世界的に活躍するダンサー・菅原小春さんのカラダづくりの哲学。過去から学んだ答え、そして未来に見つめるものとは? 逞しさとしなやかさを兼ね備えた、25歳の素顔に迫ります。

「インタビューをはじめる前に、少しだけ踊ってもいいですか?」。

そう言うと、テンポのいい音楽とともにウォーミングアップがはじまった。しなやかな筋肉をまとったそのカラダは、ストレッチをしている時でさえ、まったくブレることがない。モデルのように華奢でもなければ、アスリートのように屈強なわけでもない。世界が注目するダンサー・菅原小春のカラダは、圧倒的な存在感と不思議な魅力に溢れていました。

表現の第一歩は、自分のカラダを認めること。

「子どもの頃は、背もそんなに高くなくて、カラダもずっと小さかったです。だから、スポーツもあまり得意ではなかったのですが、唯一“踊ること”だけは大好きでした。それで10歳の時にダンススクールに通いはじめたんです」

昼夜問わず、ダンスに明け暮れた10代。18歳で渡米した彼女がその名を知られるまでになるには、さほど時間はかからなかった。その確かな表現力を支えているのは、じっくりと時間をかけて鍛え上げられたコアのたくましさ。

「トレーニングは体幹が中心。常にダンスを軸に置いて考えているので、“この踊りならこういう力がいるな”というふうに、その時必要な筋肉だけをつけるようにしています。だから、アスリートの方たちが持っているような筋肉は全然ついていなくて、実は腕立て伏せも2〜3回しかできません。以前はパーソナルトレーナーの方についてもらっていた時期もあったのですが、結局、余計な筋肉をつけてもカラダが重くなるだけだと気づいて、“それならいらない”と。私のカラダは踊ることではじめて意味を持つものなんです」

そんな菅原さんも、つい数年前までは自分のカラダとの向き合い方に迷いを抱えていたんだとか。

「当時の私は、雑誌や広告に自分が出させていただく機会が増えてきたこともあって、美しさの基準を“スリムであること”と捉えていたんです。それで、“私も痩せなきゃいけないんだ”と半ば強迫的に思うようになり、ただでさえトレーニングでエネルギーを大量に消費しているのに、食事をきちんと摂らなかったり、その反動で過食になったり…当時はかなりアンヘルシーな生活をしていました」

しかし、どん底の状態になってようやく気付いたのは、“自分は自分である。他の誰でもない”という当たり前の事実。

「私にとっては踊ることに美があるはずなのに、他人の目を気にするあまり、“どういう自分であるべきか”をすっかり忘れていたんだと思います。大事なことは、“私はこういうカラダなんだ”“こういう顔で、この骨格なんだ”ということを知り、そこからどう表現に落とし込んでいくか。別に太っていても、どんな骨格でも、年をとっていても、何でもいい。“かっこいいカラダ”とは、自分らしく自信を持って生きている人のことなんだと今は思います」

今はカラダの見直し期。さらなる高みを目指して。

自分を理解し認めることで、コンプレックスを克服することができた。そう語る菅原さんにとって、魅力的な女性とは一体どんな人?

「相手に“なんで?”と思わせる人が、ミステリアスで素敵だなと思います。例えば、私はショートカットで背丈もあって体格もいいけれど、こういう見た目の人がパンツスタイルにスニーカーを履いているのは、正直言って普通なんですよ(笑)。ボーイッシュな見た目なら、むしろ、カラダのどの部分にフェミニンさや女性としての美しさが出せるのかを考えたい。こんな髪型をしていて、こんなカラダをしていて、でもちょっと女性らしさもあるけど、男なの? 女なの? と言われるくらいがちょうどいい。常に中間的な存在でいたいんです」

女性らしさをまとうのは、指先の動きや、首や肩、つま先などの微妙なニュアンス。さらに日常の何気ない風景にもインスピレーションは転がっているという。

「目の前にいる人の目の感じだったり、手の使い方だったり、ここからどうカラダが動いたら綺麗なメロディラインになっていくんだろうか、と想像してみたり。そんな物語の一つ一つからダンスの表現は常に吸収できるんです」

10歳でダンスをはじめて、現在25歳。菅原さんの言葉の端々からは、ダンスへのひたむきな想いが伝わってくる。そこで最後に、20代後半へ向けての抱負を聞いたところ、意外な言葉が飛び出した。

「最近、踊っているとカラダがものすごく痛むんです。自分でも“もう無理だな…”と思うくらい。今までそんなことはなかったけれど、でも、これはきっと私の踊り方の問題。あまりに気合や感情で乗り越えてきた部分が大きいだけに、カラダとスキルが全然追い付いていない証拠なんだろうなと思います」

本人が思っていた以上に、カラダは悲鳴を上げていた。痛みを覚えてはじめて、「このままではいけない」と思うようになったそう。

「今はもう一度、体幹トレーニングからカラダづくりを見直したいと思っているところ。自分のカラダをもっと知って、そのカラダに合う動き方をすれば今まで以上にレベルアップしていくことができるはず。いわば、今は“カラダの見直し期”。ある意味、これからがスタートだと思っています」

すがわら・こはる ダンサー、振付師。1992年2月14日生まれ。千葉県出身。国内外問わずさまざまなアーティストの振付やバックダンサーを務めるほか、世界的なブランドの広告やファッション雑誌にも登場。日本を拠点にヨーロッパ、アジア各国でダンスのワークショップも行う。シングルピアス(右耳)¥380,000 シングルピアス(左耳)¥280,000(共にMAKRI/The Showcase GINZA SIX 店TEL:0120・624・377)

※『anan』2017年7月12日号より。写真・彦坂栄治(まきうらオフィス) スタイリスト・後藤仁子 ヘア・KENICHI forsense of humour(eight peace) メイク・SADA ITO forNARS cosmetics(DONNA) 文・瀬尾麻美

(by anan編集部)