ラファエル・ナダル【写真:Getty Images】

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4時間48分死闘で4回戦敗退…勝者待って退場、大会公式も賛辞「敗北の中にも品格」

 男子テニスのウィンブルドンは10日、4回戦で世界ランキング2位のラファエル・ナダル(スペイン)が同26位のジレ・ミュラー(ルクセンブルク)と対戦。4時間48分に及ぶフルセットの死闘の末、3-6、4-6、6-3、6-4、13-15で惜敗した。優勝候補の一角の31歳にとって、全仏オープンに続くグランドスラム優勝は叶わなかったが、試合後に気高い“20秒の直立”によるスポーツマンシップを披露。大会公式ツイッターが「敗北の中にも品格」と動画付きで紹介し、称賛の嵐を呼んでいる。

 これぞ、真の王者に相応しい振る舞いだった。

 2セットダウンから追いついたナダルだが、最終セットは実に28ゲームという消耗戦の末に苦杯をなめた。敗戦後、ナダルはベンチで身支度を済ませた。コートを去る準備が整ったが、大番狂わせを喜んだミュラーはまだ整理が終わっていなかった。優勝候補にとっては大きい敗退。一刻も早くコートを立ち去ってもおかしくない。

 しかし、ナダルは驚きの行動を取った。

 ミュラーを見たナダルは、ベンチ前で直立不動したのだ。ウィンブルドンでは対戦相手を称えるため、選手は一緒にコートから去る慣例もある。昨年、世界ランキング4位のロジャー・フェデラー(スイス)が準決勝でミロシュ・ラオニッチ(カナダ)に敗れた後も勝者を待ってからコートを去っていた。

 ナダルは約20秒間、悔しさを必死に押し殺す表情で前を見つめ、勝者の荷物整理を待っていた。

退場時にはスタンドに自ら歩み寄り、子供たちに丁寧にサイン

 苦々しい敗北の後にもスポーツマンシップを体現するナダルには観衆からスタンディングオベーションが起きた。そして、ミュラーとともにコートを去るナダルは、左手を振りながら人々の大声援に感謝の意を表明。さらに、ファンの声を聞くと、再び驚きの行動に出た。

 スタンドに自ら歩み寄り、そして、子供たちに丁寧にサインに応じたのだ。世界のトップ選手としての立ち位置を理解しているからだろう。こうして、ナダルは「4回戦敗退」という結果とともに、聖地を後にした。

 ナダルの示した一連のスポーツマンシップを、ウィンブルドンの公式ツイッターも動画付きで紹介した。

「敗北の中にも品格。巨大な激闘の後にも、ラファエル・ナダルは対戦相手のジレ・ミュラーとともにコートを去るために待った」

 このように称賛し、全仏オープン優勝10度というテニス史にその名を刻むレジェンドというだけでなく、スポーツ界屈指の紳士としても知られているナダルのジェスチャーを紹介した。

 これを受け、ナダルの行動を見たファンからも称賛の声が巻き起こった。

称賛の嵐「敬意と敬愛しか沸いてこない」「だからこそ、この選手を愛している」

「ラファエル・ナダルは最も品格のある選手だ。ダントツだ」

「この男を尊敬しなければいけない。スポーツマンシップだ」

「彼を愛さなければいけない」

「ワオ、これはすごい。彼がクイーンズ選手権で17歳で登場してきた時から、僕のお気に入りなんだ」

「これはすごい。彼はなんて謙虚なんだ」

「最後にサインもするなんて… 本物の紳士だ」

「この信じられないファイターに敬意と敬愛の情しか沸いてこない。1秒たりとも諦めなかった。レジェンド・ナダルは全てを出し尽くしたんだ」

「だからこそ、私はこの選手を愛している。一切、苛立ちを見せなかった。純粋な気品だ」

 ナダルが示した一流の品格については、米地元紙「USAトゥデー」電子版も「ナダルがウィンブルドンで早期敗退後、2つの信じられないスポーツマンシップを示す」と特集した。

 世界に称賛されたレジェンドの偉大さは、敗れてなお、輝いていた。