富士山は、静岡県と山梨県の県境にそびえる日本最高峰。登山期間は、毎年7月1日の山開きから、8月末までの約2か月間。その期間内だけでも約30万人の登山者が訪れています。堅実女子の間でも「一生に一度は登ってみたい」と富士登山に挑戦する人が少なくありません。そんな堅実女子のために、アウトドア雑誌『BE-PAL』編集部から、富士登山の基礎知識を教えてもらいました!

山開きは7月1日から8月31日まで。

 富士山登山口へのアクセス

登山口へは主要駅(河口湖駅、富士山駅、御殿場駅、三島駅、新富士駅、富士宮駅、富士駅、新松田駅など)から登山バス(http://bus.fujikyu.co.jp/)が出ています。運行日によって本数、時刻が変わるので要注意です。関東、関西の主要駅からは高速バスも運行しています。

各登山口までは、マイカーで行くことも可能です。しかし、マイカー規制期間があり、五合目まで行けない期間もあります。そのときは、規制区間の入り口にある有料駐車場に停め、有料のシャトルバスを利用。

登山口と下山口を別々にしたときのチケット「登山バス・フリーきっぷ」や往復バスと宿泊施設がセットになった「富士急ダイナミックパッケージ(http://www.fujiq-resorts.com/fujitozan2017/hotel/index.html)」などのオトクなバスツアーもあります。

旅行代理店でもやバス会社が富士登山ツアーを開催しているケースも。山小屋の宿泊セットやツアーによっては、登山ガイドが同行してくれます。登山経験が少ない人は、ツアーを利用するのも手です。

登山ルートは4つ

山頂までのルートは4つあります。どのルートも中腹の五合目がスタート地点で、山小屋で宿泊して、1泊2日の行程がスタンダードです。

 ・吉田ルート

ビギナー向けの人気ナンバーワンルートです。登山者のうち約6割の人が利用しています。首都圏からのアクセスも楽で、山小屋の数も多いです。その分、登山道が大渋滞するというマイナスポイントも。

標高差1471m 登り:約6時間 下り:約3時間

 ・富士宮ルート

頂上までの最短ルートです。スタート地点である五合目の標高が2390mあり、最短時間で登頂できます。しかし、急斜面が多いので、健脚者向けです。

標高差1386m 登り:約5時間 下り:約3時間30分

 ・須走ルート

六合目までが樹林帯なので、ほかのルートよりも自然の美しい景観が楽しめるのが特徴です。途中で吉田ルートと合流し、頂上を目指します。下山路は砂のような斜面を走るように一気に下れます。

標高差1806m 登り:約6時間30分 下り:約3時間

 ・御殿場ルート

五合目が標高1440mなので、最も標高差があり、初心者には少しハード。週末でも混雑しにくく、自分のペースを守って歩けるのでリピーターや登山経験者には人気です。

標高差2336m 登り:約7時間30分 下り:約3時間30分

吉田ルートの五合目。売店やトイレなどがある。モンベルのショップもあるので、もしも忘れ物をしたら駆け込もう!

トイレは有料

小銭をお忘れなく!

基本的に山小屋ごとにトイレが設置されています。富士山では、環境に配慮されたバイオトイレを導入。その施設を維持するためにトイレはチップ制です。200〜300円くらい。トイレを清潔に保つための管理費用です。チップ制も理解して利用しましょう。

自分のレベルに合ったプランニングを

富士山登山をするならば、やっぱり見たいご来光。ですが、夜に五合目に到着して、そこから徹夜で登り続け、頂上でご来光を迎えて下山……。なんてスケジュールは過酷すぎる!ましてや、登山初心者にとっては体力的にも大変きつく、高山病のリスクも高くなります。余裕をもったスケジュールを立てることこそ、富士山登山を攻略するポイントなのです。 

・プラン1 1泊2日山小屋ご来光登山

五合目を13時ぐらいに出発。17時までに七合目〜八合目の山小屋に到着し、宿泊。山頂でのご来光ではなく、山小屋で見たあとに頂上を目指します。山小屋でたっぷりと睡眠がとれるので、体力的にも優しい。夜明け前の“ご来光渋滞”に巻き込まれることもないので、ストレスフリーです。

七合目の山小屋から見たご来光。標高が十分高いので、美しさは保証付きです。

・プラン2 1泊2日山頂でご来光登山

13時に五合目をスタートして、17時に七合目〜八合目の山小屋に到着したあと、仮眠をとり、23時から頂上を目指すプランです。だいだい4時すぎからご来光になるので、その時間に頂上に着く計算でスタートしなければいけません。登るのがゆっくりな人にとっては、仮眠をとる時間も減ってしまい、体力的には少しハード。富士山の前に低山などで経験を積んでからチャレンジしたほうがベター。

 ・プラン3 2泊3日のゆとり登山

1日目は、六合目の山小屋に泊まり、翌日のんびりと歩いて八合目でもう1泊。3日目に頂上に登り、下山するプランです。体力がなくても登頂しやすいですし、体を慣らしながら標高を上げていくので、高山病にもかかりにくい。しかし、宿泊費がかかるので、お財布とご相談を!

山小屋の心得

基本的に雑魚寝です。

山小屋にも定員があるので、ピーク時以外でも予約が取れない場合があります。とくにお盆や週末を予定している人は、早めに予約をしましょう。宿泊料金は1泊2食つきで、7000〜10000円ぐらいが目安です。

基本的に部屋は相部屋です。上下2段のカイコ棚スタイルか、大部屋に雑魚寝が一般的。着替える場所はとくにありません。布団は山小屋が用意してくれます。布団がある位置が自分のスペースになるので、なるべく荷物を大きく広げないように。

最近では、個室がある山小屋も増えてきました。数にかぎりがあるので、早めに予約を。別料金がかかる場合が多いです。

食事は、ほかの宿泊者と一緒に大広間で食べます。カレーライスが定番です。混雑時には交代制になるので、食べ終わったら早めに席を立つ方がいいでしょう。山では食料の荷上げがとても大変。残さずすべて食べきることを心がけて。

トイレはきれいに使いましょう。

バイオトイレを導入している山小屋が増えたおかげで、悪臭がするなんてことが減りました。しかし、普通のホテルのトイレとは異なるので予め覚悟を。利用時には200円程度のチップを払いましょう。

基本的に洗面室やお風呂はありません。お湯も出ません! 汗拭きシートやメイク落としなどで各自工夫をしましょう。飲料水は有料のことが多いです。

心の準備

・天気がわるいときには登らない

山では天気が急変することもあります。悪天候の場合は、無理せず下山をしましょう。

 ・山岳保険に入る

1泊2日なら500円程度で入れる保険もあります。「もしも」の備えは大切です。

 ・山頂でもごはんは買えます

山頂の山小屋でも軽食は購入できます。カップラーメンが700円、カレーライスが1200円と、けっこう高めです。

 ・低山で練習をする

初めての登山ではペース配分を間違ってバテてしまったり、高山病にかかったりとリスクが高くなります。事前に、低山に登って足慣らしをするだけでも当日の不安が解消されますよ。

事前に情報が入っていれば、不安が解消されて登ることに集中できるようになるはず。早めに計画して、それに向けて、下準備をしっかり行ないましょう!

次回はウェア編です!

文=中山夏美 写真=太田真三