薬剤師が薬を使わなくなったわけ

はじめまして。薬を使わない薬剤師、宇多川久美子です。はじめに簡単に自己紹介させてください。私は薬科大を出てから20年ほど薬剤師として働いてきました。薬は病気を治すもの、健康になるために飲むものと信じていました。私自身、学生のころからひどい頭痛や肩こりに悩まされ、薬を手放せなかったのです。

しかし薬剤師として薬局に立ちながら、少しずつ薬への疑念が膨らんできたのです。特にメタボ健診が始まると、メタボの方がドーッと増えて、降圧剤をもらいに来ます。毎回同じお薬を「きちんと飲みましょうね。血圧のお薬とは一生のおつきあいですからね」などと言いながら手渡します。実際、一生のおつきあいをする方も多い。なにかおかしい……と気づきました。一生飲みつづけるということは、薬を飲んでも病気は治らないということです。薬は症状を抑える対症療法にすぎないのだと気がつきました。

私自身は薬剤師になってからも頭痛、肩こりが解消せず、薬を飲みつづけていました。薬は対症療法とわかってからも、自分のことになると客観的になれず飲みつづけていたのです。薬のプロとして正しく、賢く服用していたにもかかわらず、頭痛、肩こりは治りませんでした。治ったのは、ウォーキングを始め、薬をやめたことがきっかけです。「薬は病気を治さない」というのは私自身が身を以て体験したことです。

Suits-woman読者のみなさんは、仕事やプライベートでストレスが重なり、体調の悩みもいろいろ出てくるお年頃かと思います。そこで便利なのが薬です。今はドラッグストアに「便利な」薬が市販されています。以前は病院で処方されなければ飲めなかった薬が、ドラッグストアで簡単に入手できるようになりました。そんな時代だからこそ、薬の正しい使い方を知っていただきたいと思います。

頭痛の原因は鎮痛剤!?

はじめに、頭痛・生理痛によく効く「痛み止め」の話をしましょう。

頭痛、生理痛はつらい。特に頭痛は、ストレスや睡眠不足、疲れなど、原因はいろいろ考えられるけれども、本当のところはよくわかりませんよね。病院に行っても「原因不明」と言われてしまう人も多いと思います。それで仕方なく市販の痛み止めを“お守り”のように持ち歩いている……という人も多いでしょう。

「よく効く、すぐ効く」痛み止めは、ステロイドを使わない非ステロイド抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)といって、NSAIDs(エヌセイズ)ともいいます。ドラッグストアで買える「ロキソニン」や「イブ」が代表的なNSAIDsです。

よく効く、すぐ効く薬。作用が強いということは、副作用もまた強いことを意味します。思えば、薬は化学合成品です。野菜や果物と違って、人工的な化合物です。身体にとっては異物そのもの。異物を入れれば、必ず身体は何かしら反応します。それが自然です。作用があれば副作用もあるのは当然ともいえます。

頭痛や生理痛などの痛みを発生させるのは、プロスタグランジンという物質です。これはふだんから体内に分泌され、ホルモンのように働く物質ですが、出過ぎると痛みが生じます。鎮痛剤は、このプロスタグランジンの分泌を抑えます。だから痛みも引く。しかしプロスタグランジンには、血流をよくするという働きもあります。そのため鎮痛剤を飲むと血流が悪くなってしまうのです。

頭痛の原因はいろいろ考えられますが、その大きな要因は血行不良です。鎮痛剤を飲むことで、いっときラクにはなりますが、血流も悪くなり、原因をますます悪化させてしまうという悩ましい状態におちいります。

血行不良➡頭痛➡鎮痛剤を飲む➡血行不良が悪化➡頭痛 

この悪循環に気づかずにいると、薬の量がどんどん増えていきます。初めのころは1錠で効いたのが2錠、3錠になります。初めは痛い時だけ飲んでいたのが、「これから大切な会議があるから先に飲んでおこう」「今日は体調があまりよくないから今のうちに飲んでおこう」と予防用に飲むようになります。どんな薬にも耐性というものがあり、だんだんと効かなくなります。たくさん飲めば、悪循環も加速します。こうして薬の飲み過ぎで生じる頭痛も出て来ます。「薬物濫用頭痛」といいます。頭痛の原因は薬なんて、本末転倒ですが、本当です。私自身、鎮痛剤を飲むのをやめてから頭痛が止まりました。

鎮痛剤で胃が荒れる理由は?

鎮痛剤の市販薬には、アスピリン(商品名「バファリン」など)、ロキソプロフェン(商品名「ロキソニン」など)、ジクロフェナク(商品名「ボルタレン」)、イブプロフェン(商品名「イブ」など)、アセトアミノフェン(商品名「タイレノール」など)などがよく知られています。

たとえば、よく効く、早く効くと評判の「ロキソニン」。みなさんは、その箱に入っている注意書きを読んだことがありますか?副作用としてこんな症状が書かれています。

皮膚の赤み、かゆみ、腹痛、胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹部膨満、胸やけ、口内炎、消化不良、血圧上昇、動悸、眠気、しびれ、めまい、頭痛、腹痛、懈怠感、顔面のほてり、発熱、貧血、血尿。

ご存知でしたか?実はまだあります。ごくまれではありますが、重篤な症状として、ショック(アナフィラキシー)、血液障害、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)……、おそろしげな名前がつづきますが、このへんにしておきましょう。これらの中には命に関わるものもあります。

「ロキソニン」に限らず、NSAIDsの薬には上のような症状が副作用欄にズラッと並んでいます。ぜひ一度、薬のトリセツ(注意書き)をご覧になってください。薬を見る目が少し変わると思います。ちなみに、ロキソプロフェンの副作用には昨年、腸閉塞(腸がつまって便が出なくなる)も加わりました。

鎮痛剤の副作用としてよく知られているのは胃が荒れることです。しかし、胃が荒れるのは鎮痛剤の成分のせいではありません。さきほど説明した痛みの原因物質プロスタグランジンは、胃粘膜を生成する成分でもあります。その分泌を抑えてしまうので、胃が荒れるのです。

子どもにも飲ませられるのはアセトアミノフェンだけ

さて、こんな話をすると何を飲んだらいいの!? と思われるでしょう。今ここにある痛み、七転八倒するしかないの!? いえいえ。本当に痛いときは飲んだほうがいいと思います。

あくまで痛い時に頓服(とんぷく)的に1錠飲むことは仕方のないことですが、安易に薬に頼らずに、なぜ症状が出るのかをしっかりと見つめ直し、身体を冷やさない、無理をしない、しっかり睡眠をとるなどの対処もしていきましょう。

鎮痛剤の中で効き目が穏やかで、上述の副作用が少ないないとされるのがアセトアミノフェンという成分です。現に、子どもに飲ませられる鎮痛剤はアセトアミノフェンだけです。

ただ、薬にも「相性」というものがあります。一般的にはアセトアミノフェンがもっとも効き目が穏やかで副作用も出にくいと言われていますが、人によっては「ロキソニン」は平気だけど、アセトアミノフェンの薬を飲むと調子が悪い、副作用が強く出るということもあります。人の身体はひとりひとり違います。食べているものも違えば、免疫の種類も力も違います。自分に合った成分を知っておくことは大切です。また最近の市販薬には、アセトアミノフェンとイブプロフェンなど複数の成分が配合された薬も多いので、買う前によく外箱の成分表を見てくださいね。

耐えられないほどの痛みがあるときに、薬を飲んではいけないということはありません。むしろ、本当に我慢できないときのために、薬はなるべく飲まないほうがいいのです。薬に耐性をつけないほうがいいのです。鎮痛剤を飲み続けることは、頭痛と一生のおつきあいになることと同じです。

薬は一時しのぎ。対症療法です。本当の治療法は自分自身の身体のなかにあります。このシリーズで少しずつお話していきたいと思います。

薬に頼らなくても健康になれる!その方法をいっしょに考えていきましょう。



■賢人のまとめ
つらい頭痛、生理痛にはつい鎮痛剤に頼りたくなりますね。でも、飲むのは本当に痛いときだけにしましょう。薬を飲むことで、頭痛の原因である血行不良をさらに悪くしてしまい、頭痛と鎮痛剤の悪循環を生み出すおそれがあるからです。薬はあくまで一時しのぎの対症療法であることを忘れないでください。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)など。