7月に入って、ブンデスリーガのクラブはすでに新シーズンに向けて動き始めており、先週末には各地で練習試合が行なわれた。シャルケの今季初の対外試合の相手はエアケンシュヴィック。昨季は5部リーグで最下位になり、今季は6部で戦うクラブだ。

 エアケンシュヴィックは、シャルケの本拠地ゲルゼンキルヘンから20キロほど離れたところにスタジアムを構える。スタジアムの横には練習場2面とクラブハウスがある。ちょっとしたビアホールまで併設しており、6部といっても侮れない。この時期、ビッグクラブはこうして周辺の町に出て行き、普段は対戦しないような格下のチームを相手に腕試しをする。この日は練習試合にもかかわらず、5000人を超える観客がつめかけ、夏祭りのような賑わいを見せた。

 
今季初の練習試合でゴールを決め、チームメイトに祝福される内田篤人

 シャルケの内田篤人はこの試合、後半開始から試合終了まで出場し、軽快な動きを見せた。ピッチに入った内田はすぐに2本、右サイドからクロスを入れて感触を確認すると、48分と54分にゴールを決めた。さらに58分にはタイミングよく縦パスを入れ、味方の得点の起点にもなっている。ピッチに立ってわずか15分の間にそれだけの仕事をすると、それ以降は個人アピールや雑なシュートに終始するチームメイトを横目に、全体のバランスを取りながらプレーする余裕を見せた。

「最初にいいクロスを2本、入れられたからね。その後は2点、ポンポンと入っちゃった」

 試合を振り返る内田の表情はすっきりとし、落ち着いているように見えた。昨年12月、ヨーロッパリーグ・ザルツブルク戦で復帰を果たしたときや、今年1月、スペインで行なわれた練習試合に出場したときに見せたような高揚した様子はなく、ここまで地道にトレーニングを積んできた余裕のようなものが感じられた。

 昨年12月の公式戦出場以来、内田はリハビリと練習を重ねてきた。1月の練習試合は、今回と似たような45分の出場だった。その試合で好感触を得たマルクス・ヴァインツィール前監督は、その後の練習試合やドイツ杯での起用を考えていたが、内田は他の箇所を少しずつ傷め、出場には至らなかった。

 それでも2月下旬にはチーム練習にフルで復帰。3月には練習試合のハノーファー戦でフル出場を果たす。このときは翌日になっても痛みが出ないところまで回復していたが、結局、昨季は最後までブンデスで出場機会をつかめなかった。現在、試合には右ひざにサポーターをして臨んではいるものの、ほとんど問題はないという。あとは試合勘と体力を戻すために実戦を積む段階にきている。

 2年余りのブランクを経て、内田はシャルケで8シーズン目を迎える。試合前にピッチに姿を現しただけで「ウシー!」と声援が飛び、ゴールを決めたときはスタジアムが文字通り湧いた。その後も内田がボールを持ったり、ダッシュしたりするだけで「ウシーコール」が巻き起こった。これはもちろん、ファン、サポーターに愛されていることの証(あかし)だろう。ただし、内田以外のサポーターに馴染みのあるシャルケの古株選手の多くはまだチームに合流していないという事情もある。

 試合会場ではシャルケの番記者やファンから「内田のケガは本当に治ったのか?」「内田の状態はよさそうだけど、またケガをするんじゃないか?」などという不安の声も上がっていた。公式戦で定期的に活躍しないかぎり、こういう声は消えないだろう。1月のときと同様、今回もこの1試合だけで今後を楽観視することができないのは確かだ。

 内田も「(問題は)継続性だからね。続けてできるかどうかだから」と、現状を冷静にとらえている。

「(先発した)コケは昨季、頑張っていたから、彼が先に出るのは当然なんじゃない? これからティロ(・ケーラー)だって戻ってくる。8月31日までは新しい選手が来るかもしれない。勝負はこれからでしょう。

 こうしてサッカーができるというだけで、ありがたいっていうのもある。サポーターを巻いてプレーできるんだったら、いくらでも巻く。でも俺、頑張るから」

 試合に出場できたことに興奮を感じる時期はもう過ぎた。本格的な復帰に向けて静かに闘志を燃やす、そんな時期に内田はきている。

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