マルセイユ加入が決まったブラジル代表MFルイス・グスタボ【写真:Getty Images】

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活発な様相を呈している今夏のメルカート

 各クラブが17/18シーズンに向けて始動し、移籍市場の動きも本格化してきたフランス・リーグアン。例年以上に活発な動きが目立っているが、モナコやリヨンが欧州のコンペティションで印象的な活躍を見せたことが、今回のメルカートには影響を与えていそうだ。(文:小川由紀子)

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 各クラブとも新シーズンに向けて始動、この夏のメルカートも本格化してきたが、リーグアンの今回の市場はなかなか活発な様子だ。

 ここまでのビッグニュースとしては、マルセイユがウォルフスブルクからブラジル代表MFルイス・グスタボを獲得、そしてリヨンのFWアレクサンドル・ラカゼットはアーセナルへの移籍が決まった。

 アーセナルからリヨンに支払われた移籍金は6000万ユーロ(うち700万ユーロはボーナス)と報じられている。これは両クラブにとってクラブ史上最高額だという。

 ラカゼットは、14-15シーズン(27)、15-16シーズン(21)、16-17シーズン(28)と、3季連続してリーグ戦で年間20点以上決めている。これは1988-92シーズンのジャン・ピエール・パパン以来の快挙だそうで、あれほどゴールを量産していたズラタン・イブラヒモビッチでさえ成し得ていない。

 にもかかわらずディディエ・デシャン監督のフランス代表には定着できていないから、ロシアW杯を控えた来シーズン、新天地で活躍して指揮官にアピールしたい思いでいっぱいだろう。

 個人的にはラカゼットは素晴らしいストライカーだと思う。献身的だし、エリア内での決定力も高く、速い動きの中で的を仕留められる、タイプ的にはティエリ・アンリに似たストライカーだから、アーセナル移籍、と聞いてほっこりした気持ちになった。

 彼の地で英雄となったアンリもアドバイスをくれるにちがいない。それにベンゲル監督は、もとより自分のチーム作りにはまると確信した選手しか獲得しない。ロンドンでぜひとも一旗あげて欲しい。

 リヨンは、MF コレンタン・トリッゾもバイエルン・ミュンヘンに4150万ユーロで譲り渡した。

 ここ数年はギャラクシー化したPSGの一頭レースとなった中で、リヨンはラカゼットやトリッゾら、自クラブで育てた生え抜き選手を中心に上位のポジションを守り続けてきた。そうしてクラブとともに成長した選手が高額の移籍金とともに国外に羽ばたくというのは、なんとも理想的なwin-winだ。

 2人の離脱は寂しいが、きっとサポーターも、今後の活躍を期待しつつ彼らを見送ったことだろう。

「トルココネクション」という兆候

 ちなみにラカゼットを手に入れたアーセナルは、モナコのトマ・ルマールも狙っている。
昨季のチャンピオン、モナコからは、すでにベルナルド・シルバが5000万ユーロという大金でマンチェスター・シティに引き抜かれた。そして、18歳の怪物キリアン・エムバペには多数のビッグクラブから熱い視線が注がれている。モナコの周辺はまだまだ活発に動きそうだ。

 この夏のメルカートで、ひとつ気になる兆候は、『トルココネクション』だ。

 ジェレミー・メネーズ(ボルドー→アンタルヤスポル)、バフェティンビ・ゴミス(スウォンジー[→マルセイユ]→ガラタサライ)、マテュー・ヴァルビュエナ(リヨン→フェネルバフチェ)と、現時点ですでに元フランス代表の30代前半プレーヤーが3人、トルコリーグに鞍替えしている。

 トルコリーグのレベルが近年向上している上、30代のベテラン実力派選手に金銭面で魅力的なオファーを出せるというのが人気の秘密だという。しかもトルコはUEFAに属しているから欧州カップ戦出場のチャンスもある。彼らにとって悪くない選択肢というわけだ。

 移籍情報を専門的に扱う、その名もズバリ『MERCATO』誌のグレゴリー・ギャビエ編集長によれば、この夏のリーグアンの移籍市場は例年以上に活発に動きそうな気配だという。

「これまでに比べて、各クラブともより補強に予算を割いている印象です。昨シーズンの欧州カップ戦での成功もリーグアンのステータスを底上げし、海外の選手を惹きつける原動力になっていますね」

 昨季はモナコがチャンピオンズリーグ、リヨンがヨーロッパリーグでベスト4入りを果たした。ルイス・グスタボのマルセイユ入りなどもその好例だとギャビエ編集長は語る。

「PSGは依然として巨大な予算を用意しているでしょうが、彼らだけでなく、マッコート(元LAドジャースオーナー)がオーナーになったマルセイユ、ロペス(スペイン系ルクセンブルク人の実業家)が参入したリール、そしてロシアの富豪がバックにつくモナコなど、複数のクラブが強力な資金力で運営を強化していることで、リーグアンをとりまく市場全体にもポジティブな印象を与えています。フランスサッカー界にとっては好材料といえます」

優秀な外国人監督招聘というトレンド

 実業家たちがクラブ運営に乗り出すのは、強いチームに育ててクラブの価値を上げるためなのだから、そのために「補強」という投資をするのは当然の戦略だ。

 モナコの昨季のリーグ優勝、そしてチャンピオンズリーグ準決勝進出という成功例も、彼ら実業家オーナーにとってモチベーションになったことだろう。

 ギャビエ編集長曰く、目下フランスリーグ最大のトレンドは、外国人監督の参入だという。

「すでにPSGのウナイ・エメリ、モナコのレオナルド・ジャルディムらがいますが、来季はマルセロ・ビエルサがリールでリーグアンに復帰し、クラウディオ・ラニエリもナントでリーグアンに戻ってきます」

 選手育成に定評のあるフランスは、同じように指導者の育成にも自信があった。よってこれまで、各クラブとも指導者を国外に求めるというアイデアは乏しかった。それにはおそらく金銭的な問題もあったと思われる。莫大な資金で国外から名の知れた監督を招聘しなくとも、優秀なフランス人監督で十分だったのだ。

 風向きを変えたのは、11-12シーズンからカタール勢が参入したPSGだ。スター選手だけでなくスポーツダイレクターにもレオナルドという世界的スターを招き入れた彼らは、“ブランド監督”を手に入れるべくカルロ・アンチェロッティを招聘した。「スター監督なくして欧州での成功はない」というのが彼らのポリシーだったからだ。

 同じ頃ロシア勢が実権を握ったモナコも、経験豊富なクラウディオ・ラニエリにリーグアン昇格を託し、昇格後はポルトガル人のジャルディムにバトンを渡して昨季はリーグ優勝という大成功を収めた。

 PSG、モナコに続けとばかりに、マルセイユはビエルサ(トラブルもあったが…)、ニースはスイス人のファブレと、外国人監督は徐々に増え、そして彼らは実際に結果を出している。

「著名な監督が指揮をとることで、選手たちの興味をひくことにもなります。結果的に、これまでフランスリーグには興味を示さなかった国外の優秀な選手が参入してくることにもつながってくるのです」(ギャビエ編集長)

リーグアンはもはやセリエAには劣っていない?

 09-10シーズンから昨季までクリストフ・ガルティエが指揮を撮り続けたサンテティエンヌも、今夏、ついに指揮官を交代。後任にはスペイン人のオスカル・ガルシア監督を採用した。ガルシアはバルセロナのカンテラ出身で、バルセロナやエスパニョールでプレーした後、イスラエルのマッカビや、直近ではオーストリアのザルツブルクを率いた経歴を持つ。

 現時点で、リーグアンの外国人監督は6人だ。レキップ紙によれば、91-92シーズン以来の数だという。それでも昨季終了時のプレミアリーグの14人、ブンデスリーガの8人には及ばないが、リーグアンもそのトレンドに一歩近づいた形だ。

 ギャビエ編集長は、レベル、ステータス的に、リーグアンはもはやセリエAには劣っていない、と感じているという。

「注目度を高めるには世界的に有名な選手が少ないかもしれませんが、それを除けば、決して劣ってはいないと感じます」

 昨夏もバロテッリのニース入りといった驚きの移籍があった。その『スーパー・マリオ』ことバロテッリは「引き止めは難しいだろう」とコメントしていたルヴェール会長の予想を良い方向に裏切り、契約延長にサインした。サポーターから大いに愛され、サッカー的にも充実しているニースに留まることを希望したという。

 PSGのように夢のような高額サラリーを保証できるクラブ以外で、スター選手が残留を希望したというのは、リーグアンにとってポジティブな兆候だ。夏の盛りとともに、メルカートも最盛期を迎えようとしている。この夏は、どんなびっくり移籍劇を見られるだろうか?

(文:小川由紀子)

text by 小川由紀子