高野八誠が明かす、自らヒーロー映画『HE-LOW』を監督する理由 「特撮の魅力を世界に伝えたい」

写真拡大

 『ウルトラマンガイア』『仮面ライダー龍騎』をはじめとした数多くの特撮作品に、長年に渡って出演し続けている高野八誠が、自ら“ヒーローもの”の中編特撮映画『HE-LOW』を監督として撮るため、現在、クラウドファンディングサービス『CAMPFIRE』にて、製作費を募っている。高野が描こうとしているのは、ヒーローが悪の組織に敗北した後の世界。いったいなぜ、これまでヒーローを演じてきた高野が、こうした作品を自ら手掛けようと考えたのか。制作のきっかけから、特撮作品の魅力まで、たっぷりと語ってもらった。

(参考: 高野八誠 写真‎)

■特撮は日本ならではの独自性のあるジャンル

ーー自ら特撮作品を制作しようと思ったきっかけを教えてください。

高野:僕はこれまで、東映株式会社や円谷プロダクションの作品以外にも、たくさんの特撮作品に出演してきました。1年通して、魔法使いや悪役ばかり演じて、ほとんど人間の役を演じなかった年もありました(笑)。それらの特撮作品に携わっていくうちに「もっとこうすれば面白くなるんじゃないかな」というアイデアが徐々に浮かび、出演作を重ねるごとに撮りたい作品のイメージが固まっていったんです。特に、三池崇史監督の作品に出演したときは、現場で監督が放つパワーに刺激を受けて、“自分で撮ってみたい”という欲求がいっそう強くなりましたね。昨年、事務所の育成プログラムの一環で、『GACHI-KUSO!!』という映画を監督させてもらったのも、今回の映画制作に繋がる一歩となりました。

ーー長年、特撮作品に携わってきて、その一番の魅力だと思うのはどんなところですか?

高野:まず、日本ならではの独自性のあるジャンルであることが、大きな魅力のひとつだと考えています。円谷英二さんが牽引し、1950年代から発展してきたもので、CGとはまた異なる映像的な面白さがあります。普通の生活では絶対に見れないような世界を、本当に実写で再現する迫力は代え難いです。また、特撮作品はお金もかかるし、制限もいろいろとあるけれど、だからこそアイデア次第でいろいろな工夫ができるところも良い。衣装やセットの作り方など、昔から培われてきた技術をもう一度見直すと、新たに発見することもたくさんあります。最近、日本では時代劇や特撮作品が作られることが少なくなってきましたが、長らく特撮に携わってきたものとして、小さなバジェットの作品でも良いから、その魅力をちゃんと世界に伝える作品を作りたいと思っています。

ーー昨年の『シン・ゴジラ』のヒットもそうですが、日本発のコンテンツである『パワーレンジャー』がハリウッド映画化されるなど、最近は特撮が世界的にも再評価されている印象です。

高野:作り手たちが、特撮の魅力を世界に発信していこうと働きかけてきたことが、ようやく身を結んできた時期なのかもしれません。実際、僕がこれまで出演してきた特撮作品のほとんどがアジアでも公開されていて、アジアのファンの方から応援のメッセージを貰うことも多いです。海外には熱心なファンがたくさんいますよ。

ーー高野さんが憧れている特撮監督はいますか。

高野:たくさんいますけれど、強いてあげるなら実相寺昭雄監督でしょうか。『ウルトラQ』の、本当に冒険をしてるような感覚を与える臨場感あふれる演出や、スリリングなカット割りは強く印象に残っています。あとはやっぱり三池監督ですね。現場で携わりはじめて1〜2作目のとき、僕は下っ端の役だったのにもかかわらず、監督は細かく演出を付けてくださったんです。それで僕はものすごくモチベーションが高まりましたし、「こんな風にして現場の士気を上げていくんだ」って、監督としての手腕にも敬服しました。そして、三池監督の現場のパワーはそのまま、ちゃんと画にも映り込んでいます。これまで多くの作品に出演させていただいて、映像には現場の雰囲気がそのまま出るということは、深く実感していますね。

ーー特撮の現場の雰囲気は、ここ10数年で変わりましたか? 最近は“ヒーロー作品=若手俳優の登竜門”と捉えられているようにも感じます。

高野:以前は、主役が自らアクションシーンも演じたりするため、とても泥臭い世界というイメージが強かったと思います。『仮面ライダー龍騎』に出演した頃は、キャスト全員が「負けちゃいけない」っていうギラギラした雰囲気で、良い意味での緊張感を持ちながら撮影に望んでいましたね。でも最近は、出演者同士が一緒に写真を撮ってSNSに投稿したりするなど、和気藹々とした現場になっている印象です。もちろん、ファンにとっても嬉しいことでしょうし、宣伝効果もあるでしょうから、それはそれで良い現場だと思います。作品自体の地位も上がってきている印象で、昔は戦隊モノに出演することが、必ずしも俳優としてのステータスには繋がらなかったのが、いまや3番手、4番手の出演者のスピンオフ作品が作られるほど、メジャーなものになっています。マーベル・シネマティック・ユニバースみたいに作品世界まで広がっているのは興味深いですね。

■「特撮ファンこそ、笑って楽しんでもらえる作品に」

ーー『HE-LOW』では、敗北した後のヒーローを描くとのことで、かなり異色の作品となりそうです。

高野:「ヒーロー」という言葉には「正義」や「かっこいい」というイメージがありますが、一方で「LOW」という単語には「最低」や「かっこわるい」というイメージがあります。つまり、『HE-LOW』は「最低なヒーロー」ということです。長らく特撮作品を見てきて、ふと感じたのが「ヒーローは戦っているうちが華」ということでした。じゃあ、戦いが終わったら、彼らはどうなるのかなと考えたことから、構想を練っていったんです。怪人たちはみんな世界を征服したがるけれど、実際に征服したらどうなるのかな、とか。たぶん、怪人が支配したとしても、この世界は大して変わらないんですよ(笑)。それに戦う相手がいないと、怪人もさぞかし困るはず。今回の映画では、暇で退屈している怪人たちの苦悩にもスポットを当てています。

ーーなかなかユニークな設定ですね(笑)。

高野:もともと特撮ファンに向けた企画なので、ひねったネタをたくさん仕込んでいるんです。“特撮あるある”とか。たとえば、巨大ロボを1回動かすのに燃料はどれだけかかるとか、戦いが始まると採石場に行くのはなぜなのかとか、特撮ヒーローものならではの定番設定に、ガンガン突っ込みを入れています(笑)。特撮ファンこそ、笑って楽しんでもらえる作品にしたいです。

ーー今作には、同じく特撮の世界で活躍する青柳尊哉さん、吉岡毅志さんも出演していて、そこも特撮ファンにとって楽しみとなりそうです。

高野:彼らは僕の特撮仲間で、よく飲みにいく関係なんですよ。それで飲んでいるときに、一緒に映画を一本作ろうよと声をかけたら、軽く引き受けてくれたんです。その後、作品の構想案を見せたりしているんですけれど、長年の付き合いだから、「高野くんの個性が表現に反映されてない」とか、かなりズバッと指摘してくれて、そこがすごくありがたいですね。今回は、監督でも照明でも音声でも、お互いの意見を交わし合いながら映画作りをしたいと思っていたので、今回のキャストとスタッフは理想的です。とても刺激的ですよ。

ーー制作費用をクラウドファウンディングで募ったのも、すごく今っぽいやり方ですね。クラウドファンディングは、映画制作においてどんなメリットがありますか?

高野:実は5年前に、同じように元ヒーローを集めて1本のヒーロー映画を作る構想をしたことがあって、配給まで決まっていたものの、結果的に予算面がクリアーできなくて頓挫したんです。当時はまだクラウドファンディングが認知されていなくて、映画を制作するにはあらゆる障壁がありました。もちろん、クラウドファンディングでも簡単に作れるわけではないですけれど、企業からスポンサーという形で資金を集めるのではなく、特撮ファンを中心とした方々に直接、「この企画はどうですか?」と提案できるので、好きなものを好きなように作るには向いていると思います。それに、募集をかけた時点で、賛同していただいた方々の人数や集まった金額で、その作品に本当はどれくらいのポテンシャルがあるのかを計ることができる。これは、制作者側にとってもモチベーションになるし、すごく良いシステムですよね。エンターテイメントには、本や音楽などいろいろなジャンルのものがありますが、作るうえで一番リスクが高いのは、やっぱり映画だと思います。そんな中で、クラウドファウンディングはとても透明性が高いシステムなので、あらゆる面でリスクヘッジができる。今後、このシステムを使って多様な映画が作られることを期待したいですね。

ーー当初目標にしていた金額の5倍以上集まってる状況ですが、具体的に金額が増えたことで、映画の内容にも変更があるのでしょうか?

高野:期待以上の金額が集まったのは、本当にありがたい限りです。集まったお金は、作業効率を上げること、クオリティ面での補強に当てたいと思います。絵作りひとつとっても、想像していたより豪華にできそうなので、期待してください。

ーーちなみに、すでに売り切れていますが、今回のリターンには“爆破シーンへの出演”もあり、興味がつきません。

高野:「本当にそんな事やって危険じゃないの? 大丈夫?」って、スタッフには怒られました(笑)。それに、「爆破シーンに出演したい人なんているのか?」との声もあったのですが、僕自身に憧れがあったし、絶対に出たい人はいると思ったんです。実際、爆破シーン出演は高額だったにも関わらず、すぐに売り切れました。爆発シーンやワイヤーアクションなど、人間が本当に演じているところが特撮の魅力なので、その醍醐味を存分に味わっていただける作品にしたいと思います。

(大和田茉椰)