今年度初めての国際大会であるワールドリーグを、中垣内祐一監督の途中合流という異例の形で戦ったバレーボール全日本男子。首尾よくグループ2で準優勝という成績を残し、ひとまずは上々のスタートを切ったが、早くも正念場がやってくる。7月12日から開幕する、世界選手権アジア予選だ。


大会前の合宿で笑顔を見せる石川祐希

 前回の2014年大会は、全日本史上初の外国人監督であるゲーリー・サトウ氏が率いて予選を戦い、韓国に完敗して出場権を逸した。本来は「リオデジャネイロ五輪まで」という契約だったにもかかわらず、事態を重く見た日本バレーボール協会はサトウ氏を急遽解任し、南部正司氏へと監督を引き継いだのである。

 1960年に初めて参加して以来、日本の世界選手権出場が途切れたのは初めてのことだった。それだけに、協会は出場権を逃したことを見過ごせなかったわけだが、4年計画で見ていたはずのサトウ氏を解任したことについては、かなり異論もあった。

 中垣内監督も世界選手権出場権を逸した場合、就任当初に”いろいろあった”だけに、「サトウ氏だってクビにしたのだから、解任せよ」という声が出てくることも考えられる。今大会で出場権を獲得できるか否かが、ガイチジャパンにとっての”試金石”となる。

 サトウ氏は、日本が世界選手権に連続出場していたことや、(自分のクビがかかった)大切な大会だということも知らなかったと語っていた。だが、中垣内監督にその釈明は通用しない。これまでも、「新生全日本」として若手中心で戦いながら、世界選手権予選だけはベテランを呼び戻して安全に出場権を獲りにいった例はいくつもあった。

 今大会も、本来は昨年までの主将、清水邦広を呼び戻す予定だった。しかし清水は昨季リーグ中に痛めた足首が、5月の黒鷲旗全日本男女選抜大会で再び悪化したため、招集に応じられないという。

 そのため、かつての全日本メンバーである大竹秀之のジュニア・大竹壱青がオポジット候補の最右翼だが、中垣内監督は「トランジションアタック(スパイクレシーブからのアタック)の決定率が非常に悪い」と苦言を呈す。つまり、こちらにサーブ権がある時の連続得点のチャンスが活かせないということだ。

 当の大竹は、全日本デビューを飾ったワールドリーグについて「ここで決めなくてはと緊張しすぎて、思ったようなプレーができない場面があったので、そこは修正していきたい。試合前にはモモクロを聴いて気分を上げています。世界選手権予選の前も聴くと思います」と、反省しつつも前を向く。

 このポジションに入れる選手については、大会直前の国内合宿でも決め手はなかったようだ。もちろん、大竹を徹底的に育成するのは当然だが、フィジカルと違って勝負強さは練習すれば身につくものでもないため、中垣内監督も思案のしどころだろう。そんな中で期待がかかるのは、やはり2人の若きエースだ。

「(ワールドリーグは)効果的なサーブ、ミドルの打数の増加、オーバーハンドでのレセプションの向上など、よいところはたくさんあった。特に、柳田将洋がサーブや攻撃で安定して活躍してくれたことが大きい。石川祐希も終盤にかけて非常によくなっていった」(中垣内監督)

 世界選手権は、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、台湾と総当たりして上位2チームに入れば出場権を獲得できる。オーストラリア以外は格下といってよく、柳田も「普通にやれば、いい結果がついてくると思う」と余裕を持っている。前回大会で出場権を獲得できなかったことについては、「前回は前回。今回は、今選出されている自分たちが全力を尽くすことだけ考えればいい」と力強く言う。

 一方の石川祐希も、ケガの様子を見ながら調子を上げている。

「合宿前のオフには、同期とご飯を食べにいったりして、リフレッシュできました。ワールドリーグは、最初はトスが合わずに苦しんだところがありましたが、終盤にかけては調整してうまく合うようになった。チームの仕上がりもどんどんよくなっていったので、このままの調子で大会に入れば大丈夫だと思う。(合宿の初めに)また腰を少し痛めたので様子を見ながらですが、スパイクの調子はすごくいいと思うので心配はしていない」

 世界選手権予選はオーストラリアの首都・キャンベラで行なわれる。オーストラリアとはワールドリーグで2度対戦し1勝1敗だったが、2戦目はオーストラリアのホームで競り勝っている。上位2チームに入るのはもちろん、格上のオーストラリアも破って、全勝で正念場を乗り切ってもらいたいところだ。

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