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text:Matt Prior(マット・プライヤー)

 

次々と変わる「新基準」

先週は刺激的な1週間だった。なにしろ、320psのホットハッチと、800psのスーパーGTに試乗したのだから。

どちらも、何年か前なら考えられない数値だ。前人未踏ともいえる領域に達するクルマが出てきたわけだが、この信じがたいレベルが、あらたな基準になろうとしている。

いくらパワーがあっても十分ではない

ホンダ・シビック・タイプRとフェラーリ812スーパーファストは、それぞれのジャンルでパフォーマンスのベンチマークとなるだろうが、いずれそれも、より速くパワフルで目を見張るようなクルマの登場で塗り替えられるはずだ。

派手な側面に目が行きがちだが、個人的にはエンジニアたちが馬力に関して語ったことの方が気になる。

最も印象的だったのは、フェラーリのチーフテストドライバーでるラファエル・デ・シモーネの言葉だ。彼は「コントロールさえできれば、いくらあっても、これで十分ということはないですね」と口にした。

今後もパワー競争は過熱するだろう。そして電子制御技術も並行して発展し、さらなるスピードがより扱いやすいかたちで手に入るようになるはずだ。

行き過ぎた状況を、マクラーレンは疑問視か

すでに0-100km/hは3秒以下、0-200km/hも8秒を切るのだ。確かに公道向けタイヤを履いて、これを大幅に削ることは難しいだろう。

しかし、それよりさらに高い速度域での加速においては、大きなアドバンテージになるという。多くのクルマがある程度まで速く走ることはできるが、さらにその先、おそらくリミッターに当たるまで、変わらず加速し続けられるクルマはほんのひと握りに限られる。

今後数年のうちには、1500psを誇るブガッティ・シロンの後継モデルが立案されるかもしれない。現時点ではもはや超えられない限界と思われるハイパーカーだからといって、これより遅い次期モデルが提案されることがあるだろうか。

おそらく、この行き過ぎた状況を、本当に行き過ぎではないかと疑問視しているのは、マクラーレンくらいではないだろうか。

彼らは720Sの後継をどのようなものにするか模索しているが、たぶんそれも少しの間のことだろう。はたしてその結果がどうなるか、それは不明だ。

とはいえ、おそらくはこれまでと同じ道を辿ることになるのだろうけれど。

いかにフェラーリが250SWBの、マクラーレンがF1の、それぞれ生まれ変わりだとアピールしても、パワーウォーズから離脱するリスクは大きすぎる。

バイクもパワーが足りない?

シビック・タイプRの発表会場には、ホンダが新型スーパーバイクも持ち込んでいた。そのCBR1000RRファイアーブレードを眺め、取り付けられたセンサー類は何のためのものだろうかと思っていると、ホンダのスタッフが説明してくれた。

ここ最近、ハイパフォーマンスな二輪のベンチマークは、こうした1.0ℓ級のスーパーバイクだ。四輪の世界でいえば、これは488GTBや720Sのような存在である。

現在、スーパーバイクは200ps級に達するだろうと見られているが、現行ファイアーブレードは192psだ。ホンダのスタッフに、これでは物足りないのではないかと尋ねた。

反応は、どうやらそうらしいものだった。個人的にその方面には全く明るくないのだが、この途轍もない領域に達したジャンルでは、ファイアーブレードは少しばかりパワー不足だと受け止められているようなのだ。

戸惑うばかりだ。

かつてはバイクにも乗ったが、それは15年も前のことで、出力はほんの65psだった。

古い感覚では、フェラーリ812スーパーファストなんてクルマたちは行き過ぎに思える。しかし、現在の基準に照らせば、あながち行き過ぎではないのかもしれない。

あらたな基準に触れた、とやがて思うようになるだろう。皮肉なことに、平気な顔して。