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国税庁長官に7月5日付で、財務省の佐川宣寿・理財局長が就任した。佐川氏は、森友学園への国有地売却問題の担当局長として、「不当な働きかけはなく、記録も残っていない」などと答弁し、情報公開に消極的な姿勢を見せてきた。

朝日新聞は「税の徴収を担う国税庁のトップとして納税者の理解を得られるかが問われる」と指摘している。

報道によると、佐川氏は、森友学園側とのやりとりを記録した文書について、「売買契約締結をもって事案は終了しているので、記録が残っていない」「速やかに事業終了で廃棄していると思う」と述べた。財務省は面会記録について、規則で保存期限が明記されていないので、1年未満だとしている。

ネットでは、佐川氏の国税庁長官就任について、「脱税犯が『記録が残ってないんですよ〜』って言ったら全部通っちゃうんじゃないの?」「修正申告を突っ撥ねることができるぞ」などの皮肉の声が起きている。

森友学園問題は行政をめぐる話だが、一般的な税務署による税務調査の話として、取引先や顧客などとのやりとりについて、文書の提出を求められたにも関わらず、「廃棄したのでありません」と貫いた場合、何か問題になることはないのか。松本佳之税理士に聞いた。

●おそるべき「推計による課税」

「税務調査があると、納税者側には受忍義務がありますので、税務署からの質問には回答し、資料の提示を求められたらそのとおり提示するなどの対応をしなければなりません。そのようなときに『資料は廃棄したのでありません』と貫いても、決してよいことはありませんよ」

文書の保存義務についてはどうなっているのか。

「税法では、保存すべき帳簿・書類と保存期間が定められています。面会記録までは保存しなくてもよいですが、契約書、請求書や領収書などといった取引先や顧客などとのお金のやりとりに関わる文書は当然、一定期間(原則として7年間)保存しておかなければなりません。

もし、保存すべきと定められた帳簿や書類が残されておらず、開示できなかった場合には、青色申告の承認が取消される可能性もでてきます。そうなると青色申告の特典を受けることができません。そして、青色申告の承認が取り消されて一番怖いのは、税務署が『推計による課税』を行うことができる、ということです」

「推計による課税」とはどういったものか。

「帳簿に基づかず、会社の規模や業界の情報など他の参考となる情報をもとにして税務署が所得を推計し、推計した所得に基づいて課税する、というものです。簡単に言うと、『これくらい所得がありそうだから、これだけの税金を払ってください』、ということです。

実際に納税しないといけない額よりも多くなりそうであれば、税務署が行った推計に反証しなければならないのですが、そもそも書類を廃棄してしまっていれば、反証も難しくなります。そうなると、税務署の行った推計に従って、多めに課税されることとなってしまいます。また、税務調査を受けて、追加の税額が出たときには加算税などのペナルティも課されることとなります。

このように、税法は、『資料を廃棄しました』では通らないようにできていますので、みなさんは注意してくださいね」

【取材協力税理士】

松本佳之税理士

税理士・公認会計士。みんなの会計事務所(大阪市)代表。「税理士のノウハウを会社成長の力に」をモットーに、大阪で起業支援、中小・ベンチャー企業の支援や税務の他、個人確定申告、相続・相続対策等の税務業務を手掛ける。

事務所名 :みんなの会計事務所

事務所URL:http://www.office-kitahama.jp/

(弁護士ドットコムニュース)