かつて破竹の勢いだった日本企業の海外進出だが、このところ生彩を欠いている。特に海外の管理体制をめぐる問題が噴出。M&Aで傘下に収めた海外子会社で減損などの損失計上を迫られたり、現地法人の不適切会計が発覚したりする事例が相次いでいる。写真は東証。

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かつて破竹の勢いだった日本企業の海外進出だったが、このところ生彩を欠いている。特に海外の管理体制をめぐる問題が噴出。M&A(合併・買収)で傘下に収めた海外子会社で減損などの損失計上を迫られたり、現地法人の不適切会計が発覚したりして決算を訂正したりする例が相次いでいる。

人口減少などに伴う消費減退で国内市場が頭打ちになる中、日本企業は成長のチャンスを外に求めてグローバル化を展開。大半の企業は着実に地歩を固めているが、一部企業で海外子会社の管理体制構築が経営課題となっている。

◆「高値づかみ」で苦境に

日本郵政は2015年に6200億円で買収したオーストラリアの物流会社トール・ホールディングスが当初想定していた利益を計上できなくなったとして、17年3月期に約4000億円の減損処理を余儀なくされた。

キリンホールディングスは11年に買収したブラジル子会社が不振で15年12月期に約1100億円の特損を計上、今年2月には当時の買収額を大幅に下回る額で売却することを決定した。
名門企業の東芝は米原発子会社で7千億円強の巨額損失を計上し、屋台骨を揺るがす事態に陥っている。
日本企業の海外M&Aは事前の調査や分析が不十分で、「高値づかみ」するケースが多い。本社のガバナンスの不備が重なり失敗につながってしまう。現地の経営に対する本社の監視が甘かったのが大きな要因だ。

◆不適切会計、リコー、富士ゼロックスでも

海外では販売額の水増しといった不適切会計の発覚も目立つ。リコーは16年にインドの子会社で利益を水増しするなどの不正行為が発覚して損失が膨らみ、業績予想を下方修正した。

富士フイルムホールディングスは6月上旬、傘下の富士ゼロックスの海外販売子会社で不適切な会計処理が発覚し、累計375億円の損失が発生したと発表した。富士ゼロックスの海外子会社がリース会計を悪用して売り上げを過大計上していた。不適切会計の舞台となった富士ゼロックスのニュージーランドとオーストラリアの販売子会社は日本から距離的にも遠く、経営実態の正確で迅速な把握は難しかったようだ。富士フイルムが75%を出資する富士ゼロックスはもともと米社との折半出資だったため、独立意識が強かった。富士フイルム側に遠慮があり、グループ統治が機能していない実態が明らかになった。

16年には船井電機やリコーが買収先の海外企業に絡んで不適切な会計処理が発覚し、数十億円の損失を計上。12年にはOKIのスペイン販売子会社で売り上げの架空計上が明らかになり、300億円の損失を計上した。

◆タカタの負債総額1兆円超、中国企業傘下で再生

一方、世界的なエアバック会社・タカタが民事再生法の適用を申請。東京地裁は同社と関連2社の計3社について再生手続きの開始を決定した。タカタは米国でエアバッグの不具合が原因となった死亡事故が相次いだことを契機に世界各地でリコールが拡大。2017年3月期の連結業績は最終損益が795億円の赤字に陥った。自動車メーカーが肩代わりしているリコールの費用を含めた負債総額は1兆円を超える。中国の新興メーカー、寧波均勝電子傘下の米キー・セイフティー・システムズ(KSS)が支援することになった。

日本企業の海外事業に関連したこれらの事例には、海外を含めたグループの企業統治(コーポレートガバナンス)の弱さが損失を招いた点で共通点がある。

◆グループ統治の基盤強化が課題

企業統治に当たっては、海外事業を特別視せず、グループ統治の基盤を強めることが日本企業の課題となる。海外情報を迅速につかめるような体制を整えたり、国際経験の豊富な人材を取締役に招いたりといった、対策の細部の具体化が急がれるところだ。日本企業は海外子会社に日本流の統治手法を持ち込みがちだが、それが通用しない例が増えており、海外子会社の管理体制強化に取り組むべきだ。