自身で描いたイラストをインターネットで公開する人は多い。そんな、創作を趣味・生業とする人に、「自分のSNSのアイコンを描いてもらいたい」と希望する人も、後を絶たない。

依頼者の中には、きちんと対価を支払う人もいるが、中にはイラストの無償譲渡を要求したり、不当に安い値段で買い叩こうとしたりする人もいる。また、「自分の絵はまだ下手だから安くてもしょうがない」と、労力に見合わない値段でも了承する作家、自ら進んでタダでイラストを提供する作家も少なくない。

こうした中、「日本イラストレーター協会」の公表するイラスト相場価格が、イラスト依頼時の価格決定に参考になると、ツイッターで話題を呼んでいる。

年賀状イラストも価格崩壊「最近は安すぎてほとんどお断りしています」

日本イラストレーター協会は、1999年にイラストレーターの権利保護や仕事の斡旋などを目的に設立された団体だ。約500人以上のイラストレーターが登録しており、会は、クライアントの希望に応じてイラストレーターを紹介する役割などを担う。

イラストの価格は、作者の知名度や使用媒体、使用期間なども考慮されるため上下はするが、同会のサイトは次のように説明している。

「例えばパンフレットなどで10センチメートル角に納まるくらいの小カットとして使用する場合、モノクロイラストで1点あたり3000円〜5000円、カラーなら5000円〜1万円というところが相場」

同協会会長の蟹江隆広さんは、この相場はここ2〜30年で変化していないと説明するが、もっと小さい仕事の場合、相場が下がっているのも現状だと話す。アマチュアが無料で描いたり安く提供したりすることが、市場価格の下落を誘発し、プロのイラストに対する価格も下げてしまっているというのだ。

「年賀状のイラストなど毎年かなりいろんな会社で募集していますが、中には採用されても数百円という金額でほとんど仕事にならないという話は聞きます。日本イラストレーター協会でも以前は年賀状の仕事を大量に受注していましたが、最近は安すぎてほとんどお断りしています」

同会に寄せられる問い合わせは、多いときで年間500件。年賀状の例以外にも、提示される金額が安すぎる場合には断るようにしているという。買い叩きについては「インターネットの普及により、増えていると思います」と、ネットの影響を示唆する。

著作権、版権に関する意識も千差万別「原画までもらえると勘違いする人もいます」

また、著作権に関する意識の差も広がっているという。購入した後、お金を払ったのだから二次利用や再配布をしてもいいと誤解している人が多く、同会のサイトでは

「イラストの著作権、版権に関しては、『イラストにお金を払ったから、こちらのもの』ではありません。特別な契約をかわさない限り、クライアントは1回使用する権利を得たというだけのことです。基本的に著作権、版権はイラストレーターに帰属しますから、2次使用や別の媒体に使用する場合は新たな料金が発生します」

と注意喚起している。しかし現状では、まだまだ理解が浸透していない。

「一旦お金を払ったら、そのイラストを何にでも使っていいと思っている人は多いです。さすがにプロのデザイナーからの依頼では少ないですが、個人の方はその辺の知識があまりありません。原画までもらえると勘違いする人もいます」

イラストの買い叩きには、購入する側が創作物の価値を低く見積もること、アマチュア作家が善意から安く売る風潮などが影響しているようだ。特に後者は、善意であるからなおさら、適正金額に是正するのは難しい。低価格での提供は、自身の首をじわじわ絞めることにも繋がりかねないが、これまで慣習として行われてきたものが改善するには、時間がかかりそうだ。