「追い込むのは敵か、はたまた自分か。異端な千葉の新戦術」

写真拡大 (全2枚)

驚き。今シーズンのジェフ千葉を一言で表すにはこの言葉がピッタリだ。

新監督にアルゼンチン人のフアン・エスナイデル氏を迎えた今季。開幕から「ハイプレス・ハイライン」というキーワードが話題を呼んでいるが、その戦術は特異中の特異だ。

復権に向け、新たなチャレンジに取り組む千葉。今回のコラムでは、前半戦の戦いぶりを振り返る。

3センターハーフが指揮官のこだわり

上図が今季の基本システムだ。

最後尾を守るのは佐藤優也。センターバックは近藤直也を柱に岡野洵、若狭大志、大久保裕樹、キム・ボムヨン、多々良敦斗が起用されている。右サイドバックは山本真希と北爪健吾、左は乾貴哉とキム・ボムヨンが争う。

アンカーは熊谷アンドリューと佐藤勇人がしのぎを削り、インサイドハーフは町田也真人、高橋壱晟を軸にエドゥアルド・アランダ、ホルヘ・サリーナス、羽生直剛が顔を揃える。

ウイングは右が船山貴之、左が清武功暉で、センターフォワードは指宿洋史とホアキン・ラリベイが争う。

エスナイデル監督はアンカーを置いた3-5-2も採用しており、開幕当初はこの3バックをメインとしていた。現在は4バックが基本形であるが、チーム状況や対戦相手に応じて併用している。いずれにしても3センターハーフは不変であり、強いこだわりがうかがえる。

コンセプトを体現するキーマンたち

冒頭でも述べた通り、今季の千葉は「ハイプレス・ハイライン」がキーワードである。4バックであろうと、3バックであろうとそのコンセプトは不変だ。

とはいえ、最終ラインの高さは世界的にも類を見ないほど高い。戦術理解度のある選手が揃っていなければ、機能させるのは難しい。新監督の理想に応えるキーマンたちを紹介してみたい。

高い最終ラインの裏をカバーするGKの佐藤優也は、スイーパーとも言えるプレースタイルで新境地を開拓した。ポゼッションを重視する指揮官の下つなぎの技術も高めており、チームに欠かせない守護神だ。恐らく地球上で一番走るゴールキーパーだろう。

守備の絶対軸となっている近藤は、豊富な経験でチームを牽引する。

守備者としての能力の高さは言わずもがなで、3バック・4バックの両方でディフェンスリーダーを務める。また、高精度のフィードでチャンスメイクにも貢献するなど、攻守両面で頼りになる。

インサイドハーフの高橋と町田は、高い技術でチームの攻撃を司る。

昨冬の高校選手権を沸かせた前者は、プロの舞台でもその才能を披露。物怖じしないプレーとビジョンの確かさでチームの中心となった。

今季からインサイドハーフに挑戦する後者は、バイタルエリアにスッと侵入していくプレーで敵の守備陣を翻弄する。

チームの攻撃が上手く行っている時は、町田がボールに触れている時。まさにチームのバロメーターである。

ウイングまたは2トップの一角で起用されている清武も攻撃に欠かせないアタッカーだ。

兄・弘嗣と同様に攻撃センスに長ける背番号8だが、今季はフィニッシャーとしての能力に磨きを掛けている。ここまで挙げた9ゴールはリーグ7位タイだ。

また、高精度のプレースキックはもちろん、ロングスローでもチャンスメイク。両足のみならず両手でも攻撃に絡む稀有なプレーヤーである。

浮き沈みは激しいが、指揮官の理想にブレはない

21試合を終了し、8勝6分7敗の13位。リーグ屈指のタレント力を誇るだけに、この結果は当然納得いかないはずだ。

「ハイプレス・ハイライン」という言葉に隠れがちだが、ポゼッションの上手さはリーグ随一。中央からでもサイドからでも自在に崩すそのパスワークは素晴らしく、完成度は名古屋グランパス、FC岐阜を上回る。21試合で35得点という得点数はリーグ1位タイ。ハマった時の破壊力は凄まじい。

一方で守備に目を向けると、21試合で32失点。リーグワースト5位タイの失点数が足を引っ張っている。

だがこの失点の多さは、志向しているスタイルを考えれば致し方ない。繰り返しになるが、最終ラインは世界でも類を見ない高さ。裏を突かれてあっさり失点してしまうシーンは多く、高い位置を取る佐藤優也の頭越しにロングシュートを決められたのも一度や二度ではない。敵を追い込むはずの策が自分たちの首を絞めているのは否めない。

それでも指揮官は、自陣深くにブロックを敷く戦い方を選択したことは一度もない。「ハイプレス・ハイライン」を敷くのは、守備に主眼を置いているからではない。あくまでも攻撃を第一に考えているのだ。

ポゼッションで相手を押し込み、ボールロスト後にすぐ奪い返すことで主導権を握り続ける。その為のハイプレスであり、ハイラインである。

すでに迎えた夏場は、どのチームも運動量が落ち、苦しい戦いを強いられる。それと同時に得点数も増加し、オープンな試合展開になりがちだ。特に攻守に運動量が多い千葉は夏場の影響をもっとも受けることが予想される。

しかし、指揮官に哲学を曲げる気は毛頭ない。ややプレスの開始位置を下げるなど夏場を意識した戦い方を実践しつつも、「相手がどこであれ、自分たちが主導権を握るサッカー」という究極の理想にブレはない。その理想を手にする旅はまだまだ始まったばかり。この旅の行く末を楽しみながら見守りたい。

2017/07/02 written by ロッシ

筆者名:ロッシ

プロフィール: 1992年生まれ。1998年フランスW杯がきっかけでサッカーの虜となる。筆者の性格は堅実で真面目なため、ハビエル・サネッティ、長谷部誠、ダニエレ・ボネーラ、アルバロ・アルベロア、マッティア・カッサーニにシンパシーを感じている。ご意見・ご感想などありましたら、ツイッターアカウントまでお寄せください。

ツイッター: @antelerossi21