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●なぜAmazonはブームを作り出せたのか

米Amazonが2016年末、同社のホリデーシーズン商戦でスピーカー型スマートデバイス「Amazon Echo」関連ビジネスの好調を伝えてから早半年以上が経過し、IT業界各社からは次々と競合デバイスの市場投入が発表されている。

雨後の筍のように続々と登場する「スマートスピーカー」だが、どのような製品があり、実際にどういったユーザー層や用途を狙っているのだろうか。最新の事情をまとめてみた。

○Amazon Echo+Alexaのブームが起きるまで

スピーカーを通じて「Alexa (アレクサ)」というAIアシスタントに話かけることで、音楽を演奏したり、家の電灯のオン/オフを行ったり、あるいは最新のニュースや天気予報を教えてもらったり……。手による操作を必要とせず、音声インタフェースを使ってさまざまな機能を利用できるのが、「スマートスピーカー」と呼ばれる製品の特徴だ。

Amazonの「Echo」が一般販売開始となったのは2015年6月で意外と古く、すでに2年以上の稼働実績がある。ただ、このAlexa+Echoのような仕組みが注目され始めたのは比較的最近の話だ。おそらく2016年3月に廉価版の「Echo Dot」の提供が開始されて以降、ユーザーの利用が進んだだけでなく、同年末のホリデーシーズン商戦に機能を強化しつつも値下げが行われたバージョンが投入されたことで、トレンドになったのだとみている。

Alexaには、利用可能な機能を追加する「Skill」という仕組みがあり、これをサードパーティの開発者にSDKの提供・開放している。Amazonが用意したSkillのオンラインストアで公開が可能で、Business Insiderの報道によれば2016年第1四半期にわずか135個だったSkillは、翌第2四半期に1000個を突破。第3四半期に3000個、第4四半期に5000個、2017年第1四半期にはついに1万個の大台に乗っている。Skillの拡張が一気に進んだのは2016年夏以降で、スマートスピーカー分野への最終的な製品投入を各社が決定したのもこの時期だと予想される。

だが、Echoが提供されていない米国以外の多くの国でも、Alexa+Echoの組み合わせが大きな注目を集めるようになったきっかけがある。前述の通り、Amazonは2016年ホリデーシーズン商戦における結果を高らかに発表したが、これに加えて家電展示会「CES 2017」で家電各社と数々の提携を発表した。

Amazonによると同時期だけでEchoの売上が前年比9倍の伸びを示し、Alexa関連デバイスの販売も数百万台規模にのぼったという。また、CES 2017ではLGがAlexa対応冷蔵庫を発表するなど、家電各社がAlexa搭載を行った自社製品のデモストレーションを披露し、その勢いを印象づける結果となった。

さらに2017年5月には7インチ液晶ディスプレイ付きのAlexa対応スマートスピーカー「Amazon Echo Show」も発表され、「単なるスピーカー形状にこだわらない」というメッセージをAmazonは出している。

●GoogleやMicrosoftだけでなく、SamsungやLINEまでが追うAmazonの背中

「IT企業各社がAmazon Echo+Alexa対抗デバイスの準備を進めている」という噂は、2016年前半にはすでに存在していたと認識している。当時名前が挙がっていたのはGoogleとAppleで、前者は2016年5月に開催された開発者会議「Google I/O」において、実際にGoogle Assistantに対応したスマートスピーカーが「Google Home」の名称で発表された。

同時期にAppleも対抗製品を開発しているという報道が行われたものの、結局同年6月に開催された開発者会議「WWDC16」でこれが発表されることはなかった。最終的にAppleは翌年6月のWWDC17においてSiri対応スマートスピーカーの「HomePod」という製品を発表している。

米Microsoftは2016年末に中国の深センで開催されたWinHECにおいて、同社のAIアシスタント「Cortana」を搭載したスマートスピーカーを開発するためのガイドラインを発表した。OSにはWindows 10 IoTを利用することで通常のPC向けWindowsと比較しても軽いフットプリントで動作し、さらにディスプレイの有無によって2種類の要求スペックが定義されている。

同時期に、スピーカー製品で知られるメーカーのHarman Kardon (現在はSamsung Electronics傘下)との提携でCortana対応スマートスピーカーを間もなく提供開始するとティザー広告を展開し、これは後の2017年5月に「Invoke」の名称で正式に発表が行われている。

米系以外のメーカーとしては、中国のオンライン通販大手Alibabaが2017年7月に「Tmall Genie」という製品を発表して話題となった。「AliGenie」というAlibaba独自のAIアシスタントを採用しており、Alexa+Echoで実現されるSkillセットの多くが標準で利用可能になっているという。このほか、SamsungがやはりEcho対抗のスマートスピーカーを準備中という報道が出ている。Samsungはスマートフォン「Galaxy S8」発表に合わせてAIアシスタント「Bixby」の投入を発表しており、この開発中のスマートスピーカーはBixby対応になるという。

原稿執筆時点でBixbyの英語対応が遅れていることが伝えられているが、米国での競合らがすでに製品提供が行われている既存のAIアシスタントを自社のスマートスピーカー製品に搭載して市場投入している以上、SamsungもまたBixbyをセールスポイントとして売り込むために開発を急ピッチで進めている段階にある。

日本国内ではコミュニケーションサービスを提供するLINEが、AIアシスタント「Clova」を搭載したスマートスピーカー「WAVE」を発表し、一部機能が省略された廉価版デバイスを今夏に先行投入する計画だ。無骨なデザインのスピーカーだけでなく、キャラクターを模したユニークなデザインのスピーカー製品「CHAMP」も提供を予定している。

現時点で競合はすべて米国や中国など自社の本拠地のみをターゲットに製品を投入しており、まだ日本への市場展開を行っていない。Amazon Echoは2017年内の国内投入が噂されており、GoogleはGoogle Homeの国内販売を明言しているが、LINEは日本を地場とする強みを活かしてClove+WAVEを先行投入する計画だ。

これらハードウェア製品に関して、Appleが事実上自社製品のみで閉じたエコシステムを形成しているのを除けば、基本的にはAIアシスタントの仕様を公開して外部のメーカーに搭載製品を開発してもらうケースが多い。Amazonが典型的だが、すでにLGをはじめとするメーカーからAlexa搭載デバイスが市場投入されている。

Googleも「Google Assistant built-in」の名称でサードパーティでの採用を推奨している。もともとソフトウェアのOEM供給を主眼とするMicrosoftでは、自社がスマートスピーカー製品を出すことはなく、あくまで基本仕様を定めて前述Invokeのようなサードパーティ製品の開発を促している。Amazonは「Development Kits for AVS (Alexa Voice Service)」で音声認識ハードウェア開発に必要なキットも用意しており、可能な限りエコシステムを拡大していこうという意図がうかがえる。

●Appleが懐疑的な見方、スマートスピーカーに市場性はあるのか?

このように盛り上がるスマートスピーカー市場だが、ビジネスモデルがわからないという方も多いだろう。何より「何に使うの?」と疑問に思っているかもしれない。実際のところ、先行するAmazonの事例を見る限り、利用されている機能の多くは「音楽演奏や機器制御などのハンズフリー操作」の部分にある。例えば、スマートフォンを操作することなくお気に入りのプレイリストなどを演奏させたり、就寝時に消灯や目覚ましのセットを行ったりと、非常にシンプルなものだ。

○Amazonの狙いはGoogle、Microsoftも目指す道

Amazon EchoとAlexaに関して、「Amazon Prime」に紐付いたサービスだと指摘されることが多い。音楽演奏や普段の購買行動など、Primeのサービスを快適に利用する仕組みが音声のみで簡単に利用できるからだ。また、Amazonは1家に1台とはいわず、複数台のEcho (Echo Dot)導入を推奨しているように見える。

同社はEcho同士で内線通話できる機能の提供を開始しており、各部屋にEchoを設置しておけば家のどこにいてもAlexaに話しかけるだけでサービスが利用できるからだ。おそらくAmazonが目指すビジネスモデルとは、さまざまな場所にEchoを張り巡らせることでAlexaの利用できる環境を整備し、同社サービスへより多くの人々を誘導することにある。あわよくば同社の大きな収益源であるPrimeの加入が増えてくれれば御の字だろう。

Googleもそれに近いビジネスモデルを描いていると思われる。Google Assistantの利用が広がれば、それだけ各種のデータが蓄積されてユーザーのGoogleサービスでの滞留時間が長くなり、結果として同社のビジネスを広げる機会にもなる。Microsoftは現在Azureというクラウドサービスの提供拡大に邁進しており、やはりCortanaを通してAzureの利用を推進することが将来的なビジネスの拡大へとつながる。その意味では、AlibabaやLINEも同種のビジネスモデルを描いていると予想する。

○ポートフォリオに合致しないApple

逆に、ビジネスモデルが見えにくいのがAppleだ。100〜150ドル以下でデバイスを大量にばら蒔いてエコシステム拡大に努める競合らに対し、AppleのHomePodは349ドルと高価だ。同社はHomePodを高級スピーカーと位置付けており、さらに前述のようにApple自体がクローズドなエコシステムでサードパーティの介入する余地をあまり残していない。

想像ではあるが、Appleはこのスマートスピーカーの市場にいまだ懐疑的で、少なくとも最低限の利益を確保できるレベルで製品を投入し、あまりリスクを負わない方向性を目指しているように見える。投入時期が2017年末と遅く、さらに市場が米国限定というあたりにその方向性がうかがえる。

製品としては、Amazon Echoが音楽利用中心になっていることを勘案して、高級スピーカーとしての性格を強くしたようにも思える。いずれにせよ、ハードウェアをビジネスの主軸に据えるAppleと、これを撒き餌にビジネスを拡大する方向性を見出している競合とは目指すものが異なるようだ。