『おんな城主 直虎』公式サイトより

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 柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第27回が9日に放送され、平均視聴率は前回と同じ12.4%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。

 今回も前週に続いて、龍雲丸(柳楽優弥)一党が本拠地としている商人の町・気賀が舞台となった。瀬戸方久(ムロツヨシ)が直虎(柴咲)に「井伊が気賀を治めればよい」と勧めていたのと時を同じくして、中村屋(本田博太郎)をはじめとする気賀の町衆も「井伊に気賀を治めてほしい」と申し出る。城を築くのに反対していた龍雲丸も途端にやる気になり、城の普請を任せてほしいと言い出す。方久の働きかけにより、今川氏真(尾上松也)も気賀の城を井伊に治めさせることを了承。井伊は銭を生み出す商人の町を戦わずして手に入れた――という展開だった。

 話のテンポは良かったし、「一見すると無理と思えるような難題を周囲の人々の助けでクリアする」というドラマの王道は押さえていたので、スッキリ感もあった。その反面、少々話が雑に進んだことは否めない。

 今川がいったん「気賀の城は大沢(嶋田久作)に任せる」と言ったものを覆そうという話なのだから、もっと何度も壁にぶつかってもいいはず。ところが、失敗したのはたまたまタイミングが悪かった一度だけ。「商人の町なのだから治めればもうかる」というのは誰にとっても同じはずなのに、今川の家臣である関口(矢島健一)はすぐさまそれを理解する一方、大沢は『商人たちが治めていた町を治めるなんてめんどくさそう』と井伊に譲ることをあっさり決断する。

 井伊に譲ったところで大沢にとっては何の得にもならないのに、そんな領主がいるものだろうか。大沢ではなく井伊に任せても良いかと持ち掛けられた氏真はといえば、武田との関係悪化のせいで現実逃避してしまい、「好きにせよ。どうせ余は能なしじゃ」とつぶやいただけ。乗り越えるべき高い壁がいくつもあるかと思ったら、実際にはまたいで越えられる程度の高さしかなかったという肩透かしだ。

 率直にいってこれではつまらない。弱小領主の井伊が知恵を使って強大な今川と渡り合う構図がおもしろかったのに、すんなりと物事がいきすぎている。公式サイトに掲載された矢島健一へのインタビューによれば、脚本家は「陰険さを絵に描いたような人物」として関口を描いているそうだが、そんな関口が方久にいい香りの香水をもらったくらいでコロッと態度を変えるのも、なんだか取ってつけたようだった。

 また、龍雲丸が自らの生い立ちについて、「一日中雲を眺めていても誰も自分に指図してこないことに気づいた日から、誰にも縛られず己の心に従って生きようと決めた」と直虎に語る場面も、長いだけで必要性がよくわからなかった。だが、直虎の心にはなぜか彼の言葉が響いたようで、心の底では仲間や根付いて暮らせる場所を求めていたのだろうとわかったようなことを言う。「その心に従うというところでは、龍雲丸はより龍雲丸になったような気がするがの」とセリフに至っては、もはや何を言っているのか意味がわからない。そんな意味不明な言葉を「いつも俺の考えつかぬことを言う」とまんざらでもない表情で受け止める龍雲丸。会話のレベルが高すぎてまったく付いていけない。もうちょっと地に足の着いた会話を交わしてくれたほうがありがたいのだが、この2人には視聴者のよくわからないところで通じ合う部分があるらしい。

 さて、今回で武田が今川に敵対する姿勢を明確に見せたことで、ようやくドラマとしても風雲急を告げる展開が近づいてきた。次週は、ツルツル頭に立派な口ひげをたくわえたあの肖像画にそっくりな武田信玄(松平健)も登場するようだ。ただ、いよいよ次の週あたりから盛り上がるか――と思わせておいてまだまだ引っ張るという展開がしばらく続いているため、予告を見ただけではいまいち信頼が置けない。もう折り返し地点を過ぎたところでもあり、そろそろ話を進めても良いのではないかと思うが、果たして来週も同じ感想を言うことになるのだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)