ホラー映画では「ギィィィ……」という木製の扉がきしむ音や、殺人鬼が迫ってくる時に不安や恐怖をあおるBGMなどが散りばめられています。これらの映画サウンドは、サウンドデザイナーたちが試行錯誤して作り上げているのですが、あるホラー映画専門の作曲家は、デジタルではなくアナログで独特な恐ろしい音を追求した結果、悪夢のような音を奏でる楽器「Apprehension Engine」を作り上げてしまいました。

Sounds of the Nightmare Machine - YouTube

鉄琴を指ではじくと……



「トン……」と殺人鬼が忍び寄るような音。よく見るとセットされているのは鉄琴ではなく鉄でできた金定規であることがわかります。



鉄線が貼られた木の板をたたくと、「ダダンダダンダダン……」と、何か金物にぶつかったような音が徐々に小さくなっていきます。





ギターのごとく張られた弦の上に黒いパーツを滑らせると、「ギィィィィ……」という、立てつけの悪い扉を開けたような音が鳴り響きます。



くりんとカーブした鉄の板に棒をこすりつければ、さび付いた刃物をこすり合わせたような金属系のノイズ。



このように、さまざまな恐怖を駆り立てる音を鳴らすことができるこの楽器が「Apprehension Engine」。直訳すると「不安エンジン」という意味です。



怪しげな表情の男性がApprehension Engineを奏でています。



この男性は映画音楽作曲家のマーク・コーベン氏。近年は主にホラー映画の音楽制作を請け負っているそうです。



音楽制作の様子。



コーベン氏が担当した映画の中で最も有名なのは、「キューブ」と……



「ウィッチ」とのこと。



コーベン氏はもともとデジタル機器を使って制作していたそうですが、個性のないデジタルサウンドに疲れてしまったそうです。



そこでコーベン氏は、より実験的で、アコースティックなオリジナルサウンドを追求し始めたとのこと。



そこでコーベン氏が連絡をとったのが、ギター製作者のトニー・ダグガン・スミス氏。



スミス氏は「マーク・コーベンは僕にホラー映画向けのクレイジーな楽器を作ってくれって言ってきたんだ」と当時を振り返ります。これまでに作ったこともない楽器を作ることになったスミス氏は、過去の経験をすべてひとつの楽器に集結させることになり、そうしてApprehension Engineが完成したそうです。



Apprehension Engineの特性を最大限に引き出すためには、唯一無二の楽器を弾きこなす演奏力も必要とされるとのこと。



コーベン氏は「これは本当に他の方法では表現できない音を作り出してくれます。伝統的な感覚では音楽と呼ぶことはできないシロモノです。しかし、Apprehension Engineは確かに感情を呼び起こします。だから私はこれを音楽と呼ぶのです」と話しています。



なお、「Apprehension Engineの音をこころゆくまで聞いてみたい……」という場合は、以下のムービーで演奏している様子を視聴可能です。

Horror Musical Instrument - The Apprehension Engine - YouTube