丸岡吉人(まるおか・よしと)  株式会社電通 電通総研所長。1958年広島県呉市生まれ。1984年東京大学大学院修士課程(社会心理学)修了、電通入社。これまでに、クライアントサービス部門(営業部署、コミュニケーション戦略立案部署)、研究開発部門、ビジネス開発部門に勤務した。研究開発部門では、ブランディングやメディアプランニングに関する電通のツールやメソッド、データベース、業務用ソフトウェアの開発を担当した。2016年7月から、電通デジタル代表取締役社長(兼)チーフオペレーティングオフィサーを務め、2017年3月より現職。中央大学ビジネススクール客員教授。『広告心理』(共著、2007年、電通)で、2008年日本広告学会賞を受賞

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技術の進歩と情報革命により、生産の方法は「同じものを全員に届ける」ということだけでなく「個人に合わせてカスタマイズする」ということが可能になってきた。販売も、「どこからどのように買うか」という点で消費者に多彩な選択肢を与えられるようになった。では、そうした情報を伝達する手段はどうだろう。人々の経済活動がこれだけ変化するなか、マスメディアだけが「一斉・大量」という20世紀的な形態のままということはありえない。果たしてマスメディアが進化する先には、いったいどんな景色が広がっているのか? 前々回、前回に続いて電通総研所長・丸岡吉人氏に聞く。

ソーシャルメディアで消費者と交流する

武田 それぞれが自由意志を持って発信し、横でつながり合うソーシャルメディアと、扇状に1点から広く同じ情報を発信してきたマスメディア。マス広告に精通されている丸岡さんにうかがいたいのですが、今後、マーケティング業界の方はソーシャルメディアをどう扱っていこうとお考えなのでしょうか。

丸岡 まず、ソーシャルメディアは発信だけでなく受信に活用できます。ソーシャルメディアで個人が発信する情報や意見を、マーケティングに取り入れていこうとは、どの会社でも考えているでしょう。例えば、少し前に芸人のマキタスポーツさんが発信して、ネットで火がついた「10分どん兵衛」をご存じですか?

武田 どん兵衛の待ち時間は5分と書いてあるけれど、10分待つとよりおいしくなる、という食べ方ですね。

丸岡 食べ方というのは典型的なのですが、お客様の側が調味料などの新しい使い方を思いつくことは多いですよね。そうした声をソーシャルメディアで拾って、改めて企業が多くの人に伝えて購買を促すということは考えられます。

 もっと新製品開発や改良に近い話だと、洗剤の研究をしている研究所があったとします。そこでは、「洗浄力が強い洗剤をつくろう」「すすぎが簡単な洗剤をつくろう」といった研究は進められているでしょう。

 でも仮に、冷たい水で手洗い洗濯することが多い地域の人が、「冷水にもさっと溶けて手洗いでも泡立ちのよい洗剤があったらいいのになぁ」と思っていたとします。こうした改良のヒントになる「困りごと」は、お客様の側にある。お客様自身が、「そのための洗剤の成分はこれだ」と知っているわけではありませんが、製品開発や改良の方向性を示すヒントを持っていることが多いんです。

武田 なるほど、そういう消費者の実態、隠れたニーズ、ウォンツを確認するためにソーシャルメディアを活用しようとお考えなのですね。

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