魚も草食男子化…しているわけではない(画像は一般的なコイ)

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英国の河川に生息する淡水魚のメス化が進んでいる――。気性が穏やかになったというような比喩ではなく、オスがメスになってしまうという深刻な事態だ。

こうした事態は2000年代初めから確認されており、その原因として考えられるのは下水を通して河川に流入した女性ホルモンによるものではないかと、調査を行った英エクセター大学のチャールズ・タイラー教授は指摘している。一体どういうことだろうか。

精巣の中に卵が詰まっていた

エクセター大学のプレスリリースによると、淡水魚のメス化が報告されたのは2017年7月3日に開催された英国漁業協会のシンポジウムだ。タイラー教授は2008年に全英51か所の河川でコイ科の淡水魚ローチを捕獲・解剖して調査を行ったという。

すると驚くべきことに捕獲したオスのローチの4分の1が、精巣の中に卵が詰まっているなどの「メス化」が確認されたのだ。

魚類の一部には雌雄同体で、生殖時期に状況に合わせてオスとメスを切り替えるという性質を持つものもいるが、タイラー教授は「ローチは一生の間で性別を変化させることのない単一性の魚である」とし、この変化は女性ホルモンのような働きをする何らかの汚染物質によって引き起こされたと推測。河川の水質調査を行った。

その結果、複数の河川で避妊薬などの医薬品に使用されているエストロゲン(女性ホルモン)が高濃度になっていることがわかったという。タイラー教授は英国のニュースメディア「インデペンデント」の7月3日付の記事で、「魚の変化はいわば人間の排出物の縮図」とし、

「エストロゲンを含む医薬品は少なくなく、服用者の数を考えると彼らの尿中に含まれるエストロゲンが河川に蓄積していくことも不自然ではない」

とコメントしている。ただし、女性ホルモンに似た作用を持つ化学物質も200種類近く存在するため、医薬品だけが原因だとは断定できないという。

魚がメス化しても死ぬわけではないが、オスは正常な精子が作れなくなってしまい子孫を残せなくなる可能性が高い。メス化率が高くなれば滅んでしまう魚もいるかもしれないのだ。さらにタイラー教授は抗うつ薬なども魚の気性を変えてしまう危険性があり、「医療の面からも環境に与える影響をより考慮すべき時期にきている」と警鐘を鳴らしている。

日本の川でも医薬成分は検出

日本では河川が医薬品に汚染されているということはないのだろうか。魚のメス化報告や全国的な調査などは行われていないようだが、自治体や大学が自主的に行った調査結果はいくつか確認できる。

2012年の報告だが、東京都健康安全研究センターはウェブサイト上で、多摩川流域の河川を対象に101種類の医薬品の成分が含まれるか調査したところ、下水処理場からの水が流入する河川で41種類の成分が確認されたとする報告書「水環境中のヒト用医薬品の存在実態及び環境中濃度の予測」を掲載している。

検出された成分に避妊薬などは含まれておらず、解熱・鎮痛剤や抗アレルギー薬などの成分が多い。検出濃度は最高でも数マイクログラム/リットルで、人間の基準で考えれば一般的に服用する量の約10 万〜100万分の1とまず影響はないと思われるが、魚類への影響は未知数だ。

そのうち、医薬品の成分もほとんど完璧に除去できるトイレ、なんてものが登場することがあるかもしれない。