2017-0708
厚生労働省は2017年6月27日、平成28年版(2016年版)となる「国民生活基礎調査の概況」を発表した。国民生活の基本事項を調査し、各行政の企画や運用に必要な資料を収集する目的で行われているものだが、資料性の高いデータが豊富に盛り込まれており、注目に値する。特に今回発表分は3年に1度の「大調査」の年であることから、世帯員の健康状態や介護の動向なども確認することができる。今回はその中から「末子が乳幼児の母親で仕事を持つ場合、日中誰がその子供を保育しているかの状況」について、現状などを確認していくことにする(【発表ページ:平成28年 国民生活基礎調査の概況】)。

日中、誰が育児をするのか


今調査の調査要件及び注意事項は、今調査に関する先行記事の【平均世帯人員と世帯数推移をグラフ化してみる】で解説済み。必要な場合はそちらを参考のこと。

児童(18歳未満の未婚の者)を末子に持つ世帯において、母親が仕事をしているか否かの比率は次の通りとなる。全体では2/3強、末子が3歳ならばほぼ6割が「母親は仕事あり」と回答している。

↑ 末子の年齢階級別にみた仕事ありの母の割合(「母の仕事の有り無し不詳」は含まず)(児童あり世帯比)(-2016年)(再録)
↑ 末子の年齢階級別にみた仕事ありの母の割合(「母の仕事の有り無し不詳」は含まず)(児童あり世帯比)(-2016年)(再録)

子供が「乳幼児」に該当する時期に母親が働きに出る(必要が生じた)場合、育児の問題が大きな課題となる。【人気は認可保育所・一時預かり…今後子供を持つ場合に利用したい制度や施設をグラフ化してみる】や【理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(下)理想数まで子供を持たない理由】などでも、「仕事はしたい(自分の意志として、あるいは家計の補助として)」「育児は必要」との両てんびんを持たされ、子供が幼い時の育児に頭を悩ませる母親像が明らかに見えてくる。

今調査では「末子が乳幼児」「母親が仕事を持つ」の条件に合致した世帯において、誰がその末子を日中は保育するのか、複数回答で末子の年齢別に尋ねている。その結果と、上のグラフ「末子の年齢別、仕事ありの母親の割合」をかぶせたのが次のグラフ。「仕事ありの母親の割合」とその他の項目とは調査母体が異なるが、比較値として見る際の参考として欲しい。

↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2016年)
↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2016年)

↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2016年)(棒グラフ)
↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2016年)(棒グラフ)

ゼロ歳児の場合はさすがに父母が保育する場合が多く7割。今回はグラフ作成を略するが、全般的に「末子の年齢が上になるほど(働いている場合の)母親の就業時間は長い」傾向があるため、短時間は父親や祖父母に任せて母親が働きに出るとのパターンが想定される。また幼少児は何かと手間がかかりリスクも大きいため、他人には任せ難いとの事情もある。一方、ゼロ歳児から1/4ほどは認可保育所を活用しているのも確認できる。

これが1歳になると、父母の育児率はゼロ歳における値のほぼ2/5、29.2%にまで減り、その分認可保育所や認定こども園の利用が増える。以後「父母」「祖父母」は減少し続け、3歳位までは認可保育園・認定こども園が増加。3歳以降になると幼稚園も活用できるために幼稚園利用率が急激に増え、その分認可保育園利用率が漸減する形となっている(認定こども園はほぼ横ばいを維持。幼稚園の機能を併せ持つからに他ならない)。

主要な項目の動向をざっとまとめると次の通りとなる。

・父母……ゼロ歳児では高率。1歳になると急激に減り、あとは漸減。

・祖父母……2歳時位までは1割強。後は1割足らず。

・認可保育園……ゼロ歳児時点で1/4近くが利用。2歳児の6割強がピークで、以後漸減。

・認定こども園……ゼロ歳児時点でも一部が利用。1歳から2歳にかけて利用率は増加し、あとは横ばい。

・幼稚園……法的利用年齢の3歳以降急増だが6歳では減少。認定こども園にシフトしたか。

・認可外保育施設……1歳時に最多の5%強、あとは漸減。

三世代世帯、あるいは近所に祖父母世帯が居る家庭ならば、母親の就労時に保育をお願いする事例も多々考えられる(「お爺ちゃんっ子」「お婆ちゃんっ子」なるもの)。しかし【種類別世帯数の推移をグラフ化してみる】にもあるように三世代世帯は全世帯のうち1割を切っており、期待はできそうにない。

厚生労働省の「出生動向基本調査」など各種調査結果でも、子供を持てない・持たない事由(≒少子化の遠因)として、(特に乳幼児期の)育児問題がクローズアップされている。以前のように三世代世帯が当たり前で、母親の就労も比率的に低いのなら問題視されなかった話で、母親の就労そのものの原因や、幼稚園・保育園・認可外保育施設・認定こども園、そして待機児童の話と合わせ、状況は複雑に絡み合っている。

前回調査からの変化をさぐる


次に示すのは前回調査の2013年分から、今回調査の2016年分においてどのような変化が生じたのかを算出してグラフ化したもの。細かい数字はさておき、大まかな状況を把握することができる。

↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2013年から2016年への変化、ppt)
↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2013年から2016年への変化、ppt)

「仕事あり」の母親の割合が増えている、つまり兼業主婦比率の増加が確認できる。これは先日別の切り口にて、別記事【共働き世帯の増え方をグラフ化してみる】で示した通り。

認定こども園は前回調査時点では存在しなかったため、当然2016年の利用率がそのまま反映されている。今記事の値は利用絶対数ではなくあくまでも比率のため、このグラフの動向は利用率のシフトを意味することに注意する必要があるが(人数ではない。上記グラフがマイナス値を示していても、実利用者数は増加している場合もある)、肉親や認可保育所、幼稚園の利用需要が認定こども園に流れたように見受けられる。見方を変えれば、認定こども園の登場により、子供の保育先が上手く分散されたと解釈できよう。



乳幼児の保育はどのような状態がベストで、それに向けていかなるかじ取りをすべきなのか。この問題は専門家、政策担当、そして現場の人たち、そしてもちろん当事者自身が意見を通わせて模索していかねばならない。その際には「自分の周りでこのような状態を見たから」「自分はこのようにしたいと考えるから」との狭い視野だけの判断ではなく、今件のような資料を元にすることも重要。

そもそも冒頭で解説しているように、「国民生活基礎調査」とはそのような使い道をするための調査なのだから。

なお今件記事の主旨とはやや外れるが、世帯の母が「仕事なし」、つまり専業主婦における保育状況は次の通りとなる。

↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事なし」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2016年)
↑ (参考)末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事なし」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(2016年)

「仕事なし」の専業主婦が家事に没頭しているのか、自らの技術向上に励み修練をしているのか、趣味趣向を楽しんでいるのかまでは分からないが、大よそ「3歳までは夫婦で」「3歳以降は幼稚園を多用」「認可保育所や認定こども園も利用する事例が多々ある」とのパターンに集約できる。兼業主婦の保育状況は良く問題視されるが、それと比較する形での専業主婦の状況はほとんど事例が呈されることは無いので、今件傾向も合わせて覚えておくことをお薦めする。