これをしたらヤブ!変な医者の見分け方

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■「神の手」か「紙の手」か

名医の条件とは何か。内科系の医者なら、最新画像の分析力、判断力であり、外科医であれば、難しい手術を成功させる力量を持っていることだ。いざというとき、メディアで紹介されるような名医にお願いしたいと思うのは誰しも同じ。しかしすべての患者の希望が叶うわけではない。だからこそ、少なくとも金儲け主義、腕の悪い医者を見分ける力だけでもつけなくてはいけないのだ。

意識したいのが、医療も間違いなくビジネスであるということだ。最新の設備があるなどの看板をよく目にする。この点だけで病院を決めるのはとても危険だ。ちょっとした頭痛でもCT検査をするような病院は設備投資の元をとるのが最優先になってしまっている。最新設備があるからいいのではなく、それを医者が十分に使いこなせるかが問題だ。

また、有名大学を出た医者や有名大学病院に所属する医者だからといって信用するのも考えものだ。有名大学を出ていても研究、論文執筆をメーンにしている「紙の手(ペーパーハンド)」の医者もいる。逆に、出身大学にかかわらず数多くの臨床経験を持った本物の「神の手(ゴッドハンド)」も間違いなく存在する。実際に、天皇陛下の執刀医である天野篤医師は、医学部のトップブランドである東大でも慶應でもなく、日大医学部の出身だ。医療の中でも特に外科は執刀の技術と経験がものを言う世界だ。出身大学、地位、病院の序列といった「看板」に騙されてはいけない。「専門医」や「認定医」などの肩書も看板にすぎない。例えば心臓血管外科の専門医は日本に約1800人いるが、手術数をこなしているのはわずか100人程度。専門医は玉石混淆だと知っておこう地方では「信頼できるのは大学病院だけ」や「うちは前から○○病院の××先生だから」と決めつけているケースが多いが、これも危険な思考停止状態だ。

ではどうやっていい医者を見抜くのか。確認してほしいのが病院のWebサイトだ。そこには医師の執刀経験や得意としている治療などの情報が詰まっている。それらをしっかりと確認したうえで、担当の医者を探すことが、いい医者に巡り合える第一歩になる。

診断を受けて「手術を」と告げられたら、最低でも3人の専門医の意見を聞きたい。その中で一人でも「手術は必要ない」と言う医者がいれば、手術はやめたほうが賢明。患者に考える時間を与えずに「手術が必要です」と勧めてくる医者は「金儲けのための手術」に興味のある医者だと考えてよいだろう。

また患者がセカンドオピニオンのために検査データの提出を求めても快く応じない医者も信用できない。患者を逃したくないと「儲け」の観点で考えているか、治療法に自信がないかのどちらかだ。検査、診断には必ず医学的根拠がある。それらをしっかりと紙に書いて提示してくれない医者には寄り付かないようにしたい。

これらを意識したうえで、親が元気なうちに親のほうにも準備することを勧めてほしい。準備とは自分の意思を書面に記しておくことだ。いざ大病を患うと、胃ろう、人工呼吸、手術の際の全身麻酔といった措置が取られる可能性がある。これらは特に高齢の患者には大きな負担となる。

親にはこういった処置を望むのかをしっかりと書面に記してもらい、自分の望む治療を受けることのできる環境を整えてあげることが大切だ。そういった意見をしっかりと聞き入れてくれる医者や病院こそ、本当に信頼してよい「いい医者、病院」である。

(医師、ジャーナリスト 富家 孝 構成=山崎テツロウ)