<イラクのモスルをISISから奪還した今こそ、イラク北部のクルド自治区の独立のチャンス。だが今のままでは新たな殺し合いが起こるかもしれない。クルド人のせいではなく、自治政府のバルザニ議長が指導者にふさわしくないからだ>

イラクのクルド自治政府で事実上の大統領を務めるマンスール・バルザニ議長は、6月28日付けの米紙ワシントン・ポストに、「イラクのクルド人が独立について選択する時が来た」という見出しの論説を寄稿した。

その中でバルザニは、「イラクのクルド人が自治権を行使することは誰の脅威にもならないし、不安定な地域の安定化につながる」としたうえで、次のように結んだ。


イラクにクルド人を押し込む1世紀にわたるやり方は、クルド人にとってもイラク人にとっても得策でなかったと認める時だ。アメリカと国際社会はクルド人の民主的な決定を尊重すべきだ。長い目で見ればそのほうがイラクとクルド自治区の双方にとって良い結果をもたらす。

クルド人には独立する権利があるか。答えはイエスだ。

チェコスロバキアとは違う

だが、クルド人の独立が地域を安定化させるというバルザニの見解は正しいだろうか。答えは絶対にノーだ。ただしその原因の大半はバルザニ自身で、クルド人が問題なのではない。

クルド人の独立を正当化するためクルド自治政府関係者はよく、1993年のチェコとスロバキアの連邦制解消が友好的だったことを引き合いに出す。

だが、紛争になった例も多い。スーダンと南スーダン、エチオピアとエリトリア、セルビアとコソボ、インドネシアと東ティモールなど、ゲリラ勢力の台頭や軍事衝突を伴った分離独立も多数ある。そうした紛争で、分離独立派が勝利して統治に成功した例は1つもない。恐らくそうしたケースの方が、クルド人の状況に近いだろう。

筆者は『Kurdistan Rising(クルド蜂起)』の中で独立後のクルド人の成功を左右するすべての問題とその取り組み方について書いた。

以下はそのほんの一例だ。

■水の共有に関する協定

バルザニは、クルド人独立後のイラク政府とクルド自治区はうまく共存の道を見出せると言う。だが70年以上前のものもある水資源の共同利用に関する協定の修正は大変だろう。チグリス川とユーフラテス川の水をめぐっては、トルコとシリアも含めた周辺諸国の間で小競り合いが絶えず、水戦争が勃発しかけたこともある。

マイケル・ルービン (アメリカン・エンタープライズ研究所レジデント研究員)