベースキャンプにいると、香港にいる父の顔が浮かびました。
 日本にいる友人たちの顔も浮かびました。
 私をはげますために、毎日手紙を書いてくれた親友を思い出しました。

 もちろん、誰とも連絡をとることはできません。

 追い討ちをかけるように、入山3日目、チームメイトでもう1人だけいた女性が体調不良のため、撤退を決めてしまいました。ということは、チームに女の子1人で登山をしなければならないのです。

 私は中学時代、17歳でエベレストに登頂したネパールの女性登山家のニムドマ・シェルパさんの記事を読んで、強い感銘を受けていました。また、エベレストにチャレンジしようという強い動機づけにもなりました。

 若くして両親をなくした彼女は、貧しさに負けない自分の姿を見せることで、同じ苦しい境遇の子どもたちに勇気を与えようとしていると書いてありました。同時に彼女は「女のくせに」という偏見と闘いながら登頂を果たしたと記事にあったことも印象的でした。

 女性クライマーは男性に比べて体が小さくて体力がないし、いろいろとハンディがあります。トイレが不便な山に行くのに生理があることもその1つだと思いますが、タイミングが悪いことに、私も月々のそれが始まってしまいました。

 体調のせいで感情的になっていたこともあり、私はアコンカグアで何度も泣きました。たった18年ではあるけれど、「人生でこんなに泣いたことはない」というくらい、声を出して号泣しました。

 何もかもが初めての環境。
 孤独と心細さ。
 そして何より、不安だったのです。

 応援してくれた友人や、サポートしてくださった方々の期待も考えると、自分の決意が、突然「できるだろうか?」という不安に変わりました。その不安が、プロジェクトそのものや自分自身を飲み込むくらい大きくなって、襲いかかってきました。

 「これから私には、長い道のりが待っている。自分のために自分で始めたことだけれど、私にはやり遂げる力があるのだろうか? 1人でつらい時にも、それに打ち勝つ強さが私にはあるのだろうか?」

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