楢崎も好セーブを見せたが、徳島の長谷川はそれ以上の活躍だった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 個を束ねてチームにするか、チームを鍛えて個を際立たせるか。対照的なアプローチを見せるチームの今季2度目の対戦は、その内容と結果も実に対照的なものとなった。
 
 高度な技術と判断力を伴った個人戦術の集合体として着実に進歩を続けてきたのが、風間八宏監督率いる名古屋というチームだったが、この日は肝心要の“個”がうまく組織につながっていかなかった。
 
 前線に負傷明けの八反田康平と永井龍、そしてプロ初スタメンの高卒ルーキー深堀隼平というフレッシュな顔ぶれを並べるも、深堀は33分で杉森考起に交代し、永井は39分のPKを失敗。八反田はフル出場したが、コンディション的にはまだまだこれからというところ。
 
 開始6分でセットプレーから失点したことで、常に追う展開にしてしまったことも彼らにとっては不運だった。後半から追い上げの旗印として投入されたシモビッチも佐藤寿人も、2点を追う戦いの中ではゴール前に集中せざるを得ず、いつものパスワークで押し込むスタイルはほぼ見られなかった。
 
 それでも個の力でチャンスを生み出せるのは名古屋の強みで、試合全体を通したシュート数はほぼ同数。決定機の数はむしろ多いぐらいだったが、ポストに二度も嫌われる不運にも見舞われた。
 だが一番の不運は、古巣対戦に燃えた徳島の守護神の存在だったのではないか。
 
 名古屋ユース出身で吉田麻也の同期でもあるGK長谷川徹が見せたビッグセーブの数々は、間違いなく徳島の勝因であり、名古屋の敗因のひとつだった。
 
 実に彼がこの日防いだ名古屋の決定的なシュートは少なくとも8本。その半分も決められていれば、名古屋は勝っていた計算だ。
 
「自分のパフォーマンスなんて全然です。勝てて良かったです」と謙遜する28歳は、的確なポジショニングと鋭い反応で前半のPKストップをはじめ八面六臂の大活躍。
 
 そのハイパフォーマンスぶりには楢崎正剛も「徹にはやられましたね。そんなタイプにはあまり感じたことはなかったけど(苦笑)、今日はちゃんとというか、やられました。ただそれは頑張っている証拠だと思うし、昔一緒にやっていたこともすべて見ていますし、別に驚きではないです」と褒め称えるばかり。しかし長谷川はまずはチームワークの勝利を強調する。
「このところは自分たちがリードした状態でハーフタイムを迎えられていて、今日もそれが良かったと思うし、結果的にPKを止めたことでリードしたまま前半を終えられたというのは自分的にも良かったところです。いま、僕らに勢いはあると思いますし、チームプレーでやっているとこのチームは強い。チームワークが良い、そういうところで勝負しています。
 
 ただ今日はなかなか自分たちのリズムに持って行けなかったです。やっぱりこの雰囲気とグランパスの応援がさすがだなと思うし、なかなか若い選手は委縮するところがあったと思うんですけど、その中でもアウェーで勝点3を取れたのは大きかったです」
 
 徳島は前半の中でも選手の配置を変え、後半からはフォーメーションそのものを変え、その後も交代選手を有効に使ってゲームにメリハリをうまく付けていた。
 
 対する名古屋は1点目を取られて布陣を変え、そこに合わせて杉森考起を投入し、前述のように2点目を取られてまた動いた。つまりはすべて後手に回る展開であり、采配的、戦術的な面では完全に徳島に軍配が上がる試合でもあった。
 
 長谷川も「自分だけでは守れない。でも僕らの守備は相手の強いところも消せると思うし、自分たちはどのフォーメーションでもやれるのも強み。試合の中でもフォーメーションを変えてやっていましたが、もっと自分たちのサッカーができた試合だった」と胸を張る。それは、「このメンバーで試合に臨むのであれば、何がストロングかは自分たちで感じて出していかないと。でも、どちらかといえば受けてしまったし、それは気持ちのところなのかなとも思う。それだけは残念」と語った楢崎とは好対照だった。
 
 楢崎や最終ラインが個の踏ん張りで2失点に踏みとどまり、攻撃陣が得点を奪えなかった名古屋と、際立った組織力の中で長谷川が躍動し、コンビネーションから井筒陸也と杉本太郎がゴールを奪った徳島。
 
 その手法のどちらが正しいという答えはないが、名古屋にとっては自分たちのスタイルの在り方、戦い方に課題を突き付けられる試合だったことは間違いない。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)