『ジョン・ウィック:チャプター2』監督が語る、キアヌ・リーブスの“凄さ”とアクションの重要性

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 キアヌ・リーブス主演映画『ジョン・ウィック:チャプター2』が現在公開中だ。引退した殺し屋のジョン・ウィックとロシアン・マフィアの死闘を描いた『ジョン・ウィック』の続編となる本作では、決して断ることのできないイタリアン・マフィアのボス暗殺の依頼を受けたジョン・ウィックが、全世界の殺し屋に狙われる模様が描かれる。リアルサウンド映画部では、前作に引き続きメガホンを取ったチャド・スタエルスキ監督にインタビューを行った。スタントマン出身の彼ならではのアクションについての考え方や、気になる今後のシリーズ展開についても語ってもらった。

参考:『ジョン・ウィック』でキアヌ・リーブス復活! 『マトリックス』スタント製作陣と生み出した“アクションの凄み”を解説

ーーあなたにとって監督デビュー作となった前作は世界中でスマッシュヒットを記録しましたが、今回の続編も全米で前作の2倍以上の成績を収める大ヒットを記録しましたね。

チャド・スタエルスキ(以下、スタエルスキ):実は前作を監督した時は、もう2度と仕事がやってこないと思っていたんだ(笑)。『ジョン・ウィック』は映画の主流である三幕構成ではなくほぼ二幕構成で、セリフで語らずにビジュアルで物語を綴っていく作品だったからね。どちらかというと神話的な様相を呈していて、ストーリーラインは非常にシンプル。そういう意味では、黒澤明やセルジオ・レオーネの作品の系譜にあると言えるね。現在主流になっているアクション映画はカメラをブレさせるようなスタイルが多いけど、それは僕たちが求めているものとは正反対だった。そういった流れに反するという意味ではリスキーだったし、まさかヒットするとはという感じだったよ。

ーーそもそも長年スタントマンやスタントコーディネーターとして活躍してきたあなたが、監督をやろうと思った理由は?

スタエルスキ:実は小さい頃からずっと映画を撮りたいと思っていたんだ。僕はもともと身体も大きくて、マーシャルアーツやロッククライミング、バイクの運転などアクションスキルもあったから、それがきっかけでスタントをやらないかと声をかけてもらって、この業界に足を踏み入れたんだ。今振り返ると、内部から業界を学んでいくいい道筋だったと思うよ。昔から映画が好きだったけど、観ることよりも作ることの方が好きなんだ。非常にチャレンジングな仕事でやりがいがあるし、想像力を働かせつつ、身体を動かすこともできる、僕にとってはちょうどいいバランスが取れている仕事なんだ。

ーー前作も今作も主演のキアヌ・リーブスと脚本のデレク・コルスタットとタッグを組んでいますね。ストーリーはどのように作り上げているのでしょうか。

スタエルスキ:脚本はもともとないようなものだよ(笑)。僕は脚本を書くのが得意ではないんだけど、ストーリーを作るのは得意だから、一般的な映画とは作り方が異なってくるんだ。だから、脚本家やキアヌと一緒にストーリーを作り上げていると言える。キアヌとはキャラクター描写などお互いのアイディアを数週間かけて出し合うんだ。そこで意識するのは、キャラクターが何をやっていきたいか、いわばキャラクターのストーリーで、それがまとまってから脚本家と話をする。結局、僕は神話が好きだから、プロットで悪い奴をやっつけるとか、女の子を助けるとかはどうでもいいんだ。キャラクター自身がどのような旅路を経て行くかの方に興味がある。だからそういう話の作り方になるんだ。ジョン・ウィックには人としての複雑さがあるから面白いんだよね。一度脚本を出したらもうこれ以上変えるなと鍵をかけてしまうようなメジャースタジオのやり方とは、作り方が全く違うんだ。だからメジャースタジオの映画は似たり寄ったりになってしまうんだよね。スタジオものを否定するわけではないし、僕も面白いと思いながら観ているけど、どれも一緒だし、ちょっと衣装を変えただけのような気がするね。僕らはそんな作品がありふれた中で、口直しになるような作品を作っていきたいと思っているんだ。

ーー『ジョン・ウィック』シリーズにおいては、やはりアクションが大きな見どころのひとつですが、今回の作品では前作以上にアクションが進化していますね。

スタエルスキ:アクションはキャラクターを描く上で1番大事な要素だね。偉大なアクションスター、例えばジャッキー・チェンやドニー・イェンなんかは、いいキャラクター作りができるアクションスターだと言える。スタントダブルに頼らず、自分自身でアクションもこなすから、キャラクターにも信憑性が生まれるんだ。一方で、彼らのことが大好きでも、彼らが映画の中で演じていたキャラクターの名前を思い出せない人も意外とたくさんいる。結局みんな彼ら本人を観たいわけで、彼らがどんなキャラクターを演じているかにはあまり興味がないんだ。ジャッキー・チェンやドニー・イェンこそがキャラクターそのものと言えるんだよね。だからこそ、映画の内容やストーリーラインは僕にとってそこまで重要ではないんだ。今流行りのスーパーヒーローものは、マスクを被ったキャラクターがいて、スタントは俳優のダブルがやって……という状態だから、正直キャラクターとして生きてこない。ジャッキーやドニーもそうだけど、キアヌはジョン・ウィックという存在を超えている。それが本作の魅力にもなっているんじゃないかな。

ーーアクションシーンでは、カットを複雑に割らず、長回しで撮っているのも印象的です。

スタエルスキ:1作目からそういう意識を持ってやっているよ。僕が目指しているのは、アジア的なアクションなんだ。そのようなアクションは、相当練習を積まないと長回しで撮ることができない。それこそさっき挙げたような黒澤映画やセルジオ・レオーネからの影響が強くてそういうスタイルになっているんだけど、僕はライブダンスショーを見せるような形で映画を作っている。2時間のダンスショーがあるとしたら、そのダンスショーに出演するダンサーは、2時間のために1年間のリハーサルをする。だから失敗は許されないわけなんだ。そういう意識で僕たちも映画を作っているから、カメラワークでごまかそうとかはまったく考えていない。できるフリをするのではなく、本当にできるようになって、それを堂々と見せる。だから、僕らが俳優にカメラを向けている時は、本当に俳優やスタントマンの自慢をしているようなものなんだ。その分、相当な訓練を積まないといけないのだけどね。

ーーそんなキアヌ・リーブスとあなたは、あなたが彼のスタントダブルを務めた『マトリックス』など長年にわたる付き合いがありますよね。彼の役者としての魅力はどのようなところにあると思いますか?

スタエルスキ:キアヌは俳優というよりはフィルムメーカーであり、パフォーマーだ。何か秘訣だったりマジックみたいなものはなくて、とにかく努力して、理解して、きちんと課題をやる。遅刻もしないし、ビジネスもわかっているし、カメラの組み立て方だって知っている、非常に優秀な人間なんだ。プロデューサーも監督も自分自身でアクションもできるからね。何よりいい映画を作りたいという思いや映画作りに対しての情熱に溢れていて、童心を忘れずにそれを楽しんでいる。20人を撃つようなシーンを撮って、楽しいと思ってくれるんだ。そういうところが彼のいいところだね。僕がこの先ずっとキアヌの映画を撮ることになっても何の問題もないよ。ハートがあり、情熱があり、いい意味でしぶとい。どうやったって殺すことができない人物だね。

ーータイトルがただの『2』ではなく、『チャプター2』というのも面白いですね。

スタエルスキ:これは本のチャプター(章)からきているんだ。今回の作品は、前作から時間の経過がなく、すぐに始まるからね。前作の『ジョン・ウィック』は2日半しか描いていないし、今回の『ジョン・ウィック:チャプター2』も同じなんだ。『ジョン・ウィック:チャプター3』もたぶんそうなるよ。すべて合わせても1週間ぐらいの話に収まるからチャプターなんだ。このシリーズでは、前作にも今作にも登場する“コンチネンタル(ホテル)”の世界を描いている。コンチネンタルには50のチャプターがあって、今はまだその中から3つのチャプターを取り上げただけ。これはまだコンチネンタルがある世界の中のほんの一部に過ぎないんだ。そういう考え方だよ。

ーーなるほど。既に動いている『3』に続いて、TVシリーズの制作も決定しているそうですね。TVシリーズはどのような内容になるのでしょうか?

スタエルスキ:TVシリーズは今練り始めているところなんだ。ジョン・ウィックだけじゃなくて、より世界を描いたものになると思う。ひとつ言えるのは、TVシリーズは相当面白いものになるということだね。コンチネンタルは世界中の各都市にあるから、世界中のアサシンやマフィア、ヤクザなどが登場することになるんじゃないかな。(宮川翔)