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●前例なき変革を遂げたセダンの本命

トヨタ自動車が“セダン復権”の期待をかける新型「カムリ」を発売した。デザインから走りまで、全てを一新して世に問うトヨタ・ミッドサイズビークルカンパニー(Mid-size Vehicle Company)の主力車種だが、日米でセダンからSUVに需要がシフトするなか、カムリはトヨタが課した重い使命を果たすことができるのだろうか。

○繰り返された「セダン復権」という言葉

カムリの前身である「セリカ カムリ」の誕生は1980年のこと。ミッドサイズビークルカンパニー・プレジデントの吉田守孝専務は新型カムリの発表会に登壇し、「ソアラ」「チェイサー」「セリカ」などの車種が生まれた1980年代を「クルマが注目された時代」と振り返った上で、新型カムリには「もう一度、ハンドルを握る歓びを」という思いを込めたと語った。

吉田専務は発表会で「セダン復権」という言葉を繰り返した。これは、日本や米国などで、クルマの需要がセダン系からSUVなどのライトトラック系にシフトしていることを意識した発言だ。セダン復権の使命を課す新型カムリには、デザインと走りの両面で全面的な刷新を施したという。カムリの開発責任者を務めたミッドサイズビークルカンパニー・チーフエンジニアの勝又正人氏は、今回のフルモデルチェンジを「前例のない変革」と表現した。

大変革を可能にしたのは、新型カムリが採り入れたトヨタの新しいプラットフォーム「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」の存在だ。トヨタはTNGAを2015年12月発売の「プリウス」から導入しているが、TNGAにもとづき、パワートレーンを含む全ての要素をゼロから作り上げたクルマはカムリが初めてだ。

●TNGA導入はゼロからクルマを作る「千載一遇」のチャンス

○デザインも走りも違う新しいカムリ

TNGAの導入により、大幅な刷新を遂げた新型カムリ。プラットフォームのみならず、全ての部品をゼロから開発できたのは、「千載一遇」のチャンスだったと勝又氏は振り返る。

新型カムリはデザインを見ても、2011年に登場した先代カムリからは大きく変化している。トヨタが新型でこだわったのは「理屈抜きのかっこよさ」。クルマをかっこよくするには「車高も(エンジン)フードも低い方がいいし、タイヤは四隅に配置した方がいい」(勝又氏)という基本的な考えのもと、エンジンルーム内に収まる部品のサイズまで考慮した上で、今回のスタイリングを実現した。

走りの部分でも、ゼロから作り直した新型カムリは大幅な進化を遂げている。勝又氏によると、TNGAで実現した低重心のパッケージは、走りのよさを生み出す基本的なファクターであるとのこと。重いものを少しでも低く、少しでも中央よりに配置することで、基本的な性能を飛躍的に向上させたそうだ。そのうえで、リヤサスペンションにダブルウィッシュボーン式を採用したり、ボディーおよびステアリング系の剛性を高めたりすることで、運動性能を大幅に引き上げたという。

パワートレーンには新開発の「ダイナミックフォースエンジン」を採用し、新世代のハイブリッドシステム「THS供廚鯀箸濆腓錣擦拭G啜の未2487ccで、モーターとエンジンを合わせたシステム全体の出力は211PSとなる。この組み合わせにより、同排気量ではトップクラスとなるリッターあたり33.4キロの低燃費を実現した。

米国ではガソリンエンジンの設定もあるそうだが、日本ではハイブリッドのみの販売となる新型カムリ。3つのグレードがあり、税込み価格は329万4000円から419万5800円となる。セダン復権を果たすためにも、まずは台数を伸ばしたいところだろうが、トヨタはどのような販売戦略をとるのだろうか。

●3チャネルの手厚い販売体制、イメージチェンジで若者にも訴求できるか

○トヨタのセダンユーザーに乗り換え需要?

日本における新型カムリの月販目標台数は2400台。年間に直せば3万台弱という数字だ。ちなみに、日本自動車販売協会連合会によると、2016年4月から2017年3月までの乗用車販売台数ランキングはトップがプリウスの約22万5000台。カムリと同じく、トヨタが「グローバル量販車」に設定する「カローラ」は8万台強という結果だった。もちろんカローラやプリウスとは価格も立ち位置も異なる新型カムリだが、セダン市場に逆風が吹いていると言われる中で、月間2400台の目標は達成できるのだろうか。

トヨタで国内販売を担当する村上秀一常務によると、日本には現在、新車で購入されたカムリが約7万台存在する。一方、トヨタのミディアムクラス以上のセダンに乗っている人は250万人に及ぶそうだ。この差に潜在的な需要があるというのがトヨタの見立てのようで、村上常務は、セダンユーザーの100人に1人でもカムリを購入してくれれば、販売目標達成は難しくないとの考え方を示していた。

○全国4000店の販売網

カムリの販売戦略として、トヨタは取り扱い店舗を増やす計画だ。従来は「カローラ店」のみの販売だったが、新型カムリでは「ネッツ店」および「トヨペット店」でも販売する3チャネル体制を敷く。これにより、カムリは日本各地に広がる約4000店の販売ネットワークに乗ることになる。

カムリはグローバル量販車なので、トヨタとしては当然ながら、世界での販売台数も伸ばしていきたいところ。米国では15年連続で乗用車販売台数ナンバーワンを獲得し、世界では100カ国以上の国・地域で累計1800万台超を売ったという実績を持つカムリだが、米国では「ホワイトブレッド(食パン)」というニックネームで呼ばれることもあり、堅実ながら特色に乏しいといったような評価もあったそうだ。そういう意味で、今回の「前例のない変革」が、米国市場に響くかどうかにも注目したい。ちなみに、米国でカムリは月間3万台超の売れ行きであり、新型でも同じ水準を維持していきたいというのがトヨタの考えだ。

吉田専務が1980年代に言及したことからも分かるように、トヨタが新型カムリの主な購買層と考えているのは当時のクルマ好き、もっと言えば50代以上の顧客だろう。しかし、今回の新型カムリはTNGA導入もあって大幅な変化を遂げているので、トヨタとしては往時のカムリを知らない若い客層の獲得にも挑戦するつもりのようだ。SUV流行りの市場に乗り出す新型カムリの売れ行きと評判は、セダンというクルマの現在地と可能性を探る上でも重要な指標となりそうだ。