犬も人間同様、聴力が低下してくると耳が聞こえなくなってきます。原因は様々ですが聞こえなくなってくると今まであたりまえにしていたコミュニケーションが取れなくなり少し寂しさを感じます。
ここでは犬の聴力の低下について説明致します。

聴力の低下による犬の反応とは

インターフォンが鳴っても気付かない飼い主さんが帰宅しても気付かずに爆睡している飼い主さんの言葉に反応しなくなる食事の際「よし!」と声掛けをしても分からずにずっと待てをし続け飼い主さんをじっと見ている以前よりも臆病、攻撃的になった大きな声で吠えるようになった雷やサイレンなどの怖がっていた音を怖がらなくなった近寄っても気付かずにいて触るとびっくりする

犬の聴力が低下する4つの原因

1.老化

犬も人間同様、年をとると老化が始まります。小型犬や中型犬は9〜13才、大型犬は6〜9才頃から老化が目立ってきます。
耳は加齢に伴い蝸牛(かぎゅう)という聴覚を司る器官が悪くなり徐々に聞こえずらくなってしまいます。
老化による聴力の低下はある日突然聞こえなくなるわけではなく少しずつ進行していきます。

2.遺伝

子犬の頃から耳が聞こえていないようであれば遺伝によるものの可能性が高いです。
特に「白」「マール(黒斑点を伴った青灰色)」「白+黒ブチ」の色を持つ犬は先天的な聴覚障害を持っている可能性が高い傾向にあります。
はっきりとした統計結果があるわけではありませんが、白+黒ブチで有名な「ダルメシアン」は22%の割合で片耳が聞こえず、8%の割合で両耳が聞こえないとも言われています。
また白の毛並みの「ブルテリア」は20%の割合で聴覚に障害があるとも言われています。
この2種に限らず、イングリッシュセッターやイングリッシュブルドッグなどその他30種類以上の犬種でも先天的な聴覚障害があり、残念ながら遺伝によるものに対しては治療法がありません。

3.細菌感染による耳の炎症

外耳炎内耳炎中耳炎

耳の中に細菌が入り増殖すると耳垢や炎症を起こします。さらに進行していくと鼓膜や耳の中の様々な器官に影響を及ぼし聴力の低下へと繋がります。耳の通り道が肥厚し外耳道が完全に塞がってしまうケースもあります。
耳を痒がる、耳が臭い、頭をしきりに振るなどの行動は耳の不調のサインです。初期で適切な治療をすれば完治しますので、聴覚に影響が出る前に早めに治療を受けましょう。

またある日突然耳が聞こえなくなった場合は耳垢や腫瘍、異物によって耳の中が塞がれ聴力の低下を起こしている可能性があります。また、鼓膜が破れてしまっても耳が聞こえなくなることがあります。日頃から愛犬の耳の異変がないかチェックをしましょう。

4.薬物の摂取

治療で使う薬の副作用で聴力が低下する場合があります。そのような副作用がみられたら早急に投薬するのを中止し、獣医師に伝えましょう。
また日常生活で使用する接着剤、洗剤、シンナーなどを吸い込んだり耳の中に入ってしまうと聴力が低下する原因になると言われています。犬の付近にはそのような物は置かないように気を付けましょう。

犬の聴力が低下したときに注意したい生活の注意点4つ

1.驚かせない

耳が聞こえないことで不安で臆病になっている場合があります。今まで通りに接してしまうとびっくりして自己防衛のために相手に噛み付いてしまうこともあります。触るときは犬の視界に入り側にいることを分からせた上で触るようにしましょう。
また老化で聴力の低下がある場合は、同時に視力の低下もあり見えづらくなっていることもあります。その際はベッドを揺すってから触るなどアクションを起こしてから触るようにしましょう。

2.言葉ではなくジェスチャーでコミュニケーションをとる

耳が聞こえなくなってしまうと、飼い主さんの声による指示が愛犬には届きません。犬が理解しやすいような動作で指示を出すようにしましょう。同様に上手くできたら言葉ではなく行動でたくさん褒めてあげ安心させましょう。耳が聞こえない犬は見たものを頼りにしており、常に不安を感じていますので笑顔で接するよう心がけましょう。

3.散歩の時はリードを着け短く持つ

散歩中は車や自転車やバイクなど様々な危険があります。しかし耳が聞こえない犬は自分で危険を察知することが出来ません。
飼い主さんが犬の耳となり危険を感じたらリードを引き愛犬を守ってあげましょう。

4.不安にさせないよう安心させる

犬の聴力は人間の4倍と言われとても耳が良いです。その耳が聞こえなくなると慣れまで犬はとても不安になります。自分の声や飼い主さんの声が聞こえない為に大きな声で吠えてしまうこともあります。老犬で同時に視力も弱い場合は特にその傾向が見られます。
耳が聞こえないのは徐々に慣れますので、それまでは不安にさせないために飼い主さんの存在が感じられる場所に犬の居場所を作ったり、飼い主さんの匂いのする物を側に置いたりして安心させましょう。

犬の聴力を検査する方法

脳幹聴覚誘発反応検査

この検査はヘッドフォンやスピーカーを使い様々な音を犬に聞かせ、その際の脳波を調べて聞こえているか調べます。無麻酔で行うことが可能な検査ですが、残念ながら日本の動物病院ではほとんど行っておらず、限られた施設でのみに限定されます。

自宅での声掛けによる検査

〇瑤ぜ腓気鵑隆蕕筝の動きでなんて言っているか分かってしまうので、犬が別方向を見ている時に名前を呼んだり、「ごはん!」など敏感に反応していた言葉をかけてみる

犬から離れた場所から食器の音や手を叩くなどをして犬が反応するかみる

聞こえている場合は、音や声のした方に振り向いたり耳を動かす仕草が見られます。
これらに反応しない場合は聴力の低下の可能性が高いです。

ハンドジェスチャーを取り入れたしつけをしよう

しつけをする際は言葉だけでなく動作を加えながら行いましょう。動作を加えて教えておくと、いつか耳が聞こえなくなってしまっても愛犬とコミュニケーションを取る事が可能です。
ハンドジェスチャーで使うサインは細かな動きではなく、腕や指を使った大きな動きを使うようにしましょう。
代表的なハンドジェスチャーをご紹介致します。

お手

犬の前に手の平を差し出します。おかわりはもう片方の手の平を差し出します。

お座り

犬の顔の前で人差し指を一本立てます。そのまま犬の重心が後ろへ行くようなイメージで立てた人差し指を上へあげます。

おいで

腕を前に出し手を自分に向かって引きつけ、こちらへ来るように誘導します。
手の平や指だけだと動作が小さいので、腕を大きく使うのがポイントです。

待て

犬の顔の前に手の平を出し静止させます。

よし!

犬の前で両手を叩きます。

伏せ

曲げた腕を下にゆっくり振り下ろします。

まとめ

高齢の犬が耳が聞こえなくなると老化だと思われる方がほとんどかと思いますが、中には別の原因の可能性もあります。異変に気付いたら動物病院へ連れていき耳の中を診てもらいましょう。
耳が聞こえなくなっても少し工夫をすれば愛犬とコミュニケーションを取ることが可能です。老犬による聴力の低下はどの犬でもいつか必ず訪れます。そのときに備えて日頃からハンドジェスチャーなどの音以外のコミュニケーションを取り入れて対策を取り入れましょう。


(獣医師監修:加藤桂子先生)