大陸間弾道ミサイル試射命令書に署名する金正恩氏

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北朝鮮の金正恩党委員長は4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を断行した。金正恩氏の相次ぐ挑発に対して、これまで以上に国際社会の非難の声が高まるのは必至だ。こうした中、韓国の文在寅大統領が掲げる対北朝鮮対話路線に早くも黄信号がともりつつある。

トイレでストレス

文氏は、北朝鮮との対話路線を打ち出していることから、日本では親北朝鮮派として危険視するきらいがある。ただし、文氏がどこまで融和的かについては、いましばらく見守る必要がある。

それでも、金正恩氏にとっては、北朝鮮に厳しい保守政権から進歩政権に変わっただけに状況が好転するタイミングであることは間違いない。朴槿恵元大統領の強硬姿勢に金正恩氏は苦戦を強いられたからだ。

2015年8月、非武装地帯に仕掛けた地雷が爆発したことをきっかけに、深刻な南北対立が勃発した。当時の朴政権は、韓国軍兵士の身体が吹き飛ばされた瞬間の映像を公開した。これにより、韓国世論は朴政権の強硬姿勢を後押しし、北朝鮮を事実上の謝罪に追い込んだ。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

さらに、米韓軍は北朝鮮の首脳部、すなわち金正恩氏に対する先制攻撃を意味する「斬首作戦」を導入した。「南北の緊張が激化して衝突の可能性が高まった際、北朝鮮が全面戦争を決断する前に、先制攻撃で意思決定機関を除去してしまおう」という作戦に、金正恩氏は大きなプレッシャーを受け、公開活動は激減する。

自らが暗殺されるかもしれないという恐怖心もさることながら、公開活動の移動では通常のトイレが使えないなど、多大なるストレスを抱える。こうした理由で、ただでさえ重い金正恩氏の腰はさらに重くなっていたようだ。

しかし、朴氏は「崔順実ゲート」をきっかけに大統領職を罷免され、北朝鮮との対話を公言する文在寅政権が誕生した。ただし、大統領選挙で南北問題は重要な争点とはならなかった。つまり、文氏は必ずしも対北政策が評価されて大統領になったわけではないのだ。

実際、文氏は就任当日には米トランプ大統領と電話会談を行い、「韓米同盟が韓国の外交・安保の根幹」と述べた上で、北朝鮮の挑発抑止と核問題解決に向けたトランプ氏の姿勢を高く評価した。

一方、北朝鮮は文氏が当選しようがしまいが、ミサイルを連続して発射し、今月4日は大陸間弾道ミサイル「火星14」型まで発射した。金正恩氏の頭にあるのは一日も早く米国へ届く核ミサイルを開発して、完全なる核武装国家となることであり、南北対話の優先順位は年々低くなっているようだ。

それでも、先月末に行われた米韓首脳会談で、文氏は圧力と同時に対話を呼びかけていく方針で、トランプ大統領と意見が一致した。ドイツで開かれたG20サミットでも、日米韓首脳会談を行い「まずは核・ミサイル計画の凍結があってこそ対話を始めることができる」と主張した。核・ミサイル問題で進展があればという前提条件がつくものの、対話の呼びかけは継続するという。

こうした文氏に対して、北朝鮮の非難は日増しに強くなりつつある。現時点では「南朝鮮(韓国)の執権者」や「当局者」と、名指しは避けている。しかし、核とミサイルを放棄すれば対話するというのは「欺まん行為」であると反発しながら、韓国の対話の呼びかけを一蹴した。韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相に対しては「親米分子」と厳しい論調で非難した。

北朝鮮から対話路線を否定されているにもかかわらず、文氏が今後も対話の呼びかけに固執しつづけていくなら、韓国世論からの反発も招きかねない。さらに、国際社会からも文氏の南北政策は無策という烙印をおされるだろう。そうなった時、北朝鮮は容赦なく文氏を非難するだろう。