重厚なKENKOのエントランス 写真提供:四谷メディカルキューブ

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 医療界には、普通の人々が容易にはアクセスできない「特別な世界」が存在する。その医療サービスとはどんなものなのだろうか。

 エレベーターで上層階まで上がったフロアは、階下までの一般の診察フロアとは明らかに雰囲気が違った。快適な温度と湿度が保たれたラウンジには、ジョアン・ミロの本物の絵画が並ぶ。診察室には、医師よりも患者側のほうに重厚感がある革張りの椅子が置かれている。予約制のため診察の待ち時間もなくストレスフリー。医療機器を除けばその様子は高級ホテルのフロアを彷彿とさせる。

 ここを訪れることができるのは、入会金200万円と年会費50万円を支払った会員のみ──。

 これは警備サービス大手のセコムが展開する「セコム健康くらぶKENKO」(東京・新宿区)。セコムが医療法人社団あんしん会と提携して設立した高級会員制健康管理クラブだ。これほど高額にもかかわらず、2005年5月の開設以来、順調に会員数を伸ばし、現在約800名が入会しているという。200万円超を払って受ける人間ドックとはどんなものなのか。

◆「ミクニ」のフレンチ

 年に1回受ける、1泊2日の人間ドックでは近隣のホテルニューオータニに宿泊し、翌日の昼食は、フロアに併設されたフレンチの巨匠・三國清三氏プロデュースのレストラン「ミクニマンスール」でフレンチを堪能できる。

 KENKOの検査では、都内では最初に導入したというPET/CT(小さながんも発見できるPETと断層撮影するCT装置を併用した最新の検査機器)をはじめとして、頭部MRI検査、心電図検査、甲状腺超音波検査、血液検査、内視鏡検査、女性の場合はマンモグラフィ、乳腺超音波検査などが加わる。

 合計31項目以上の検査ができ、詳細な報告書が作成されると、主治医によって30分以上かけて丁寧に説明してくれるという。

 その検査結果の報告書には8人以上の専門領域の医師が所見を書き、主治医が総合的に判断して今後の生活指導をしたり、治療方針を相談したりすることができる。主治医制とチーム医療を融合した医療体制を確立しているというわけだ。

 しかし手厚い健康管理サービスとはいえ、これほど高額な入会金・年会費はおいそれと出せるものではない。KENKOの広報担当者によれば、会員の傾向は、

「セコムのホームセキュリティサービスを利用している人を中心に、大企業の社員、会社経営者の方も多いですね。ある中小企業の社長さんは『自分が倒れたら会社も倒産してしまうから、健康にはお金をかけるんだ』と仰ってました」

 という。居住地も北海道から九州まで様々だ。実際の利用者からは、「丁寧に対応してもらえるから気楽だし、安心」「待たされることなく名医の診断を受けることができるので優遇されていることを実感できて気分がいい」といった声が聞こえてくる。

 丁寧な対応はもちろん、安心という声が多かったのは、会社の健康診断や人間ドックだけでは健康管理に不安を感じる人が増えたことにある。ではそのニーズに応えようとする病院経営側にはどのような事情があるのか。

 医療ジャーナリストの田辺功氏はこう解説する。

「昨今、公的保険制度の診療報酬に縛られて病院の経営が難しくなっています。今後、診療報酬が上がっていくことは考えにくいことから、病院側は治療プラスαのニーズを開発していく必要があります。そこで健康相談、人間ドックなどの自費診療をいかに加えていくかを考えているわけです」

※SAPIO2017年8月号