東京の女性たちは勘違いをしているかもしれない。

結婚できれば、それでハッピーエンドだと。

だが、生活を共にし始めてからが本番だ。結婚した後は、夫婦生活を継続するための「結婚維持活動」が必要である。

ー人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、 記憶力の欠如によって再婚する。

フランスの劇作家、アルマン・サラクルーの言葉のように、「結婚維持」のキーワードは果たして、忍耐なのか?

この連載では、東京で「結婚維持活動」に勤しむリアルな夫婦の姿をお届けしよう。

今週は、夫への愛がなくなったまま結婚維持活動を続ける、慶子を取材した。




<今週の結婚維持活動に励む妻>
名前:慶子
年齢:36歳
職業:化粧品メーカー 総務部
結婚生活:8年


好きでもない夫と暮らす毎日


今日、暑いですよね。しかも湿気がすごい!シャワーに入ったばかりなのに、もう汗かいちゃったわ。

えっと…今日は夫のことですよね。

夫とのことはねぇ…。

昔は延々と愚痴を言い続けられていたんですけど、もう最近は特に何の感情も湧かないんですよ、彼に対して。笑。

結婚して、5年くらいはね。

喧嘩したり、相手の言動にいちいち怒ったり傷ついたりもしていたんですけど。

今は相手が何をしようが、心が乱されないというか、ザワザワしたりすることもなくなったんです。楽ですよ!

ええ、夫のことなんて全く好きじゃありません。

え?じゃあなんで離婚しないのかって?

でも…じゃあ逆にお伺いしたいわ。

なんで離婚しなくちゃいけないのかしら?夫への愛がないから?

夫のこと、好きでなくても結婚し続けている妻なんて、私の周りにはたくさんいますけど。


夫への愛を失った経緯とは?


謎の同居人との暮らし


結婚当初は、3ヶ月くらいは仲良しでした。

でも、お互い仕事も忙しくって、彼も色々と社内でのストレスを抱えて、少しジメっとしてた時期があるんです。梅雨の真っ盛りみたいにね。

私も28歳で期待を膨らませて結婚したはいいけれど、家に帰ると廃人のように落ち込んでスーツのズボンだけを脱いだ夫がこう、ソファでボーッとしているのを目の当たりにして…。

もともと、少し強引なくらいグイグイ引っ張っていってくれる所が好きだったのに、その要素がなくなってしまったんですよ。

励ました方が良いのはわかっているんですが…なんていうか、私も疲れてるのに、仕事して帰宅した後に大の大人のメンタルケアまでなんて、そう毎日やってられませんよね。

それに、28歳って女性にとって一番良い時期じゃないですか。




それなのに、周囲の友人が食事会だパーティだって華やかな話題で浮かれる中、私の目の前にいるのはなんだか抜け殻みたいになってしまった夫なわけですよ。

もう、どうしても夫に対して優しくなれなくて。

今思うと、私も若かったんでしょうけどね。相手に期待しすぎていた部分もあったと思いますし。

でも、たしかそれからでしたね。歯車が狂いだしたのは。

抜け殻みたいな状況からは脱したのですが、もう、夫のやることなすこと全てが気に食わなくて。

休日行くレストランのチョイスもダメだし、せっかく朝ごはんを作ってあげたのにお礼も言わず無言で食べる、釣った魚には餌をやらないタイプで私のことなんて全然褒めてくれない。

髪を切ろうが、新しい服を着ようが無反応なんです。

もう、本当にことあるごとにぶつかってました。

抜け殻の反動で今度はMBAをとるんだー、なんて言ってスクールに通いだして、家庭内にもMBA用語を持ち込んだりして「うわ、だっさー。」なんて思ってました。

どう頑張ってもサラリーマン気質なくせに、起業したい起業したいってうるさかったですし。MBAは卒業したのに、結局今も同じところに勤めてますよ。

言ってることと行動のバランスが取れていないのも彼の男としての器の小ささを感じてずっと癪に障っていました。

もうこの頃になると愛情も何もなくて、なんで一緒に暮らしてるのか分からなかったですね。

少しずつ少しずつ愛情も興味も無くなって、夫は謎の同居人状態でした。


それでも慶子が離婚しない理由


仮面などかぶらない。ありのままに不仲。


喧嘩して実家に逃げ帰ったことも、1度や2度ではありませんよ。

でもね、同じように働きながら結婚している友人たちと「妻会」を定期開催していて、気がついたんですよ。
「あれ、別に、みんな夫とそんなに仲が良いなわけじゃない…?」って。

メディアやSNS上は仲良し夫婦で溢れていますけど、現実はそうでもない夫婦なんて沢山いる。

彼女たちと話していると、「夫婦仲はよくあるべし」っていう固定観念から解放される気がするんです。みんな自由だし、人生を謳歌している、って感じ。

私、彼女たちとは定期的に都内のホテルで妻会を開催していて、

この間はペニンシュラの『ザ・ロビー』のバルコニー席でアフタヌーンティを楽しんできました。




1日1組限定のこのスペースで、シャンパンを飲みながら思いっきりいろいろな話をして。

上からロビーを見下ろしながら、プライベートな空間で、誰にも聞かれたくない話を思う存分出来ました。

今時の妻たちは、別に夫との仲をわざわざ盛って話したりせず、ありのまま、喧嘩や不満も全部あけすけに話すんですよ。

もちろん、すごく仲が良い友人間に限りますが、女友達とラグジュアリーな空間で本音でおしゃべりするときほど、幸せな時間はありません。

で、彼女たちとも話していたんですが…。

好きでもなんでもない夫ですが、いないよりはいた方がマシなんです。

この年でバツイチになってまた配偶者探しというのも面倒だし、何かっていうと独身の女には肩身の狭い国じゃないですか。

なんというか、彼が婚外子を作っただとかDVとか、もう明日にでも離婚した方が良いっていう状況ではなく、ただもう愛がなくなっただけなので。

別に離婚するまでもないかな、というのが正直なところです。

謎の同居人状態の夫ですから、当然うちには子供がいません。でも、別にそこまで子供が欲しいわけでもないですし、子供を作りたいからって他の人を探すのも違うんじゃないかなって思っています。

それに、私自身友人に紹介されて何度か男の人とお食事に行ったりはしてるんです。

え?そうですよ、2人きりで。

でも、別に夫と離婚して、面倒な手続きを踏んでまで一緒になりたい!っていう男性とはまだ出会ってませんね。

出会ったら?ふふ、どうなんでしょう。

とりあえず、夫とは離婚しませんよ。

彼ってなんていうか、家電みたいなんです。なくても死にはしないけれど、夫がいる状態って便利だし、現代社会で生活するのにはとりあえず必要な存在というか…。

別に結婚生活に大それた意義とか理念を求めなければ、結婚なんて普通に維持できるんじゃないでしょうか?

▶NEXT:7月18日 火曜更新予定
冷めきった夫婦。慶子の夫の言い分とは?

【これまでの結婚維持活動夫妻たち】
Vol.1:婚活よりも大変な、結婚生活の“維持”。その秘訣とは?
Vol.2:子供を持ちたい夫 vs 持ちたくない妻。結婚維持活動の妥結点とは?
Vol.3:余裕がある分、悩み多き専業主婦。私の存在価値を作るのは、夫ではない
Vol.4:「母親みたいな女性」と結婚したつもりの、夫の誤算と苦悩
vol.5:「住所を変えたくない」支配型の姑との窮屈な同居に耐え続ける、妻の本音
vol.6:「女に本音を言う必要ない」がポリシーの、狡猾な夫の策略