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Apple Storeで実施される無料の学習講座「Today at Apple」に、ファッションイラストレーターとして活躍する福田愛子さんが登場。「Live Art:福田愛子氏と一緒に最新モードをスケッチしよう」と題されたセッションがApple 銀座で実施された。

福田さんは、高校卒業後に米国マサチューセッツ州のブリッジウォーター州立大学グラフィックデザイン学科に入学。その前に語学学校にも通っていて、趣味でイラストも描いていたという。語学学校在学時、学校主催のコミュニケーションディナーに参加したところ、その帰りに立ち寄った書店で見つけたファッション誌に掲載されていたイラストに目を奪われる。写実的な画風であったそのイラストに衝撃を受け、自分もこんな作品を描きたいと思うようになったと当時を振り返る。

福田さんの作品を見たとき、宇野亞喜良とエドワード・ゴーリーをミックスしたようなタッチで、花や植物モチーフ、曲線的な装飾を多く用いることから、アールー・ヌーヴォーの作家からインスピレーションを得ているのかなという印象を受けたので、このエピソードはちょっと意外な感じがした。セッション終了後に改めて作風について伺うと、ティム・バートンが好きと仰っていたので、隔世遺伝的な影響下にあるのには違いないだろうが。

その後、日本に帰ってきてからグラフィックデザイナーとして企業で働くも、自分の仕事のありかたに疑問を抱くようになり、ファッションイラストレーターへと転進。収入が多いから仕事するのではなく、自分のやりたいことを生業としなければ幸せにはなれないと気付いたそうだ。最初のうちは厳しい状況が続いたが、現在は名だたるモード誌に福田さんの作品が掲載されている。ファッションの世界で仕事がしたいという想いはずっとあって、グラフィックデザイナー時代も、その業界での活動ではあったが、今は、本当に自分のやりたいことと結びついているのだ。

……といった感じで自己紹介が終わった後、ライブデモという形で、実際にiPad ProとApple Pencilを使って、どのように作品を仕上げていくかという、ちょっとしたパフォーマンスを披露。福田さんは「Adobe Photoshop Sketch」というスケッチ/ペイントアプリを愛用している。質感がアナログっぽいところがお気に入りのご様子だ。デモでは人物の写真を元に、アプリの「シェイプ」ツールを用いて格子状のフレームを作り、そのフレーム上に顔を描いていくという手法が紹介された。初心者向けなら、素材の写真をそのままトレースするという方法も考えられるが、彼女の場合は「描く」ということに拘りがあるように感じられた。安易なテクニックを導入するより良いという考えがあるようだ。

福田さんは、音楽を聴きながら描くのが好きらしく、この日もApple Musicで作ったプレイリストの曲を流しながら作業にあたっていた。「Aiko's Fave」と題されたプレイリストにはJusticeやThe Raptureをはじめとしたニューレイヴ以降のダンスミュージックが多く収録されている。最近のだと、GrimesやCHARLI XCXなどを聴いているようだが、The Strokesやfeistなどもリストに入っている。

作品のアプローチがどのようなものなのか紹介したのち、来場者にiPad ProとApple Pencilが配布され、皆でひとつ描いてみようということに。レクチャーされたように、写真を参考に描いていく人もいれば、着けていたApple Watchを描く人、履いていた靴を描く人などなど、十人十色の作品が仕上がっていく。

今回使用されたのは、もちろん、先日発売になったばかりのiPad Proだ。初めてiPad ProとApple Pencilに触ったと思しき初老のご婦人は、本当に紙でペンで描いているみたいに描けるのねと、感嘆の声を漏らしていた。新しいiPad Proでは、ディスプレイ機能の向上が図られており、Apple Pencilの反応が良くなっているという話だ。筆者はWWDC 17の会場で新しいiPad Proに触れる機会があったのだが、時間の都合で残念ながらApple Pencilとの組み合わせを試すことができなかった。より紙とペンで書くような感覚に近付いているということらしいので、早く使ってみたいところだ。

セッション終了後、前述の通り、福田さんに少しお話を伺うことができた。キャリアの初期は紙とペンで描いていたのだが、のちにiPad ProとApple Pencilの組み合わせへと移行。そのきっかけは何だったのか訊くと、昨年、日本科学未来館で開かれたビョークのVR展示プロジェクトでの体験を語り始めた。なんでも、その体験がある種の恐怖だったとのことだが、そこからデジタルの面白さに気付き、インスピレーションが得られたと述懐する。テクノロジーを利用するのだが、アナログの方法論で描けないかなという考えが生まれ、そこから問題意識のような探究心が生まれ、iPad ProとApple Pencil導入に至ったのだと。

画材としてiPad ProとApple Pencilを使うようになって、作風に変化はあったのだろうか、これについては、ハッキリ「ない」と答える。元々ペン画を描いており、人の影などもペン一本で描いていたので、基本的には変わりないとのことで、書き味も遜色ないから、それで変化があったことはないと明言する。ただし、殊、色鉛筆に関しては、紙との相性によって、描いたものの表面の質感が変化するので、ここだけは、従来の手法のままで描いているそうだ。これまでの手法とiPad、それぞれに良さがあるので、コンセプトにあわせて技法を採り入れるのが福田さん流なのである。

これからiPad ProとApple Pencilを使って絵を描きたいという人向けにおススメポイントを訊いてみたところ、「間違えられるってことですよね」と笑いながら即答。失敗したら描き直しだったのが、途中まで戻ってやり直しできるのはデジタル画材ならではのメリットである。また、移動時間の間でも描けるというのは嬉しいと、どこでも作業に取り掛かれる可搬性を指摘する。ちょっとしたアイディアも、浮かんだら、すぐ具体化できるというのは作家にとってありがたいことのなのだ。

また、裏ワザとして、体だけ描いた人物と顔だけ描いた人物を、あとからデータ上で組み合わせて、一つの作品に仕上げるというのがある、と、紙に描いた作品ではできないテクニックを教えてくれた。

福田さんの作風は、紙とペンを使ってた時代と変わっていないようだが、組み立てに関しては、相当な変化があったように見える。iPad ProとApple Pencilを使うようになってから、仕事の幅が増えたり、生産性が上がったりというのは想像に難くないところだろう。こういったクリエーションに関わる人でなくても、iPad ProとApple Pencilを使うことで日々の生活が良い意味で変化するということは、割と簡単に想像できると思う。

Today at Appleでは、写真、ビデオ、音楽、プログラミング、アート&デザインなど幅広い分野で、数十種類の新しい講座が開かれている。基本的なテクニックから、プロレベルのスキルまでを学べるというのが魅力ではあるが、それに加えて、集まったユーザー同士、そして、ストアのスタッフ、ゲスト講師とのコミュニケーションを深める場としても活用されているのだ。無料で、誰でも気軽に参加できるので、これからの夏休み、近くのApple Storeに足を運んでみてはいかがだろうか。