好きになった街には繰り返し訪れるようにしています。その土地の人間になりきって、同じ時間と空気を享受したくて。もしかしたら、知らずのうちに耳に届いている心地いい「音」に、私たちは触れているのかもしれません。

その街でしか見ることができない光景があるのと同じように、それぞれの土地にしかない象徴的なサウンド。「The Local France」に登場したこの記事は、目でなく耳で伝えるパリガイドとしてお役に立てるはず。

宝石のような「パリの音」を聴く

パリを連想させる音はいくつかあります。例えば、気短かなドライバーがクラクションを鳴らす音、けたたましいパトカーのサイレン、カフェの軒先きすれすれを走るスクーターのエンジン音、自転車のベルも、ツアーガイドのメガホンも……。

けれど、どこからか聞こえてくる音に足が止まり、出どころを探してしまうようなものも。私たちの耳に届くことをそっと待っている、“パリの音”があります。

「我々はとても視覚的な世界に生きているわけですが、パリはとっても耳に心地いい土地です。目で見る楽しさと同じように、音でパリを味わってみるのはどうでしょう」

音の専門家Des Coulamが厳選するSounds of Paris、珠玉のパリの音色に耳を傾けてみましょう。

01.
石畳の上を走る車の音

もっとも有名なのはシャンゼリゼ大通り。

道路に敷き詰められた丸石はパリの顔。ひとつ目のよろこびは、でこぼこの石畳を走る車がもたらしてくれるもの。特にゆっくり走るときのタイヤの摩擦音だとCoulam。

「何よりもパリを象徴するものだと思います。50年代のフィルム・ノワール(犯罪映画)を彷彿させるような」

02.
ペタンクが公園の砂利を叩く音

一般的に私たちがパリ風の白い砂利をイメージするとき、チュイルリー公園やリュクサンブール公園を訪れる観光客が、その上を歩く音と結び付けようとするかもしれません。でも実のところ、その音は市内のいたるところにあるもの。

ラ・ヴィレット貯水池や運河に沿って続く砂利道、そこでペタンクを楽しむ人々が奏でてくれるあの音の心地よさ。

03.
騒々しい「デモ」もパリを演出する要素

フランス人といえば、とにかくデモに参加することで有名ですが、とりわけパリジャンの意識の高さは言うまでもありません。労働組合の抗議、学生デモ、LGBTQの社会運動…。

シュプレヒコールも、歌声も、口笛も、それを静止する警察のサイレンも。ときに機動隊が鎮圧のために催涙ガスを発砲する音だって、投げたビンが激しく地面を叩く音だって、こうしたデモにおける不協和音の重なり合いが、パリという街を演出するひとつでもあるのです。

04.
カフェの喧騒

サン=ジェルマン・デ・プレ教会に面したパリを代表する老舗カフェのひとつ、「カフェ・ドゥ・マゴ」をCoulamがおすすめする理由はひとつ。

「カフェでしか味わえない重層的な音のひびき楽しむため」

がやがやの喧騒を因数分解していけば、友人との会話、オーダーを読み上げるウェイターのがなり声、食器にカトラリーがぶつかる音もある。そのどれもがパリを形づくるサウンドです。

05.
マルシェの賑わい

パリっ子たちは、誰もがマルシェ(市場)に親しみを感じ、一日のうちのどこかで買いものに立ち寄ります。その騒々しさが分かりますか?

「世界中から集められたフルーツや香辛料、ペイストリーを売る陽気な行商人。オープンスペースも活気ある場内も、世界中の言語が賑やかな喧騒の中に飛び交っているのです」

ゆえに、サン=ドニのマルシェは“別格”なんだそう。

06.
「ノートルダム」の鐘の音

世界有数の大聖堂ノートルダムでは、12世紀(竣工前から)より市内に響きわたるよう鐘を鳴らし続けてきました。やがて多くの鐘が追加されるようになり、今日のように荘厳な響きになったそうです。

フランス革命の際には、1つを残しすべての鐘が取り外され、溶かして利用されたそうです。のちに再び取り付けられた鐘は、以前のものより品質も音色もイマイチ。それでもつい最近まで使用され、2013年ついに建立当時のものに戻り話題に。

この街で感じる他の多くの音と違い、ノートルダムの鐘にはそれだけの歴史を感じることができるでしょう。

07.
「パリ北駅」のブレーキ音

パリの大動脈ではないけれど、欧州でもっとも混在しているのが北駅だとか。

「列車が停車する時に轟く独特の音は、1800年代初頭に建てられた北駅でしか体感できないものなんです」

Coulamお気に入りのこのサウンドも、2015年より始まった大規模改築工事により、なくなってしまうのかもしれません。

08.
小鳥たちのさえずりを「シュリー館」で

ときに注意深く耳をすませてみることは、視覚にまさる気づきを与えてくれるもの。“パリでもっとも美しい建築”と称されるマレ地区の歴史的建造物「シュリー館」を訪れてみましょう。

葉で覆われた中庭に沿って歩けば、小鳥たちのさえずりがこだまする異境へと足を踏み入れたように思うはずです。

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