我らが酒場詩人・吉田類さんが、ビールの旨い店へ案内してくれると集合したのは両国。類さんイチオシというのだから、一体どんな良店にありつけるのだろうか。期待に胸を膨らませ向かった先には…




ビールも、日本酒同様、個性を味わってこそ本領発揮
『麦酒倶楽部ポパイ』

「ここ、ここ。このビールのオブジェが目印」と類さんが指さしたその店とは、『麦酒倶楽部 ポパイ』。クラフトビールという言葉すらまだ世の中に浸透していなかった昭和60年の創業から、その魅力を広め続けてきたビールの殿堂である。

ク、クラフトビール!? 正直、「類さん=大手ビール」と勝手に想像していただけに(失敬!)、意表を突かれた格好だ。けれど、大衆酒場だけでなく、こういった店もご存じとは流石、類さん!



「25年くらい前は、東陽町に住んでいたからね。だから、ここら辺はよく飲み歩いた場所。当時から店の存在は知っていたけれど、はじめて入ったのは意外と最近。僕もまだ深くはのめり込んでいなから、今日はどんなビールと出会えるか楽しみ」なのだそう。

早速、店内に入るとまずそのタップ数に驚かされる!「1、2、3、4……」とカウンターの奥に3段になって並んだタップを数えていると、類さんが助け船。「だいたい何種類くらいあるんですか?」という類さんの質問に、店長の城戸弘隆さんが答えてくれる。

「タップの数でおよそ100。そのうち70タップほどが樽と繋がっていますね」

流石ビールの殿堂である。ただ、その数に驚きながらも、類さんはあえて30のタップを繋いでいない理由も気になるようで、質問を続ける。



「炭酸ガスの圧力やビアラインの長さ、樽の置く高さなどによって、クラフトビールの個性を引き出すためなんです。こうしてタップに余裕があると、適材適所に次の樽を置けますから」

なるほど、やたらにタップが多いだけでないのである。そんなこだわりを聞けば、俄然、ビールを飲みたい気持ちにも火が付くというものだ。

ズラリと銘柄が並んだメニューリストを眺めながら、類さんが「一杯目だからな〜」と熟慮していると、「山口地ビールのヴァイツェンはいかがでしょう?」と城戸さんが勧めてくれた。



素直に頷き、タップから注がれるビールを愛でるように眺める類さん。そして、受け取ったのは、背の高い専用グラスに注がれた黄金色のビールだった。ひと口味わえば、「ビール独特の苦味を感じさせつつ、フルーティーな香りと、そこからくる軽やかな口当たり。いや〜、旨い!」と満面の笑み。



早くもご満悦の様子の類さん。が、ここで城戸さんはさらに類さんを喜ばせる。次に勧めてくれたのは、飲み口を銀紙で包んで差し出されたビール。何かと思えば、こちらお燗ビールというのだ!

これには類さんも驚きを隠せなかったようで、「日本酒と同じでビールも温めると香りが引き立ってくるし、味わいにも落ち着きが出てくる。ビールのお燗なんて初めてだね」


相性抜群ならビールの味も倍増!おすすめ銘柄とおつまみの最強ペアリングを発表!



次のビールを頼もうとすると、城戸さんから「合わせる料理とのペアリングも考えると、互いの美味しさを引き立て合いますよ」との提案。

そこで提案してくれたのが、自社工場・ストレンジブリューイングで醸造される「ゴールデンスランバー」。そして、合わせるはスパイスやハーブの代わりにエールを使って風味や香りを重ねたサーモン。

早速ひと口。「ワインではないけど、マリアージュという言葉を実感。ペールエールと、サーモンの旨みと仄かなエールの香り、相性が抜群だね」


―店主おすすめ銘柄とフードペアリングをご紹介―

「山口地ビール ヴァイツェン」×「ポパイ特選オリジナルソーセージ 3種盛り合わせ」

「ヴァイツェンはドイツのビールだからドイツの料理を」という直球な発想で城戸さんが選んでくれた取り合わせ。ホップ入りのビターソーセージ、ニュルンベルガーソーセージ、チョリソーの3種が付く。「山口地ビール ヴァイツェン」¥927(専用グラス(400ml))、「ポパイ特選オリジナルソーセージ 3種盛り合わせ」¥1,200



「ベアードビール 駿河ベイ インペリアル IPA」×「ビール屋さんのこだわりフィッシュ&チップス」

しっかりとホップが効き、ボディー感のあるIPAに合わせるのは、衣にこれまたIPAのビールを加えたフィッシュ&チップス。カラッと揚がるとともに、鱈の旨みを引き出した。自家製タルタルでどうぞ。「ベアードビール 駿河ベイ インペリアル IPA」¥1,194(14oz)、「ビール屋さんのこだわりフィッシュ&チップス」¥1,000



「えぞ麦酒 シェイクスピアスタウト」×「スペアリブのスタウト仕込み」

「焦げ由来のスタウトの苦味には、焦げの旨みがあるものが合います」と城戸さんが勧めるスペアリブのスタウト仕込み。こちらのビールにはステーキなどと合わせても互いの魅力を引き立て合うとか。「えぞ麦酒 シェイクスピアスタウト」¥1,122(14oz)、「スペアリブのスタウト仕込み」¥1,280



「ラブポーション#9 スコッチエール」×「バーレイ パウンドケーキ」

ブランデーのような風味を持つポパイの自社工場で醸造したビールには、スイーツを合わせて。ビールを煮詰めた、ほんのりと苦味のきいたソースがかかっており、優しい甘みのあるビールと抜群の取り合わせ。「ラブポーション#9 スコッチエール」¥880(200ml)、「バーレイ パウンドケーキ」¥580



「日本酒もそうだけど、合格点を超えてるものであれば、どれが一番だとか決める必要はない。『これを飲んで、次はこっち、あれはどんな味かな?』といって、それぞれの個性を味わい、驚き、楽しむ。

自分の好きなものだけを飲むのもいいけど、やっぱりいろんなものを楽しんでこそ、この店の魅力は発揮されるんだろうね」

最後にそう締めくくってくれた類さん。クラフトビールの殿堂と酒場詩人のペアリングに新たな発見を見た!


■プロフィール
よしだ・るい 『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)で活躍する酒場詩人。これまで番組では、全国津々浦々700店以上の酒場を巡ってきた。映画初主演となる『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』が現在公開中。