日本広しといえど、こんなに珍しい名前のバス停が、他にあるだろうか。

「途中」という名のバス停が、滋賀県の琵琶湖西岸を中心とした江若交通(滋賀県大津市)の堅田葛川線にある。


江若交通バス停キーホルダーのイメージ(京阪カードと江若交通のプレスリリースから)

なぜ、この名前になったのだろうか。Jタウンネット編集部は、江若交通に聞いてみた。

地名に「途中」が入っている



江若交通の公式サイトで確認すると、堅田葛川線の路線図はこうだった。50、52、55、56系統が、「途中」に停車する。52系統では、ここが終着点だ。

「次は終点、途中〜途中〜」

バスの運転手はこんな風にアナウンスをしているのかもしれない。


グーグルマップのスクリーンショット

Jタウンネット記者が2017年7月、江若交通・総務課の担当者に話を聞いてみると、「途中」の由来について、

「伊香立途中町(いかだちとちゅうまち)という地名があるためです」

と話した。

先の地図を見てほしい。伊香立途中町の集落に国道367、477号線の交差点「途中」が囲まれており、交差点から国道477号線を少し進んだ先に「途中」のバス停がある。


「途中」の交差点(Nagonoさん撮影、Wikimedia Commonsから)

地図上の「途中口」から国道367号線を直進し、京都市左京区大原、八瀬を経て、上京区大原口町に達するまでの全長16キロは、途中越、または栃生越(とちゅうごえ)、竜華越、途中峠と呼ばれている。


滋賀側から見た途中越(kajikawaさん撮影、Wikimedia Commonsから)

「途中」の発音は「と↑ちゅう」か、「と↓ちゅう」か

Jタウンネット記者は取材の最後、担当者にあの疑問をぶつけてみた。

(記者)52系統のバスだと、運転手さんは「途中」に到着する直前、どんなアナウンスをされるのですか。もしかして「次は終点、途中〜途中〜」とおっしゃるのでは......?
(担当者)ええ、そうですね。自動音声ですがね。
(記者)やっぱりそうなのですね。どうしようもありませんが、「終点、途中」って何だか面白いですよね。
(担当者)え、ええ......(苦笑)

担当者によると、「途中」の発音は「と↑ちゅう」ではなく、「と↓ちゅう」。通常の関西弁では、2音目の「ちゅ」を強く発音するが、バス停「途中」の場合、1音目を強く発音するらしい。なお担当者は関西出身でないため、あくまで「個人的感覚」だそうだ。