安倍政権から「暴言バカ」が出続ける理由

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安倍政権から「暴言議員」の出現がとまらない。「魔の2回生」だけが問題なのか。元「週刊現代」編集長の元木昌彦氏は、「今のように質の悪い暴言・放言が増えたのは2001年の小泉純一郎内閣からだと思う」という。現在の安倍政権はその”伝統”を継いでいる。これでいいのか――。

■バカは隣の火事より怖い

バカは隣の火事より怖い。立川談志の名言である。

ウソがつけなくては政治家になれないが、最近の政治家はウソつきの上にバカが付くから始末が悪い。中でも「魔の2回生」といわれる安倍第2次政権下の2012年に初当選して、現在当選2回の若手政治家の質の悪さは、政治家と書いて「バカか」とルビを振りたくなるほどである。

不倫した上、ストーカー登録までされた中川俊直。妻が妊娠中に不倫をした宮崎謙介。がん患者は働かなくていいといった大西英男。被災現場の水たまりをおんぶされて渡った務台俊介。マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいいといった大西英男など枚挙にいとまがない。

そして極め付きは日本中を沸かせた豊田真由子センセイである。最初に報じたのは『週刊新潮』(6月29日号)。車中で55歳の政策秘書へ浴びせた罵詈雑言が録音されていて、新潮が音声データを公開したことから、テレビやネットを通じて全国に流れたのである。

「この、ハゲーーーーっ!」「おー! おまえはどれだけあたしの心を叩いてる!」「お前が受けてる痛みがなんだ! あたしが受けてる痛みがどれぐらいあるか、お前分かるかこの野郎!!」「このキチガイが!!!」

■流行語大賞は「ピンクモンスター」で決まり

果ては「お前の娘がさ、通り魔に強姦されてさ、死んだと。いや犯すつもりはなかったんです。合意の上です。殺すつもりはなかったんですと。腹立たない?」

絶叫調ありミュージカル調ありで、豊田センセイは秘書の頭をボコボコにしたのである。激した理由は、支持者に送ったバースデーカード何十枚かの宛先が間違っていたことだというから、これまた驚く。

このセンセイ、名門高校から東大法学部、ハーバード大学大学院へ留学までして、厚労省のキャリアから衆院議員に転身したピッカピカの経歴の持ち主である。以前から、ここは秘書が居着かず、当選して以来100人以上が逃げ出していると評判だった。

週刊誌が彼女につけた愛称は「ピンクモンスター」。今年の流行語大賞はこれで決定という声もある。

戦後、さまざまな暴言があった。吉田茂の「バカヤロー解散」。池田勇人の「貧乏人は麦を食え」。岸信介は安保反対のデモが国会を取り巻いても「それでも後楽園球場は満員である」。いい悪いは別にして、これらは政治家個々の信念から出た言葉である。だが、今の連中が連発する暴言・放言はそうではない。

■「日曜日は女房のためにとってある」

女性問題も、妾を持つのは男の甲斐性といわれていた時代だったが、それを差し引いても、現代の政治家とは腹の坐り方が違っていた。

自民党の生みの親といわれる三木武吉は、婦人団体から「先生にはかねて4人のお妾さんがいるとお聞きしますが、先生の清廉な政治活動、只今のお話とは矛盾があるのでは」と質された。

会場は一瞬、水を打ったように静かになったが、三木は言った。「ただいまの質問は、数字的な誤りがございます。実は、4人でなく5人おるのであります。ただし、5人の女性たちは、今日ではいずれも老来廃馬と相成り、役には立ちませぬ。が、これを捨て去るごとき不人情は、三木武吉にはできませんから、みな今日も養っております」

春日一幸民社党委員長も、選挙区で演説中、聴衆から妾の数でヤジが飛んだ。春日、すかさず応じて「むかし三木武吉さんが5人と答えたが、私は6人だ。日曜日は女房のためにとってある」と答えた。

女房に隠れてこそこそ浮気をして、明るみに出ると平身低頭して妻に、有権者にひたすらおわびをするゲス政治家とは、男としての格が違うのである。

■「人生いろいろ、会社もいろいろ」

私は、今のように質の悪い暴言・放言が増えたのは2001年の小泉純一郎内閣からだと思う。

あからさまな対米追随外交と新自由主義の導入で、非正規雇用を増大させ格差を拡大させたことはいうまでもないが、この男の下劣な暴言は聞くに堪えなかった。

「この程度の公約を守らないことはたいしたことではない」
「人生いろいろ、会社もいろいろ……」
「自衛隊が行っているところが非戦闘地域」

『戦後政治家暴言録』を著した保阪正康は、小泉発言の数々を戦後最大の失言と書いている。

2003年に始まったイラク戦争で小泉は、「米国による武力行使の開始を理解し、支持する」といち早く表明した。だが開戦の根拠となった大量破壊兵器は見つからず、小泉の判断の正当性が問われたが、小泉は答えられずに逃げ続けた。

こんな男が、今になって原発反対を訴えても、国民の多くの支持を得られるわけはない。

私は、小泉暴言が国内向けの最悪のものだとするならば、国際的な暴言を吐き、救えるはずだったかもしれない2人の日本人の命を失わせた安倍晋三首相のことを忘れてはいけないと考える。

2015年、ジャーナリストの後藤健二と湯川遥菜がイスラム国に拉致され、無残に殺される事件が起きた。前年の12月初めには、後藤の妻宛てにイスラム国から身代金を出せというメールが届き、外務省は遅くとも12月中にはこの事実をつかんでいた。

■「安倍首相よ、日本の悪夢が始まる」

当然、このことは官邸にも伝えられた。なぜなら官僚は自らがリスクを負うことを嫌い、リアルタイムで大臣に情報を伝えるのが習性だからである。だが、政府側は知らなかったという世論操作を行い、1月に安倍首相は予定通り中東歴訪の旅に出た。

そしてエジプトで「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」というイスラム国を挑発するような問題演説を行ったのである。

これは元経産官僚だった古賀茂明が『日本中枢の狂暴』で指摘しているように、後藤ら2人の身に危険が迫っていることを十分に知っていたのに、「まるで、日本が、イスラム国との戦いのために軍事支援を行うと誤解するような表現」をしたのである。

このメッセージにイスラム国はすぐ反応して、以下のようなメッセージを公開した。

「安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によって、このナイフは後藤健二を殺すだけでなく今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」

■「日本外交史に残る大失態」

なぜ、エジプトをはじめ、ヨルダン、イスラエルなどアメリカの盟友国ばかりを回ったのだろうか。古賀は「日本外交史に残る大失態」だと難じている。

外務官僚からすれば、こうした演説は無用な誤解を生む表現だから完全にNGであるはずだが、官邸が闇雲に突っ走ったのだ。しかも「本来軍事支援でないのに、あたかも軍事支援が含まれているかのように見せかけた……逆な意味でも、詐欺的な発言である」(古賀)。

このメッセージはイスラム国に悪用され、後藤、湯川が殺されただけでなく、日本はアメリカと組んで中東まで出てきて戦争に参加したと宣伝され、外国にいる日本人同胞たちの安全をも危険にさらしたのである。

その後も安倍は、2人を救出するための現地本部をトルコではなく、アメリカが日本政府の動きを見張ることのできるシリアのアンマンに置いた。そのことも、人命よりもアメリカにどう見てもらえるかしか考えない「安倍の狂った願望を実現するために組み立てられた謀略だといってよい」(同)。

■政治哲学は「国民はバカである」

古賀によれば、安倍の政治哲学は「国民はバカである」というもの。怒っていても時間が経てば忘れる。他のテーマを与えれば気がそれる。ウソでも繰り返し断定口調で叫べば信じる。

今回も、森友学園や加計学園問題から国民の目をそらそうとして、突然、憲法改正を打ち上げたのではないか。そう考えると辻褄が合う。

だいぶ前になるが、阪神にいた江本孟紀投手(現在は野球評論家)が「ベンチがアホやから野球でけへん」という発言をして大問題になったことがあった。

今の自民党の若手議員たちは、安倍首相が憲法を蔑ろにして安保法制法を強引に成立させ、トランプ米大統領に猫なで声ですり寄って行く姿を見ているから、政治なんてこんなもの、議員でいる間にいいたいことをいい、カネ儲けしようという輩ばかりになってしまうのだ。

これが安倍一強といわれている自民党の真の姿である。したがって暴言議員はまだまだ出てくること間違いない。

(ジャーナリスト 元木 昌彦)