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text:Sam Sheehan(サム・シーハン)

 

なぜ安価なEVスポーツカーがない?

先日、2.0ℓユニットを積んだマツダMX-5(日本名:ロードスター)に4日間乗れる機会があった。実にいいクルマで楽しい体験をしたが、ふと浮かんだ疑問がある。

なぜこのクラスには、EVがないのだろうか。

多くのひとびとがそうであるように、自分が日々どこを走るか思い返すと、そのほとんどが市街地か高速道路である。そんなシーンでは、MX-5のエンジンはむしろ静かな方だ。

エンジン音が耳を楽しませてくれるのは、かなり回した時だけ。それ以外の場面では、風切り音とロードノイズの方が支配的である。

プレミアムなクラスではないコンバーチブルであれば、どれも似たようなものだろう。

それこそ、電気自動車でもいいのに、と思った理由である。

皆が「峠を攻める」わけではない

勘違いしないでほしいのだが、カントリーロードを飛ばすようなときには、内燃エンジンの甘美なサウンドに勝るものはないと思っている。

よほど神経質なものや、6気筒以上のマルチシリンダーでもなければ、音がなくなることが素晴らしいとは主張するつもりもない。

いずれにせよ、スポーツカーの購入者全てが、峠を攻めたりすることを目的にしているわけではない。陽射しを楽しみながら街を流そうというユーザーも少なくないのだ。

彼らにとっては、EVスポーツカーはパーフェクトな選択肢だろう。そう言う自分も、ウイークデーの仕事中であればそれを選びたいと思ううちのひとりだ。

排出ガスがゼロの軽量2シーターでオープンエアドライブができれば、大気汚染に手を貸すことなく、それでもこれまで通りの楽しみを満喫できるではないか。

重量はトルクが補うことができる

EVスポーツカーには、明らかに多くの利点がある。スポーツカーは軽量設計こそ正義だが、それはEVの航続距離拡大にも貢献する。

逆にEVのバッテリーをフロアへ低く配置する設計が、エンジンを積むクルマより低い重心高を生み、スポーツカーに必要な運動性能の向上に寄与するわけだ。

たしかに、バッテリーは重く、MX-5のようなクルマに積めば、軽量という利点は失われるだろう。しかし、その重量増を補うのが、モーター特有の回り始めから発生する大トルクだ。

これは、すでに実例がある。テスラの処女作であるロードスターがまさにそれだ。2008年に登場したそれは、ロータス・エリーゼのシャシーをベースとし、320km以上の航続距離を可能にした。

このクルマの最大の弱点は、£90,000にも達した価格だった。シャシーのコンポーネンツに共有部分の多いエリーゼと比べれば、実に3倍近い。

もっとも、それは10年近く前の話だ。EVの開発と製造にかかるコストは年々下がっており、今後、2020年頃までには新型EVが多数登場すると予想される。

ジャガーI-PACEや日産の次期リーフ、フォルクスワーゲンI.D. Crozzなどなど。これによって、電動パワートレインのハードウェアに多くの選択肢が加わるだろう。

テスラの新型ロードスターに期待

EVスポーツカーのコンセプトモデルも、徐々に姿を現し始めている。今年の初めには、中国資本に下ったMGが、Eモーションと銘打ったそれを発表した。

実現可能性が高いのは、テスラの新型ロードスターだ。イーロン・マスクCEOは、2019年に発売すると明言している。

ただし、それはモデルSのプラットフォームをベースにしたスーパースポーツになる見込みで、手頃な価格にはならないだろう。

これはメーカーへの嘆願であり、それを実現できるかという出題でもある。市場は、安価なEVスポーツカーを求めている。そうは思わないだろうか。