攻撃サッカーを貫く昌平の、まさにシンボルだ。生粋の司令塔・山下が初の全国制覇へ導くか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 168センチ、60キロ。決して恵まれた体格ではないが、今季の高校サッカー界で特大の輝きを放つ逸材がいる。
 
 持ち前の高度なパスワークを前面に押し出し、インターハイ初制覇を狙う埼玉の躍進校、昌平。その司令塔・山下勇希(3年)だ。
 
 中盤の底から良質なパスを左右に散らしながら、ここぞという場面では縦に鋭いボールを付けて好機を演出する。機を見て仕掛けるドリブル突破も一級品で、相手のフィジカルコンタクトを巧みに交わして、見事に局面を打開する。昌平の攻撃サッカーを牽引するプレーメーカーだ。
 
「関係者や他の指導者からも『山下は良いよね』と言ってもらえている」
 
 そう語って目を細めるのは、チームを率いる藤島崇之監督だ。インターハイの埼玉予選を制した昌平は、7月8日に県リーグ1部の西武台戦を戦った。惜しくも0-1で敗れたが、山下はドリブルとパスを巧みに使い分け、中盤で相変わらずの存在感を示していた。
 
 そんな山下が頭角を表したのは、ほかでもない昨年のインターハイだ。大会前まではベンチを温めていたが、課題だった状況判断が著しく改善され、攻撃のジョーカーに抜擢された。当時はボランチだけでなく、サイドハーフの位置でも起用され、針谷岳晃(現・ジュビロ磐田)や松本泰志(現・サンフレッチェ広島)ら3年生の支えもあって好プレーを連発。初出場ながら4強入りを果たすチームで活躍を見せ、一気に評価を高めた。自信を付けた山下は右肩上がりに成長を遂げ、最終学年を迎えた今年は中盤の要として力強くチームを牽引している。
 
 とはいえ、中学時代は目立つ選手ではなかった。所属していた浦和レッズジュニアユースでは1、2年までは定位置を掴んでいたが、フィジカルコンタクトの弱さや当時160センチほどしかなかった身長がひとつのウイークポイントとなり、3年時には先発機会が激減。ユースへの昇格も逃し、悔しい想いを味わった。そんな時に出会ったのが藤島監督だ。
 中3の夏休みが終わりかけたころ、関東リーグの柏レイソルU-15戦に足を運んだ指揮官は、途中からピッチに立った山下のテクニックに目を奪われた。ウチであれば山下の技術力を活かしてあげられるのではないか──。試合後、山下に声を掛けたという。
 
 山下は、その想いに感銘を受けたという。
 
「嬉しかったですね。自分は身長が低くて、フィジカルコンタクトにも弱い。そういう意味では、昌平のポゼッションサッカーのスタイルが合っているのかもしれないと思いました」
 
 自ら昌平の試合を観戦に訪れ、個々の技術を活かしたスタイルの中でプレーする自身の姿を思い描いた。意を決して昌平の門を叩き、高校入学後に身長が伸びるとフィジカル強化にも努め、レッズジュニアユースで培った才能を一気に開花させていく。大きな信頼を寄せて起用してくれた藤島監督。すべては、あの出会いが始まりだった。
 
 目標は、高卒でのプロ入りだ。ただ、現時点で具体的なオファーは届いておらず、7月29日に幕を開けるインターハイでの活躍がひとつの鍵となるだろう。思えば、昨年の針谷と松本もそうだった。夏の大舞台で自身の力を証明し、そこから契約を勝ち取ったのだ。先輩たちと同じ道を歩むためにも、昌平を昨年以上の結果に導く覚悟だ。つまりは日本一の座だ。
 
 浦和時代のチームメイトであるDF橋岡大樹(浦和ユース/3年)とは、いまでも仲がいい。かつての僚友が名を連ねるU-18日本代表入りもひとつの目標だ。
 
 夏の仙台で妙技を披露するだろう、昌平の背番号7。本格化の気配を漂わせる好タレントに注目だ。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)