水害に見舞われた常総市も、感染症の拡大は抑え込んだ(2015年9月12日、編集部撮影)

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福岡県と大分県を中心に2017年7月5日以降記録的な大雨が降り続き、甚大な被害をもたらした。両県では多くの地域が洪水に見舞われ、家を失った人たちの避難所生活の長期化が懸念されている。

暑い時期と重なった今回の豪雨で今後注意すべきは、衛生面だ。気温の上昇、汚水の影響、水不足による手洗いの困難さから感染症の対策が急がれる。

レジオネラ症、手足口病にも注意

大雨や河川の氾濫で、福岡県朝倉市や東峰村、大分県日田市では土砂崩れや浸水の影響が深刻化した。雨は断続的に降り続いており、住宅が冠水、あるいは土砂災害で流された被災者は、当面は避難所での生活を余儀なくされる。

国立感染症研究所は2017年7月7日、ウェブサイト上で、今回の豪雨による「注意すべき感染症」を挙げた。「災害そのものに起因する感染症」はレジオネラ症、レプトスピラ症、破傷風、また「避難所等の集団生活で発生しうる感染症」は急性胃腸炎・下痢、急性呼吸器感染症、地域の発生動向ではA群溶連菌感染症や手足口病のリスクも高まるようだ。

7月10日放送の「NHKニュース7」は、開設から1週間たった東峰村の避難所のひとつで、腸炎や下痢の症状を訴える被災者が増えてきたと報じた。今も断水が続き、衛生状態が悪い。避難所の医療支援にあたる井上一郎医師はNHKの取材に、「水がないので手が洗えない。爪からうみが入って感染を起こす」と説明していた。

大きな水害は、近年頻繁に起きている。ちょうど5年前の2012年7月11日〜14日には、今回と近い地域が豪雨に襲われていた。「平成24年7月九州北部豪雨」で、福岡、大分、熊本の3県にわたり30人の死者を出した。最近では2015年9月、台風18号が関東と東北地方に大雨を降らせ、茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊して死傷者が出た。

国立感染症研究所は、いずれのケースも「リスクアセスメントに基づく注意すべき感染症」を公表した。これは自治体、避難所での感染症リスクアセスメントツールのひとつとして提示したもので、「被災者の疾病罹患や死亡を減らすために必要な介入の優先順位づけに役立てること」が目的だとしている。2015年の台風18号による被害の際に出された同年9月14日時点でのリスクアセスメント表を見ると、急性呼吸器感染症、感染性胃腸炎・急性下痢症、レジオネラ症、レプトスピラ症、破傷風のリスクが「高」となっていた。

常総市の「大水害」では破傷風1件だけだった

2015年の台風18号で大きな被害を出した茨城県常総市。同年9月10日、市内を流れる鬼怒川が数か所で氾濫し、その後堤防が決壊した。市作成の検証報告書によると、9月11日時点で市内外に計39か所の避難所が開設され、避難した人の数は6223人に上った。

感染症は防げたのか。茨城県が公表した当時の災害対策の検証結果には、「感染症法に基づく届け出は,破傷風1件のみであった」との記述がある。茨城県健康予防課はJ-CASTヘルスケアの取材に、この人物は常総保健所管内(常総市、下妻市、坂東市、八千代町)在住で、15年9月15日、浸水した自宅の片付け中に誤って左手の指を釘で刺したことから発症したと説明した。一方、避難所からは消化器や呼吸器の不調を訴えた人の報告が数人ほど寄せられたが、すべて症状は軽く避難所での集団感染は発生しなかった。

保健予防課では、避難所開設後間もない9月11日午後には、常総市の避難所で消毒薬やマスクの配布を行っている。13日になると、常総市や県ボランティアセンター向けにチラシやポスターを作成し、掲示を通して被災者やボランティアが感染症を予防するよう注意喚起をしていた。

こうした初動での素早い対応と、避難所のこまめな巡回や指導の徹底で、感染症拡大を防げたとみられる。今回の九州北部豪雨でも、自治体や被災者、県外から来るボランティアにとって参考になりそうだ。