山本幸三公式HPより

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 加計問題、森友問題で注目が集まっている、安倍首相ら有力政治家とその"お友だち"という構図。まったくの個人的な関係に国財や血税を投入し、利益供与や便宜を図るなどといった行為は、たとえそれが法的にグレーゾーンであったとしても、国民は納得しない。憲法15条にもあるように「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」からだ。

 この人はどうだろう。加計問題をめぐる国会答弁で無責任発言を連発し、矛盾を次々さらけだしている山本幸三地方創生担当相のことだ。

 昨年9月、山本地方創生相は、自身が代表取締役社長を務める会社に資金を提供していた人物に関する「インサイダー取引」容疑の強制捜査に対し、国会で疑義を呈する質問をし、捜査に圧力をかけていたという疑惑を「週刊文春」(文藝春秋)と「週刊新潮」(新潮社)に報じられた。

 つまり、山本氏は"お友だち"というべき会社の資金源となっていた人物を、国会議員の権力を濫用して守ろうとしていたというわけだ。だが、この疑惑について、山本地方創生相は昨年の国会答弁で「圧力という趣旨は一切ない」「質問を頼まれたことはない」などと弁明。時間とともに追及も消えていき、このまま逃げ通すかに思えた。

 しかし、昨日10日、共同通信などが、この圧力事件をめぐる"新証言"を報道したのだ。山本氏の疑惑は一層濃厚となり、普通なら、引責辞任に追い込まれるのは必至だ。

 まずは、圧力事件の概要を振り返っておこう。週刊誌報道によれば、山本氏が社長を務める「ブルーエコノミー・ホールディングス」(以下、ブルー社)では、山本氏の知人であるX氏が取締役に就いていたのだが、このX氏が実質的に支配する会社に対し、横浜市の金融業者である加藤次成氏が2億円を提供。そこから5000万円が山本氏のブルー社に流れていたという。

 じつはこの加藤氏は、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)の執行役員だった吉岡宏芳氏によるインサイダー取引事件で、吉岡氏とともに金融商品取引法違反の疑いで2012年6月に逮捕された人物だった。

 そして、加藤氏は逮捕前の11年9月に証券取引等監視委員会(SESC)によって強制調査を受けていたのだが、捜査の真っ只中だった12年3月5日、山本氏は衆院予算委員会の分科会で"吉岡氏は知人"とした上で、SESCの強制調査をこう批判したのだ。

〈これは本当に、嫌疑、そういうものが犯則行為にならないということになれば、誰がその責任をとるのかという話にもなってくるわけであります〉
〈私は、こういう調査のやり方しかできない監視委員会というのはある意味で本当に必要なのかなというようにも思ってきていまして〉

 結局、この質問から3カ月後に吉岡氏と加藤氏は逮捕されたのだが、山本氏のこの国会質問は、自身の会社の"資金源"となっていた人物を庇うための行為としか思えない。しかも、山本氏は国会質問という議員の特権を使って、こうした圧力質問を行なったのだ。

 これを憲法で禁じられている「一部の奉仕者」と言わずしてなんというのか。明らかに自分の利害に関わる"お友だち"へのえこひいきだが、前述したとおり、山本氏は「圧力という趣旨は一切ない」などと言って、事件をうやむやにしようとした。

 そこに今回、決定的な新証言が飛び出したのだ。

 共同通信によれば、山本氏は2012年5月ごろ、SESCの幹部を議員会館に呼び出し、知人のインサイダー取引事件に関して「人権を軽視した違法な調査だ」などと発言していた。記事では〈関係者への取材でわかった〉と書いてあるが、報道の背景を推察するに、当時の山本氏と直接やりあった証券監視委関係者の証言である可能性が高いだろう

 他方、山本地方創生相は、共同通信の取材に対し「(そういう事実は)ありません」と否定しているという。だが、国会議員が証券監視委幹部を直接呼び出し「違法な調査だ」などと恫喝するのは、間違いなく政治権力を使った圧力に他ならない。繰り返すが、これは大臣辞任に相当するスキャンダルだ。会見を開き、真実をつまびらかにすべきなのはもちろん、首相の任命責任も問われるところである。

 だが、山本地方創生相の性格や、安倍政権の性質を考えれば、彼らがまともに説明責任を果たすとは思えない。それは、この間の加計問題での発言や、昨日の閉会中審査での答弁を見ても明らかだろう。

 たとえば山本地方創生相は、6月16日参院内閣委では「広域的に獣医学部のない地域に限り新設を認める」とする文言を巡って「限定しようという意図をもって(私が『広域的に』という文言を)入れた」と答弁しておきながら、6月27日の会見の説明では「別に今治に限ったことではないとして考えておりました。『広域的な』ということですね」と矛盾そのもの。

 さらにその後、安倍首相が「規制改革推進の立場から速やかに全国展開を目指す」などと言い出すと、山本地方創生相も閉会中審査で「全国展開するのは原則。総理は原則に従って言っただけ」などと答弁。当初の「広域的に獣医学部のない地域に限り新設を認める」という話はなんだったのか、担当大臣として完全に意味不明としか言いようがない。


 また、おなじく閉会中審査では、獣医師の需給が明らかでないのに押し切ったことを追及され「需給の数とか量をはっきり示すのは無理」と逆ギレ。それでいて、閉会中審査後に記者から「国民に丁寧に説明できたか」と質問され「私はそう思っている」などとのたまった。

 ちなみに、安倍首相と山本地方創生相の無茶苦茶な「速やかに全国展開」発言について、前川喜平・前文科事務次官は"今治での成果をきちんと評価しなければならないが、学部から卒業生が出るのに6年、研究者を養成する大学院をつくるのならばさらに年数がかかり、少なくとも10年は必要"と、いかに安倍首相らの発言が現実を度外視しているかを論理的に説明していた。

 いずれにせよ、矛盾だらけのトンデモ答弁を繰り返し、真相解明には程遠いにもかかわらず「国民に丁寧に説明した」などと言ってのける山本地方創生相が、今回、新証言が報じられた圧力事件についても、誠実な対応をとるとは到底思えないのだ。

 しかし、これだけは確かに言える。もちろんメディアの追及は必要不可欠だが、もしも山本地方創生相が昨年時のように逃げ切れると考えているのなら、あまりにも舐めすぎだ。

 繰り返しになるが、森友問題と加計問題は、確実に国民のマインドを変えた。安倍政権の周辺や利害を共有する友人・知人たちだけがうまい汁を吸う、そんな安倍政治が不公平であることを、多くの人たちが実感したのだ。

 その怒りは、支持率として表れている。何度でも言うが、安倍政権は国民を甘く見ないほうがいい。
(編集部)