その左腕と背中に途轍もないプレッシャーを感じながらも、福田は「凄く楽しいんです」と微笑む。頼もしきリーダーだ。写真:安藤隆人

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“赤い彗星”のキャプテンにして、ナンバー10を担う。
 
 左腕と背中にずっしりと重みを感じながらプレーしているのが、東福岡のMF福田湧矢だ。200人以上の部員を誇るチームにあって、1年時から出場機会を掴んできた。そんなプレーメーカーがついに最高学年を迎え、当然のごとく、プロスカウト陣の注目を集めている。今年の高校サッカー界の目玉のひとりだ。
 
 やはりそのプレッシャーは、並大抵ではなかったようだ。
 
「1、2年生の頃は緊張するなんてほとんどなかったんですが、3年になって10番を背負うことになって、キャプテンも任されています。想像していたのとはまるで違う感覚で、これまでキャプテンや10番をつけていた先輩たちは、相当凄いものを背負っていたんだなって思います。それを日々実感しながら過ごしています」
 
 7月10日、東福岡はプレミアリーグWESTの第8節、アビスパ福岡U-18戦を戦った。敵地での福岡ダービー。13分に先制を許す苦しい立ち上がりとなったが、2シャドーの一角としてプレーをした福田は、終始大きな声を張り上げてチームを鼓舞した。
 
「もっとしっかりと繋ごう! 慌てずやれば、かならず崩れるから」
 
 22分に左CKを得ると、福田が鮮やかな弧を描くキックでゴールを狙う。GKが必死で弾いたこぼれ球をDF長尾宏清が蹴り込み、同点に追いついた。さらに福田は36分、正確な縦パスでFW大森真吾の逆転ゴールをお膳立てしている。その後振り出しに戻されるも力強く突き放し、東福岡が4-2で勝利。3位に浮上した。
 
 福田は最後まで足を止めず、残り10分は鋭い寄せで猛プレスを仕掛けるなど、守備でも大いに存在を示した。
 
「今年のチームは出だしが良くなくて、例年に比べて弱いと言われてきた。僕もキャプテンとして、最初は監督やコーチに怒られてばかりでした。それでも、勝ち切るの力が少しずつ備わってきたのかなと、手応えを感じてます。個人的にはより前で仕事ができるようになってきました。自分の強みであるボールを運ぶ力と得点力に、磨きをかけていきたい」
 
 新チームの発足からここに至るまでには紆余曲折があったが、ひとつの転機となったのが、インターハイ予選だったという。
 
「県予選は絶対に勝たなきゃいけない。怖くなるくらい、凄いプレッシャーがありました。スタンドには東福岡を観にきているひとがたくさんいて、当然、負ければ叩かれる。そんななかでの一戦一戦は、本当にしんどかった。でも、突破できた。チームとしても自信がつきましたね」
 
 予選決勝直後のプレミアリーグWESTこそヴィッセル神戸U-18戦に敗れたが、それ以降は福岡U-18戦を含めて3連勝と波に乗っている。だが、ここからが難関だ。
 
 次節の相手は2位につける強豪、セレッソ大阪U-18。その先のインターハイ本大会は、厳しいゾーンに入った。1回戦で明徳義塾を下しても、2回戦の相手は昨季2冠王者の青森山田で、さらに3回戦では前橋育英とぶつかる可能性がある。ほかにも米子北や富山一、日章学園、京都橘という難敵が待ち構えているのだ。
 
 福田の脳裏に、1年前の苦い記憶が蘇る。インターハイ3連覇を狙った東福岡は大会初戦(2回戦)で、初出場の伏兵・昌平に足をすくわれ、よもやの敗北を喫したのだ。
 
「去年、僕らは初戦で負けてしまった。昌平は全力で挑んできてやりにくかったし、したたかでもあった。相手が一歩先を行っていて、いま振り返ってみても負け試合でしたね。まるで走れなかったです。だからその反省を活かして、今年は走れるチームにしようと思い、取り組んできました。1回戦の明徳義塾戦をしっかりモノにして勢いをつけて、青森山田戦に臨みたい」
 
 プレッシャーと戦い続ける男は、自信と決意を滲ませながら、まっすぐに前方を見据える。
 
「すべてをはね除けたい。もっともっと自分がチームを引っ張って、結果を残すことではね除けていきたい。もちろん10番もキャプテンも重たいけど、凄く楽しいんです」
 
 今季もメインキャストの一角を担う東福岡。その先頭には、かくも頼もしきリーダーがいる。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)