東京の夜はビールから始まる。たとえば、中目黒。高架下の開発で賑やかになった中目黒だが、駅から離れた川沿いエリアは相変わらず雰囲気のいい店が点在する。気の置けない友人同士と語らうなら、そんな店のカウンターでビールを片手に過ごしたい。



鮨に瓶ビールは、いつの時代も大人への第一歩
『鮨 尚充』

友人と会話を楽しもうという夜に、緊張感が漂う鮨カウンターは敬遠されがちだ。しかし、そんな思い込みを覆してくれるのがここ。

「とにかくリラックスして欲しい」という主人の安田尚充さん。その言葉通り、大きな声で笑って、和気あいあいと鮨を味わえるのが魅力。まず、冷えた瓶ビールで乾杯すれば、目の前に鮨店らしからぬ光景が。

カウンターには器ケースのルイ・ヴィトンのトランクが置かれ、煮切り醤油はバカラのフラワーベースといった調子。トランクの上にその日揃えたウニを並べてくれたりと、プレゼンテーションも圧巻。そんな型破りでアーティスティックな空間が多くのクリエイターを惹きつけている。



鮨はお任せコース予算2万円〜。ビールは650円〜。飾り包丁が美しい小肌。シャリは赤酢をシャープにきかせたインパクトのある仕立て

親しみやすい接客とはうらはらに、安田さんの仕事には一切の妥協無し。

築地トップクラスのウニのせり人を始め、素材は築地のプロがこの店のために調達している。ひとつの修業先で15年間みっちり腕を磨いた安田さんだけに、この店ではその真価を隅々まで出し切っている。肩の力を抜いた、でもエッジの効いた中目らしい名店だ。



驚くほど柔らかく澄んだ脂がのったトロ。この日は岩手県大船渡でとれた60kg超のマグロから



小柱は通常の倍ぐらいはある大ぶりのサイズのみを使っている



『鮨 尚允』といえばウニが有名。安田さんが求める品質のウニはすべて競り落とすという勢いで常に数種類を揃えている