小学生らを巻き込んだ昨年10月の事故現場 ©共同通信社

 高齢のドライバーにとって数十年ぶりの「追試」が迫ってくる。警察庁が6月30日、多発する高齢者による交通事故対策の目玉として、運転に問題がある80歳以上のドライバーに実技試験を課すなどの対策を検討することを政府の交通対策本部で表明したのだ。全国紙社会部記者が言う。

「この日は内閣府や警察庁、国土交通省などの局長級が集まる交通対策本部の高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム(WT)の会合が開かれました。実技試験のほかに、運転能力が限定的な高齢者に対しては、逆走防止や自動ブレーキなどの安全機能が付いた車両に限定した免許を新設する案も提案されました。いわばオートマ車限定のさらに限定版です」

 対象となりそうなのは80歳以上のうち事故や交通違反を繰り返した高齢者。免許の更新時などに実技試験を課すという。試験の成績次第で、(1)そのまま免許更新、(2)安全機能付き車両での限定免許交付、(3)免許取り消し、の3通りにすることを検討する。対象者にとっては、免許取得時以来の「追試」で最悪、免許取り上げとなるわけだ。

「警察庁が設置した有識者会議も同日午前に『運転能力にも個人差がある』ことから『年齢にのみ着眼して高齢運転者を一律に取り扱うことは不適当』と提言しており、それに沿った内容でした。ただ、『限定免許』については、技術革新も見込みながら仕様を詰める必要があり、全容はまだ不透明です」(同前)

 警察庁の資料によると、75歳以上の高齢者の死亡事故は06年に全体の7.4%だったのが16年には13.5%に増加。75歳以上の免許保持者も513万人と10年前からほぼ倍増している。

 高齢運転者交通事故防止対策WTが設置される直前の昨年10月には、横浜市で小学生の列に軽トラックが突っ込み、小学1年の男児が死亡する事故が発生。運転していた高齢男性は認知症で責任能力がなく不起訴となったことは記憶に新しい。事故抑制に高齢者の運転に何らかの制限が必要なことは明らかだった。

 ただ、警察関係者は「世界的に自動運転の実用化が進められており、近い将来、高齢者どころか人間が運転をしなくなる。そうなれば高齢者の交通問題は自ずと解決だ」とも。高齢者には一時の辛抱か。

(「週刊文春」編集部)