お酒は実肌の大敵

写真拡大

【美と若さの新常識】(NHKBSプレミアム)2017年7月6日放送
お酒は『老ける毒』 若さを守る対策術

古代エジプトの女王クレオパトラは美肌のためにビールを毎日飲んでいた。ただし、その時代のビールは現在のものよりずっと甘く、アルコール分も低かったが......。

若い女性の飲酒の割合は年々増え、男性に匹敵するほどだ。お酒をたしなむとはいいが、女性にとってアルコールは「老ける毒」ということがわかってきた。肌の細胞へのダメージや乳がんの急増、理性をつかさどる脳の萎縮......。最新の研究からお酒との付き合い方を探る。

「酒は百薬の長」はマボロシ?

酒がおいしい季節になってきた。仕事終わりに1杯! 気分もよくなりココロも弾む。しかも「酒は百薬の長」というではないか。MCのお笑い芸人・後藤輝基が、国立がん研究センターが行なった「飲酒量と死亡リスク」の調査結果のグラフを紹介した。「非飲酒者」の死亡リスク(全病気・事故の死亡率)を「1」とした場合は、1日に1合飲む人の死亡リスクが一番低く、「0.8倍」になる。しかし、飲む量が増えるにつれ死亡リスクが上昇、3合以上だと「1.4倍」に高まる。つまり、日本酒だと1日1合までが「適量」で「百薬の長」といえるが、それ以上だと「毒」になるわけだ。

MCの後藤「1日1合といえば、『乾杯!』の掛け声でゴクンと飲んだらもう終わりですね」

国が勧める「適量」は「純アルコールなら約20グラム」となる。酒の種類別に見ると、ビール中ジョッキ1杯、日本酒1合、焼酎0.6合、ウイスキーダブル1杯、ワイングラス2杯だ。酒飲みにとっては悲しい量だ。では、「適量」を超えるとカラダにどんな悪影響を与えるのだろうか。長年アルコールとカラダの関係を研究している慶應義塾大学の加藤眞三教授はこう説明する。

加藤教授「適量の範囲内であれば、飲んで、むしろいい効果があります。例えば動脈硬化が起きにくいとか、善玉コレステロールの数値が上がるとか、むしろ寿命を長くします。しかし、それ以上飲むと有害な成分が出てくるのです。アルコールは肝臓で分解され、アセトアルデヒドという非常に毒性の強い成分に変わります。恐ろしいのは発がん性が高いこと。食道がんと口腔咽頭がんの発症率が、酒を飲まない人に比べると7倍以上高いです。ほかに乳がん、胃がんにも影響します。さらに飲酒自体も肝臓がんや大腸がんを引き起こすといわれています」

肌のコゲとサビがコラーゲンを死滅させる

美肌にも怖〜い影響を与えるのだ。番組では、岐阜大学の犬房春彦特任教授がマウスに行なった、アルコールが老化にどう関わっているのかを調べた実験を紹介した。実験では、1匹のマウスには普通のエサを、もう1匹のマウスには毎日アルコールを与え続けた。その量は、人間に換算すると毎日ワイン1本分くらいだ。2週間後、マウスの血液を採取し分析すると、アルコールを飲んでいたマウスは「過酸化水素」という物質の量が増えていた。聞き慣れない言葉だが、いったい何か? アセトアルデヒドが肝臓の細胞に作用し、活性酸素というさらに有害な物質を生み出す。その活性酸素が、ある酵素と反応してできるのが過酸化水素で、血液を通じて全身へ運ばれる。

過酸化水素がいかに怖いか、犬房教授が人間の細胞を培養したケースに過酸化水素を加えてみせた。すると、細胞が次々と溶けていき、最終的に全部消えてしまった。死滅したのだ。これこそがアルコールの弊害の1つ目のキーワードである「カラダが酸化し『サビる』ということ」だ。

犬房教授「サビと言えば、古い鉄がボロボロになるイメージですが、人間のカラダもサビた状態になると、細胞がダメージを受け死んでしまいます。皮膚でいうと、健康な肌の下にコラーゲン繊維が網のように貼り巡らされ、下から支えています。しかし、過酸化水素が肌に増えると、コラーゲン繊維を攻撃して死滅させますから皮膚が陥没。その部分にシワを生まれるのです」
MCの後藤「もう1つ、アセトアルデヒドがもたらす老化があります。そのキーワードが『コゲ』です。実際にコゲた食パンを指で押してみると、弾力を失っていますネ。それと同じことがお肌でも起こるのです」

肌にとっての「コゲ」とは「AGE」(終末糖化産物)という老化物質のことだ。アセトアルデヒドは、それ自体毒性を持つだけでなく、細胞のタンパク質と結合して、「AGE」という老化を促進する物質に変わる。最近では、人間の老化のほとんどに「AGE」が関わっていることがわかっている。しかも、「AGE」は酒を飲む量が多い人ほど多く生まれる。このAGEはなぜ肌の弾力を失わせるのか。

肌の下には、コラーゲン繊維がベッドのスプリングのように肌を下支えして、弾力を与えている。しかし、体内のAGE量が増えるとコラーゲン繊維にべっとりと絡み付き、弾力を奪っていく。表面からはわからないが、酒を飲むと、「過酸化水素によるサビ」と「AGEによるコゲ」の2つが、肌の老化を進めているのだ。番組では、実際に「お酒大好き」を自認するゲストの女優・遠野なぎこ(37歳)と、セクシーお笑い芸人・カオルコ(34)の「肌の老化年齢」を、金沢医科大学の堤幹宏教授が開発した装置で測定した。肌のAGE量が光を当てると分かるのだ。すると、遠野なぎこ=「84歳」、カオルコ=「68歳」という実年齢の2倍以上という衝撃的な結果が出た。

遠野なぎこ「(ムカっとした表情で)本当ですか、コレ! 知ってよかったです!」

お酒が強い人ほど老化が進む

ゲストのフリーアナ・高橋真麻「でも、お酒が強い人っているじゃないですか? ああいう人はアセトアルデヒドもどんどん分解できるから、お肌も健康なのではないですか?」

「いやいや」と首を振りながら、堤教授がこう説明した。

堤教授「実はお酒に強くなることは、かえって健康によくないのです。酒に強くなると、『CPY2E1』(シーピー・ツー)という酵素が増えます。この『シーピー・ツー』がアセトアルデヒドを分解するのはいいですが、その代わり活性酸素をどんどん増やしてしまいます。活性酸素が増えると、細胞をどんどん死滅させますから、老化が進みます」

最後に堤教授が、遠野なぎことカオルコにこうアドバイスをした。

堤教授「ラットの実験では、AGEは4週間ほど禁酒すると、肝臓から消えていきます。だから禁酒をすれば、お肌の年齢も若返りますよ。あきらめないでくださいね。毎日の酒の量は少し減らす、そして休肝日を設けることから始めましょう。ダイエットを始める時に毎日体重計に乗るのと同じように、毎日意識して、日記に飲んだ量を書いていくと、だんだん減らすことができます」