「ヴェッラッティがバルセロナに行くべきでない7つの理由」

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今年の夏もマルコ・ヴェッラッティの周辺が騒がしい。

母国イタリアのセリエAで覇権を握るユベントスが獲得に乗り出すという噂もあれば、恩師カルロ・アンチェロッティの待つバイエルン・ミュンヘンへ移籍かと言われたり、はたまたチェルシーが狙っていると報道されたり。

数多くのメガクラブの中でも特に"小さなフクロウ"(ヴェッラッティの愛称)の獲得に熱心なのがバルセロナだ。

彼らは2014-15シーズンUEFAチャンピオンズ・リーグ制覇の功労者であるイバン・ラキティッチを放出してでも欲しいと噂され、最大で1億1000万ユーロ(およそ144億円)の移籍金をPSGに提示するとも言われている。

しかし、単刀直入に言おう。バルセロナにヴェッラッティは必要ではない。それには7つの理由がある。

1. イエローカードの多さ

1つ目のネックはイエローカードの多さだ。

ヴェッラッティはおよそ3、4試合に1回イエローカードを提示されている(クラブレベルで261試合72枚)。中盤インサイドハーフの選手としてはかなり多く、出場停止になれば稼働率も必然的に低下する。

2. 怪我が多い

2つ目、稼働率を下げる要因としてもう一つ挙げられるのは怪我の多さだ。

ヴェッラッティは昨シーズンの後半戦を恥骨炎で棒に振っていて、ここ2シーズンのリーグ戦稼働率はわずか約47%。今季に限定しても約63%にしか達せず、前半戦はリハビリ状態で低調な出来に終始していたことを考えると実質的な稼働率はさらに低いとも考えられる(なぜ完調でない選手を使い続けたかはわからないが)。

恥骨炎は繰り返しやすい怪我でもあり、離脱リスクは依然として高いままだ。

3. バルサの中盤は人員過多

3つ目の懸念は、バルセロナの中盤自体が人員過多なこと。

現在、バルセロナのMFは5人。来シーズンからはセルジ・ロベルトの中盤復帰も計画されている。もしここにヴェッラッティを加えれば、合わせて7人となる。売却の可能性があり、ウイングでの起用が多いアルダ・トゥランとラフィーニャが対応可能と考えるとのべ9人が中盤にひしめき合う状態になり、明らかな人員過多である。

余剰人員を売却しても収入は知れているし、うまく売却できなければ不満分子を生みかねない。さらに仮に1年目を終えたばかりのアンドレ・ゴメス、まだ経験の浅いデニス・スアレスを売却し、彼らが移籍先で開花した上でヴェッラッティが失敗したら…。今季以上の悪夢であり、バルセロナ自慢の育成ブランドの崩壊を意味する。

つまり、ヴェッラッティ失敗のリスクは意外に高いのだ。そもそもセルジ・ロベルトを中盤に戻すなら、右SBを補強しなければならなくなるし(ヴェッラッティに大金をかける余裕はない)、さらに言えばゴメスやD・スアレスはまだ伸びしろが十分に残されている。せっかく才能のある選手を持っているのだから、高いカネをかけて彼らを潰すようなマネはしない方が良いのではないだろうか。

4. スタイルとの親和性の低さ

4つ目はバルサスタイルとの親和性の低さ。

シャビの退団以降不在の本格派司令塔としてヴェッラッティに期待する声は多い。しかし、ヴェッラッティの最大の武器はロングパスで、シャビというよりはピルロに近い選手だ。しかも彼の数少ない悪癖はバルセロニスタが最も忌み嫌う「ボールの持ち過ぎ」。もしヴェッラッティが“ティキ・タカ”の復活を導くと考えているなら、大きな思い違いだと認識すべきだ。

5. 大した強化にならない

5つ目は、はっきり言って大した強化にならないのではないかということだ。

ヴェッラッティが加入すれば、セルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタ、ヴェッラッティの3人で中盤を構成すると考えられている。しかし、"MSN"を解体しない前提に立てば、走れて技術力もあるラキティッチの起用は必須になってくるのではないだろうか。

今季はインサイドハーフにアンドレ・ゴメスを起用していたが、機動力が低くチーム低迷の要因になっていた(そもそもゴメスは体格的にもアンカーだろう)。エルネスト・バルベルデ新監督の意向はまだ見えてこないが、MSNを解体しないなら、ヴェッラッティはイニエスタとポジション争いをすることになるというのが自然な見方だろう。

さすがにイニエスタとヴェッラッティを入れ替えたところでお釣りがくるとは思えないし、万が一イニエスタとヴェッラッティを同時起用しても今季のように守備のマイナスが露呈されるだけ。選手層を無駄に厚くするだけで終わる公算が高く、掛かる費用を考えればコストパフォーマンスの悪い補強になりかねない。

6. 高額な移籍金

ヴェッラッティの推定市場価格は『Transfermarkt』によると4500万ユーロ(およそ59億円)。

しかし、基本的には推定市場価格より高値で取引されるし、ヴェッラッティを保有しているのは金満クラブのPSG。更に契約が4年も残っているという事情を考慮すると移籍金は最低でも7000万ユーロ(およそ91億円)、場合によっては1億ユーロ(およそ130億円)以上が見込まれる。

しかし、ここまで出してしまうと、ヴェッラッティの獲得だけでバルセロナの夏は幕を閉じるだろう。"MSN"の控えや右サイドバックの補強も必要な状態でやるべき補強ではないはずだ。

7. 移籍金を支払う価値はない

最後の理由は、そもそも100億円前後もの移籍金を支払う価値はないということ。

ヴェッラッティが独力で局面を解決できる選手ならば、前述のようなその年の予算をほぼ全て彼に費やす補強というのは確かにアリだ。しかし、ヴェッラッティの高評価はアンカーにチアゴ・モッタ、隣にブレーズ・マテュイディというそれぞれそのポジションで世界五指に入るレベルの選手とユニットを組んで得たもの。

もちろん、ヴェッラッティ自身も優秀だし、バルセロナにも強力な選手はいる。その中でヴェッラッティが機能する確率はないとは言わない(前述の通りその確率は高くないと踏んでいるが)。しかし、独力で試合を解決するわけではなく、あくまで周りを活かすことに特徴がある選手に100億円もの移籍金を提示するのはさすがに常軌を逸しているのではないだろうか。

あくまで与えられた役割を最大限にこなせる選手であって、様々なタスクをハイレベルにこなすというような例えばレアル・マドリーのルカ・モドリッチのような凄味はまだない。PSGのように完璧に役割と能力が一致するのは幸運と言える。だからこそ、その幸運を捨ててバルセロナに行くメリットは全くとは言わないまでもあまり感じられはしないのだ。

不明瞭な本人の意思、周囲のオトナたちの“裏事情”

そもそも、本人は本当に移籍を望んでいるのだろうか。

バルセロナ行きを希望し、パリからの“脱出”を図っていると報じているのはレキップ紙。そのヴェッラッティとマテュイディがバルセロナ戦の2ndレグ前にナイトクラブで遊んでいたと書き立て、PSGと選手本人を怒らせたメディアである。

その影響で現在レキップ紙とPSGは険悪な関係となっていることを考えれば、レキップ紙がPSGに喧嘩を売ろうとしてヴェッラッティに移籍願望があると報じたのではないだろうかと推測される。

また、たびたび移籍を示唆するヴェッラッティの代理人ドナート・ディ・カンプリも曲者だ。ヴェッラッティの移籍を画策しているのは、高額の手数料目当てだろう。他の選手でやればいいじゃないかと言われるかもしれないが、彼の顧客で有力な選手はヴェッラッティのみ。

要するに、彼にとっての主な収入源はヴェッラッティだけなのだ。もちろん、有名顧客がヴェッラッティだけのパワーレスな代理人に移籍させるだけの力はなく、何回も契約延長でお茶を濁しているわけだが。

これだけうまくいかない理由に溢れていて、本人の移籍意思も不明瞭な以上、移籍が幸福な結果を招くとは思えない。

PSG側も現在は断固拒否の姿勢を示しているが、額によっては放出に傾くだろう。伸び悩んでいるという声もあるが、そもそも司令塔というのは経験値の高さが重視されるポジション。伸び悩んでいたとて環境のせいというよりは、前述のような怪我による部分が大きいだろう。24歳の彼がごく普通にコンダクターをこなしているだけでも凄いことであり、今の環境の良さを考えても環境を変えるべきとは言い難い。

チャンピオンズリーグでそのバルセロナ相手に大逆転敗退を喫し、周辺が騒がしくなるのは仕方のないことだろう。しかし、ここがPSGとヴェッラッティの「耐え時」なのではないだろうか。

あの忌まわしき大逆転敗退の際、誰より、熱い涙を流していた彼が当のバルセロナに移籍する。そんな滑稽な話があるだろうか。世代屈指の司令塔がすべき移籍ではないように感じるのは私だけではないはずだ。