生まれては消えていく、東京のレストラン。はたして勝ち残るのは一体どんな店なのか?ここでは年間1300軒超のレストランを取材する『東京カレンダー』が、これぞ! と感じた一軒を厳選。

今回は、40年以上もの間、銀座の一流フレンチとして愛されていた『銀座レカン』を改めて紹介。約2年半前のクローズから復活した、超本格派の新店の実力とは。




2年の時を経て、日本を代表するグランメゾンが復活
『銀座レカン』

昭和40年代、それまでホテルの専売特許だったフランス料理が、その流れを街場へと移し始めた1974年、今はなき『マキシム・ド・パリ』や『ロオジエ』と共にグランメゾンの先駆けとしてオープンしたのが、ここ『銀座レカン』だ。

井上 旭氏や城 悦男氏など往年の名シェフ達を輩出してきたこの名店が、ミキモト本店の改修工事に伴い、しばしの眠りについたのは、2015年1月15日のこと。そして、およそ2年半の時を経て、新生『銀座レカン』が新たな幕開けを迎えた。

穏やかなベージュのトーンで統一した店内は、以前の鮮やかなアール・ヌーヴォー調の内装とはうって変わってモダンクラシックなインテリアに。



「エストラゴン風味のオニオンクリームと毛ガニ、キャビア添え」ズッキーニの花の中に蒸した毛ガニとオニオンクリームを詰める


中でも特筆すべきは、シャンデリアの如く天井を飾る数多の手作りのガラス球。華美ではないが、女性作家による作品はさりげなく意匠を凝らしている。それが老舗ならではの風格を醸し出しているのだ。料理も同様といえる。

フランス本国も和食ブームに沸く昨今、醤油や出汁、味噌など和の調味料を取り入れ、斬新なフランス料理を提案する若手料理人も増えてきている。

そんな中、「鱧のクネルとマッシュルームのデュクセル ヴァンブランのソース」など王道の味を、守り続けているのが、6代目となる高良康之シェフだ。それも「フランス料理と真正面から取り組みたい」との思いゆえ。



「鱧のクネルとマッシュルのデュクセル、ヴァンブランソースのグラチネ」骨切りした鱧の身で、鱧のすり身とマッシュルームのデュクセルを巻き込む


とはいえ、ただ単に古典を踏襲しているわけでは決してない。

例えば、鱧のクネルのソースにしても、フュメ・ド・ポワソンの取り方を変え、それまではオランデーズソースを加えていたものを、バターを排除したサバイヨンソースにし、見た目はクラシックでも軽やかで現代的な味わいに創りあげている。

いわば、これも古典の再構築。皿の要素を一から見直し、何が必要で不要なのか、現代に照らしあわせ、さらに日本の素材を再度見直すことから生まれる古くて新しい料理。それが、新生『銀座レカン』の料理といってもいいだろう。



「フォアグラと若くるみのトーション仕立て、スパイス風味」。22,000円のコースから


それも、高良シェフ自身、この2年という長い休みの間、生産地を訪れては素材を見てまわり、福岡県や岩手県等の各地方で様々なコラボレーションを行ってきた豊かな経験の賜物だろう。

そこで出会った地方色豊かな食材、そしてテロワールを肌で感じつつそれらを昇華。銀座のグランメゾンという舞台にふさわしい料理に仕上げている。



「小鳩とキャベツ、黒トリュフのクレピネット、コニャックソース」ややレアに仕上げた小鳩の血の香りと黒トリュフがよく合う。



「カルダモン香る、シストロン産仔羊のロースト」フランス産仔羊ならではの上品な旨味と風味を活かした逸品。これと「エストラゴン風味のオニオンクリームと毛ガニ、キャビア添え」は、共に28,000円コースの前菜とメイン。



エレベーターで地下二階に降りると昔の面影を残したウェイティングバーが。



壁面のアール・ヌーヴォー調の鏡は、以前に使われていたもの。食後酒もここでいただける。